「セロトニン神経」って何??? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 セロトニン神経系は、片頭痛を理解するためには極めて重要な神経系です。


「セロトニン神経系」とは


 「セロトニン神経系」とは、セロトニンを含有し、神経伝達物質として”セロトニン”を用いる神経細胞群とその標的細胞の受容体からなります。

 神経伝達物質とは、神経細胞のニューロン間で、信号をやり取りするための物質のことです。この細胞のシナプスからは、特定の神経伝達物質が放出され、受容体で受け取られるという仕組みがあり、この情報伝達が神経へとつながっているのです。
 この細胞膜にある特定の受容体は、その器官ごとに受容体が異なっており、各部位に分布しています。


 「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。


 最初にお話しておきたいことは、「神経伝達物質」は、実は100種類以上あるということです。そのなかでも主要なものは10種類ほどに絞られますが、脳内のいろいろなところに影響を与えるという点では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどがよく知られています。

 ドーパミンは、体の動きを調整する神経の機能と、心の領域として「舞い上がるような心地よさ」を感じる「快の情動回路」といわれる神経の機能とがあります。セロトニンと深く関わりがあるのは、後者の機能です。このドーパミン神経を活性化させるのは「報酬」です。人間社会において、私たちが「試験で良い点数を取る」「試合で勝つ」「高い給料を取る」などの目標を持つと、ドーパミン神経は興奮し、私たちに一種の「渇望したストレス状態」を作り出します。この状態ではドーパミン神経が活性化しているので、私たちはちょっとしたストレスでも努力するようになるのです。そして目標が達成されると「舞い上がるような心地よさ」を感じることができます。ですからドーパミン神経は、意欲の神経なのです。
 達成されないことで一番問題になるのは、ドーパミン神経が暴走し始めることです。実際に、世の中は上手くいかないことが多いわけですが、上手くいかないことが続くと「何が何でも達成するぞ!」と異常行動を起こし始めるのです。いわゆる依存症で、周囲に迷惑をかけてしまう。これはドーパミン神経の悪い面です。
 ドーパミン神経には興奮した際、良い面と悪い面があるわけですが、このドーパミン神経にコントロールをかけることができる神経回路がセロトニン神経である、ということです。


 ノルアドレナリンはストレスに関係する神経になります。不快なストレッサーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初に反応するのがノルアドレナリン神経です。わかりやすく言えば、脳内の危機管理センターです。危機を察知すると、体の面では即座に血圧を上げたり、心の面では不安を感じさせたりするわけです。
 ノルアドレナリン神経も重要な神経ですが、暴走するとどうなるかといいますと、大したことではないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パニック障害」です。
 ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロールすることができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がることと、ノルアドレナリン神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという点で、セロトニン神経を活性化させることは重要だと言えます。


 要約しますと、セロトニンは心の面では、クールな覚醒、つまり平常心を保つはたらきをします。セロトニン以外にも心の状態を演出する神経には、快感や陶酔感を増幅する「ドーパミン神経」と、様々なストレスによって覚醒反応を引き起こす「ノルアドレナリン神経」があります。セロトニン神経は、この2つの神経に対して抑制作用を及ぼし、興奮と不安のバランスを図り、心の状態を中庸に保つはたらきをするということです。


 セロトニン神経の活動レベルは一日の中で絶えず変化していますが、その活動が活発であればセロトニンの分泌が多くなり、弱くなれば分泌が少なくなります。
 分泌が多ければ、それだけ情報も伝わりやすくなるというわけです。
 セロトニン神経が働くのは、おもに覚醒時です。
 朝起きてから夜寝るまで、セロトニン神経は休むことなくインパルスを出し続けています。つまり、起きている間中、セロトニンの分泌は行われています。
 そして、睡眠中には、そのインパルス活動が弱くなり、セロトニンはほとんど分泌されなくなります。そのため脳内のセロトニンの濃度が下がり、脳全体を覚醒する作用もなくなります。


脳内セロトニンの働きとしては


  1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
  2.自律神経調節する
  3.筋肉へ働きかける
  4.痛みの感覚を抑制する
  5.心のバランスを保つ


1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する


 セロトニン神経は、大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する役割をしています。
 大脳皮質には、意識のレベルを調節するという働きがあります。ここに作用しているのが、セロトニン神経です。
 人は眠っている間、意識がなくなりますが、朝起きると覚醒します。
 朝起きて、意識がスッキリして爽快な時もあれば、ぼんやりしている時もあります。
 意識と一口にいっても、「スッキリ」「ぼんやり」「イライラ」などさまざまなレベル、状態があります。
 セロトニン神経が作り出しているのは、起きている時の「スッキリ爽快」な意識の状態です。


2.自律神経を調節する
 
 「ホメオスターシスの三角形」の一角に「自律神経系」があり、この「自律神経系」を調節する働きをするもので、最も重要な働きをしています。 
 自律神経は心臓機能、血圧、代謝、呼吸などを司っており、交感神経と副交感神経という2つの神経によって成り立っています。
 交感神経は起きて活動しているときの神経で、副交感神経は眠っているときの神経です。
 朝起きると自律神経のバランスが変わり、副交感神経から交感神経にシフトします。
 シフトしたら、片方の神経の活動が全くゼロになるわけではありません。
 交感神経と副交感神経は、互いにシーソーのようにバランスを保ちながら、強くなったり弱くなったりを繰り返しています。
 セロトニン神経は自律神経に対し、このシフトがうまくいくよう働きかけています。
 朝起きると、交感神経の方が優位にならなければなりません
 そこで、セロトニン神経は交感神経を適度に緊張させ、体をスタンバイ状態にします。
 しかし、この働きがうまくいかなくなると、寝起きが悪くなったり、自律神経失調症などになる場合があります。


3.筋肉へ働きかける


 セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
 セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えています。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、首が立ち、背筋が伸び、歩いたりできるのは、この抗重力筋のおかげです。セロトニン神経が活性化していると、まっすぐな姿勢や生き生きした表情になることができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まると、背中が丸まったり顔の表情がどんよりしてしまいます。
 このため、セロトニンが不足してきますと、「体の歪み」を引き起こしてきます。


4.痛みの感覚を抑制します


 セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
 セロトニン神経が活性化されていると、鎮痛効果が現れます。
 痛み自体がなくなるのではなく、セロトニン神経の活性化により痛みの感覚をコントロールすることで、痛みを感じにくくなります。
 反対にセロトニン神経が弱まると、ささいなことで体の痛みを感じるようになります。
 脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。また片頭痛におけるアロデイニアと関連しています。


5.心のバランスを保つ


 セロトニン神経は、心のバランスを保つ役割を担っています。
 人の心は外側、内側の両方から影響を受け、絶えず変化しています
 嬉しいことがあれば気分も高揚しますし、悲しいことがあれば気分が沈みます
 人の心はそうやってできていますので、そういった変化が起こることは決して悪いことではありません。
 しかし、その振り幅が大きすぎると問題が生じます。
 自分で自分の気持ちがコントロールできなくなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。セロトニン神経は、そういった状態にならないよう心のバランスを保ってくれる作用があります。自律神経と同様、セロトニン神経はちょうどいいバランスをとってくれる効果があるのです。このようにして、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンがバランスを取り合っています。これは重要な点です。
 とくに、セロトニン不足は、慢性頭痛とくに緊張型頭痛の発症要因となってきます。



ミトコンドリア働きが悪いと、セロトニン神経の働きを悪化させます


 片頭痛は、ミトコンドリアの機能障害による頭痛です。

 私達の体を構成する細胞の中にある”ミトコンドリアは食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。活性酸素は、ミトコンドリアがエネルギーを作る際に産生されてきます。
 そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。


 ミトコンドリア働きが悪いと、脳の神経細胞の場合、「セロトニン神経」が選択的に「ミトコンドリアの働き」の影響を受けやすく、セロトニンを産生しにくく、セロトニンの合成やその合成のための酵素も充分な量を生成できなくなってしまいます。その結果、「脳内セロトニン不足」が引き起こされてきます。

 この点が、片頭痛を理解する上での基本となるもので、極めて重要です。専門家は、こうした考え方をまったくされないことに問題があります。

 脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応してしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。
 この「脳内セロトニン低下」が「脳過敏」を引き起こす要因となっています。


 それでは、脳内セロトニンの低下は、どのような生活習慣の問題によって引き起こされてくるのでしょうか?


「脳内セロトニンを低下させる要因 


(1)「セロトニン神経系」はどうして衰えてしまうのでしょうか?


 「セロトニン神経」には、歩行、呼吸、咀嚼などの基本的なリズム運動によって活性化されるという特性があります。毎日の生活の中で、こうしたリズム運動を自然に繰り返していれば、セロトニン神経は正常レベルに保たれます。したがって、こうした運動を極端に抑えた生活を継続することは、セロトニン神経の減弱を招きます。例えば以下のような生活習慣には要注意です。
  
  日光を浴びることが少ない
  朝は出かける直前まで寝ている
  昼夜逆転生活になっている
  固いものをあまり食べない
  階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
  30分以上続けて歩くことができない
  運動不足である
  デスクワークが多い
  朝食をとらない
  ごはんやパンなどの炭水化物をあまり食べない
  魚より肉をよく食べる
  ダイエットのため食事制限をしている


 また、加齢による身体機能の衰えも運動不足に繋がります。セロトニン神経の活性には太陽の光も影響しますから、インドア指向の最近の子供たちの生活、とくに連日、息をつめてゲームをやり続けるという習慣などは、セロトニン神経が減弱しやすくなるのです。


(2)ストレスによる影響


 慢性頭痛の方々は、特に女性の場合、家族・夫婦間および職場でのストレスによって、頭痛の頻度や程度が増悪されることが日常茶飯事に経験されます。


 体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
 副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
 副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
 このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
 縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接続して、痛みを抑制します。


 以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、「脳内セロトニン不足」を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。


(3)疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき


 疲労状態の時、体内には乳酸が蓄積しています。セロトニンの分泌を妨げるのが疲労です。乳酸はセロトニンの分泌を抑制します。
 セロトニン神経が神経末端からセロトニンをシプナス間隔に放出しますと、それは標的細胞のセロトニン受容体に作用して、興奮や抑制を起こします。余ったセロトニンは、再利用ために、放出側の神経端末に再取り込みされます。その運搬役がセロトニン・トランスポーターです。
 この運搬役の働きは、乳酸によって促進されます。再利用のためにせっせとリサイクル機能を高めてくれるわけで、このこと自体はけっして悪いことではありません。ところが、再取り込みだけが、必要量を上回るほど進んでしまうと問題です。セロトニン放出が標的細胞に十分な影響を与えることなく、直ちにもとの神経端末に戻ってしまいます。セロトニン神経のインパルス発射および放出はたとえ正常でも、再取り込みが進みすぎるために、標的細胞には十分に届かないことになります。
 これでは、セロトニンが貯蔵庫に蓄えられるだけで、有効に活用されないことになります。セロトニンのデフレ状態です。
 活発化したトランスポーターは必要以上にセロトニンを取り込んでしまい受容体と結びつく量を減らしてしまうのでセロトニンは役割を果たすことができず、身体はセロトニン不足と同じ状態になってしまいます。
 心身の疲労により生産された乳酸が血液に蓄積すると、脳をはじめ身体の機能が低下してきます。
こうしたことから、「疲労はセロトニン神経の大敵」とされています。

(4)基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ自律神経が乱れること


 一般的に朝起きると筋肉や神経の働きを高めるために体温は高くなり、夜に向けて体温は上昇し、就寝前にもっとも高くなって就寝後に体温は低下を始めます。この変化は、セロトニンの分泌量変化とほぼ一致しています。
 縫線核はセロトニンの産生とともに、血液の温度センサーとしての働きがあります。
 セロトニンが少ないと血液の温度を感知しても体温を調整する温熱中枢に充分な刺激を与えられず、温熱中枢を活性化できなくなります。そのため、セロトニンが少ない人は1日中体温が低いままで冷え性になりやすく、体の機能をいつまでも活性化できないことになります。
 また、セロトニンが不足すると食後の満足感を得ることができませんので、常に食欲が旺盛な状態となり、食べることにブレーキが利かなくなります。さらに血糖のエネルギーヘの代謝までもが阻害されますから、肥満や糖尿病になりやすくなるのです。
 逆に、脳内のセロトニンが充分にあれば、食後に満足感や充実感を得られますから、肥満は解消していくことになります。さらに、セロトニンが増すことによって各組織の機能が活発になるため、基礎代謝が上がり、脂肪を効率よく燃焼させることができるようになります。
 一見すると痩せているように見えても、セロトニンが不足していると、内臓脂肪がたっぷりついてしまうことが起こり得ます。
 慢性的にセロトニンが不足すると、基礎代謝が低下して、脂肪が蓄積しやすくなるとも言われています。 
 これはセロトニン不足が体温低下の原因である事と関連しています。
 体温が1℃下がると基礎代謝は12%減少するからです。
 慢性的なストレスを受けていると、ストレスホルモンのコルチゾール が慢性的に高い状態になってしまい、セロトニン不足を招いたり、 数々の悪影響を通して脂肪蓄積に結びついてしまいます。
 基礎代謝を上げたいのならば、自律神経の乱れに気をつけましょう!
 自律神経が乱れて、朝方に副交感神経が活発なままだと体温が上がりません。体温が上がらなければ基礎代謝が下がりますので、自律神経を整えて基礎代謝を上げる事を心掛けましょう!
 近年の研究で「なぜ太るのか?なぜ痩せられないのか?」という問題に対して、脳の問題が大きく関わっている事が分かってきました。
 その鍵となるのが「セロトニン」という物質です。セロトニンは、交感神経のバランスコントロールする神経伝達物質です。
 セロトニンは、映画を観て感動したり、恋人が出来たりして満ち足りた気分になると、脳内に分泌される神経伝達物質(ホルモン)で、精神を安定させて脳を元気にする働きがあります。
 ダイエットをするにあたって、基礎代謝を下げないようにする為には、寝起きの悪さを改善して基礎代謝を上げる事を心がける事が必要になります。


(5)生理周期との関連


 女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、月経周期でその分泌量は大きく変わります。
 特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質であるセロトニンも急激に減ります。
 その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられています。
 このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。
 つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすいということなのです。
 以上のように、だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える13歳頃に一致します。こうした年代に女性の場合は、片頭痛を発症してきます。
 女性は健常男性より 約52% 脳内セロトニンを産生する能力が低く、またセロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の4倍減少する、と言われています。
 エストロゲンが低下することでセロトニン神経の機能が低下し、脳内セロトニン濃度が低下すると考えられています。
 更年期障害による頭痛は、閉経期前後にエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が急激に減少し、自律神経の働きやホルモンバランスが乱れることによっても起こるといわれています。


(6)食事に関連して


1.食事はバランスが大事で、偏食は「脳内セロトニン低下」の原因になります


 セロトニンを増やすためは、セロトニン合成にかかわる酵素、補酵素やビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびマグネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です。
 トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイアシンの合成が優先されます。
 そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファンもナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へは回っていきません。

 ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされますので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイアシンの摂取不足を起こすことはありません。
 この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。
 ビタミンB6は、ニンニク、唐辛子、マグロ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。亜鉛の多い食品は牡蠣が有名ですが、牛肉にも多く含まれます。
 特に偏食も無く、平均的な食事をしていても、マグネシウムは最も不足しやすい栄養素です。
 マグネシウムは非常に不足しやすいミネラルですので、ニガリやマグネシウム水溶液から日常的に摂るのが好ましいでしょう。
 これらのビタミン剤やミネラルはサプリメントである栄養素を多く摂ったからといって効果が上がるというものではなく、全ての栄養素の不足を起こさないというのが改善のための基本となります。一つでも成分が不足しますと、一連の反応は進まなくなります。
 
2.肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、「脳内セロトニン低下」の原因


 腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファンはちゃんと脳に入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り込むことができれば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。
 しかし、トリプトファンが通る場所(脳血液関門)に問題があってここは、ほかの必須アミノ酸も通っていく場所でもあるのです。この必須アミノ酸というのは、「フェニルアラニン」とか「口イシン」というものですが、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸のほうが多く含まれるものがあるのです。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べものが、肉類や乳・乳製品なのです。……。
 つまり、牛レバーにはトリプトファンよりもほかの必須アミノ酸が多いため、実際には思ったほどトリプトファンがとれないのです。
 私たちのカラダの筋肉や骨などはタンパク質で出来ていて、このタンパク質を構成しているのは20種類のアミノ酸です。そのうち、9種類は必須アミノ酸と呼ばれる体内では合成できないアミノ酸です。その必須アミノ酸の中でもバリン、ロイシン、イソロシンは総称してBCAAと呼ばれる持久系のアミノ酸で、大切な栄養素です。
 この持久系アミノ酸BCAAは、まぐろの赤身、肉や卵などの食品に含まれているほか、最高の栄養といわれる母乳にも含まれています。
 このようにBCAAが多い環境では、トリプトファンの脳への取り込みが阻害され、脳内セロトニンがあまり増えないことがありますので注意が必要です。
 BACCは動物性蛋白質に含まれており、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙げられます。食べ物はバランスが大事なので、極端に摂取を制限すると逆に体調不良の原因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは逆に「脳内セロトニン」不足を招くことに繋がりますので、注意が必要です。
 
(7)運動不足


 現代人にとって運動不足は大きな問題となっており、セロトニン不足の大きな一因にもなっています。
 一定のリズムで同じ動作を繰り返す「リズム運動」がセロトニン神経を活性化させます。
 リズム運動をすると、セロトニン神経が活性化し脳内のセロトニンが増えます。
 代表的なリズム運動としては「歩行」「咀嚼(そしゃく)」「呼吸」が挙げられます。
 しっかり歩いて、しっかり噛んで食べて、しっかり呼吸をする、基本的なことですが現代生活ではおろそかになりがちかと思います。

 デスクワークが中心の生活の人は、運動する時間を設ける、なるべくエレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、など工夫して生活の中にリズム運動を積極的に取り入れて、脳内のセロトニンを増やしましょう。激しい運動をする必要はありません。


 

 片頭痛治療に使われるトリプタン製剤は、「脳内セロトニンの低下」を補填・バックアップすることによって効果を発揮します。
 しかし、専門家は、このような中枢神経系でセロトニンが減少する理由についてはまだ謎とされます。
 本来、片頭痛の場合、生まれつき「ミトコンドリアの働き」が悪いため、同時にセロトニン神経系の機能まで悪く、さらに、上記のような諸々の生活習慣の問題点から脳内セロトニンは低下してきます。このように考えるべきでありながら、こうは考えません。
 脳内セロトニンの低下は、痛みの制御が困難となり、頭痛が起こりやすくなり、さらに「脳過敏」の要因ともなってきます。
 トリプタン製剤は、片頭痛治療上、あくまでも”鎮痛薬”に過ぎないということです。


 片頭痛治療上重要なことは、「脳内セロトニン」を増やす工夫をすることが必須となってきます。このようにして、発作を起きにくくするようにします。


 さらに、脳内セロトニンは、片頭痛を理解する際の基本となるものです。



(注)以前、小橋雄太さんにはブログ上で、私のブログをご覧頂き「僕は自分のセロトニン濃度を測られたことがありません。だから片頭痛の人はセロトニン濃度が低いと言われても実感がありません。片頭痛になっている人のセロトニン濃度を測った実験とかあるのでしょうか?」といった批判をお受け致しました。この際ついでに、説明しておきます。
 神経伝達物質としてのセロトニンの脳内レベルは、血中濃度とは異なります。血中セロトニンは、血液脳関門を通過できません。こういったことから、脳内セロトニン濃度の測定は、余程、専門施設でなければ、測定は不可能ですし、実地臨床面では実用的ではなく、また、脳内セロトニンの濃度は時々刻々変化し、極めて多くの要因によって左右されます。 こういったことから、これまでの病歴を詳細に聴取することにより、生活習慣の状況・問題点を把握し明確にすることによって、その時点での症状と照らし合わせて、臨床的に「脳内セロトニンの低下」を推測しているということです。これが、臨床家の力量とされるものです。将来的に、「脳内セロトニンの低下」を裏付ける”指標”となる検査項目が可能となる日を待つしかありません。(例えば、糖尿病のように、ヘモグロビンA1Cのように)
 最大の問題点は、現在の頭痛の専門家は、片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序からしか考えていないため、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛で、このために同時に起きている「セロトニン神経系の機能低下」といった考え方が全く存在しません。
 このため「脳内セロトニンの低下」は念頭にないことから、「セロトニン濃度を測られたことがありません」ということは、当たり前のことです。
 このような”測定実験”は東邦大学生理学教室の有田秀穂先生しかありません。
 「片頭痛の人はセロトニン濃度が低い」と考えておられるようですが、片頭痛患者さん”すべて”が低下している訳ではありません。


 これまでも、幾度か述べていますように、片頭痛の病態は以下のようなものです。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

  1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
  2.免疫(腸内環境)の関与
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
  6.ミトコンドリアの関与


 この6つの要因のなかのうちの1つに過ぎません。ここを誤解してはなりません。
 小橋さんの片頭痛の場合は、「体の歪み(ストレートネック)」が関与していたと考えられ、「体の歪み(ストレートネック)」を改善させることによって、閃輝暗点という前兆を伴った片頭痛が改善されたということで、「脳内セロトニン」の関与はなかったということです。しかし、専門家はこうした「体の歪み(ストレートネック)」は容認されることはありませんし、頸椎X線検査を仮に受けたとしても、「体の歪み(ストレートネック)」の診断基準がないため、診断ができなかったということでしかありません。
 専門家は、片頭痛が”多因子遺伝”とも考えてはいません。このような基本的なことすら考えていません。専門家が、このように考えていることを忘れてはなりません。
 このような、片頭痛とミトコンドリアおよびセロトニンの関係については、過去の業績をもとに推論していくしかありません。これが臨床家の手法です。ひとつずつエビデンスを確立させるなど愚の骨頂で、何のために頭脳があるのでしょうか。片頭痛という頭痛は、頭で考え、考え抜いて考察し、これをもとにエビデンスは確立しなくてはなりません。
 片頭痛という”機能性頭痛”では、このような手法しかとれません。普通の病気であれば、病理解剖の所見を集積していけば済むことですが、片頭痛で死亡する方がいないため病理学的所見は皆無であることを忘れてはなりません。ということは、あくまでも論理的に推論して、これを基にエビデンスを確立するしか方法はありません。


 その、過去の業績とは、以下のようなものが判断の基準となっています。


1)下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア.神経研究の進歩:46(3) 391-396. 2002
2)下村登規夫、村上文代、猪川嗣朗:片頭痛の病態と発症機序. 神経内科 45:95-101,19961)

3)下村登規夫:頭痛患者の生活指導の基本と応用ーDASCH diet を中心に 頭痛診療のコツと落とし穴,坂井文彦編 中山書店,東京, p164、2003
4)下村登規夫、村上文代、小谷和彦、猪川嗣朗:片頭痛治療のトピックス。医薬ジャーナル 35(11):2876-2880, 1999
5)下村登規夫, 村上文代, 小谷和彦ほか:新しい治療概念「分子治療学(Molecule-based therapy)」に基づいた片頭痛の治療. 治療 81:1861‐1865、1999
6)後藤日出夫:お医者さんにも読ませたい 片頭痛の治し方.健康ジャーナル社 .2014


 学会を主導される方々は、こうした鳥取大学神経内科の先生方の考え方を問答無用で無視され、医学以外の分子化学から論じる考え方を論外とされる結果に過ぎません。
 このように考えないことには、現在の頭痛医療は理解できないと心得るべきです。