疫学調査は必要ないの??? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 私の最も疑問に思うことがあります。まさに”素朴な疑問”に過ぎませんが・・


 未解決な医学領域には、必ずといって、これまで疫学調査(部門)という研究分野が存在しました。しかし、頭痛医学領域には、疫学の分野(部門)が全く存在しません。
 慢性頭痛、とくに片頭痛が原因不明と未だされながらです。


 これまで、日本人を対象とした片頭痛の大規模な疫学調査は、過去に2回行われています。1990年の国勢調査による人口分布に、性別、年代、地域が一致した住民4,029例を抽出したSakai , Igarashi の調査と、鳥取県大山町の18歳以上の住民5758名に対する調査をしたTakeshima らのものです。二つの調査では、ほぼ同様の結果が示されました。
 これ以降は、大規模な疫学調査は、まったく行われることはありません。
 1997 年のSakai , Igarashi の調査は、現在振り返ってみれば、こうした調査そのものは、トリプタン発売以前の、”市場調査にすぎなかった”のかもしれません。


 このような調査の前には、鳥取大学の大規模な疫学調査がありました。


1)下村登規夫他:頭痛の疫学.日内会誌 82:8-13, 1993
2)下村登規夫・他:鳥取県内一都市における片頭痛の実態一診療所、病院の受診調査から一. 神経内科 34:621-625,1992
3)竹島多賀夫ほか(鳥取大学医学部‐脳神経内科): 片頭痛の有病率とQOL:鳥取県大山町における全住民調査。日本頭痛学会会誌 2002;29(1):66-68


 このような下村登規夫先生は疫学調査をもとに、「MBT療法」を提唱され、「マグネシウム補充」「セロトニンの改善」「ビタミンB2」の補充、緑黄色野菜を積極的にとることが勧められてきたのかもしれません。


 しかし、2000年に「トリプタン製剤」が導入されてからは、片頭痛はトリプタン製剤の作用機序から、その病態のすべてが解明されたとされ、頭痛という痛みさえ取り去れば、片頭痛の治療体系は完結したということのようです。

 片頭痛が”遺伝的疾患”であり、原因不明の神秘的な不思議な病気で、このような神聖な病気には、俗人が立ち入ることは許されず、神薬である”トリプタン製剤”をしっかりと飲んで耐えましょう、ということのようです。まさにカルト教団そのものの世界です。
 それも、”俗人立ち入り禁止”の世界のようです。


 「頭痛学」という学問が存在するとすれば、これまでの先人が築いてこられた業績を無駄にすることなく、これを出発点として、自由に推論した論点から、疫学調査を積み重ね、ここから”ある漠然”とした理論を構築すべきと考えます。
 とくに症状が多様であること,確実な診断マーカーが無いため,あくまで症候学的な臨床診断に頼らざるを得ないこと、また,完全な動物モデルが無いことなどにより、片頭痛は科学的な解明が困難な疾患のひとつとされている以上、このような論点から出発すべきです。とくに現在のように人為的に作成された「国際頭痛分類第3版 β版」に雁字搦めに縛られた基準からだけで”慢性頭痛”を論じるには限界があるということです。

 それとも、片頭痛の病態そのものは、トリプタン製剤の作用機序の面から完璧に解明され尽くしたとでも申されるのでしょうか?


 私には、なお解決すべき問題点は山積しているものと思っております。

 この解決すべき山積された課題については、先日も述べた通りです。


山積された課題

 それは、「片頭痛が”多因子遺伝”である」かどうかの検討です。
 そして、”多因子遺伝”とすれば、その環境因子が何か、ということになります。

 さらに、「片頭痛がミトコンドリアとどう関わっているか」の理論的な考察です。
 この点は、過去の研究業績をもとに、これに付随した業績を繋ぎ合わせ推論するしかないはずです。何のための先達の業績なのでしょうか。要求されるのは頭(推論)です。
 この点は下村登規夫先生の「MBT療法」で明確に示されていたはずです。
 これが、明確になれば、セロトニン神経系とどのように関与するか、ということです。


 そして、現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で係わっていると言われています。「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とすれば、この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。片頭痛も同じように、この活性酸素が関係しています。
 糖尿病学会は、糖尿病を”多因子遺伝”と捉え、すでにその”環境因子”を設定されました。さらに、最近では、糖尿病研究は、活性酸素およびミトコンドリアの観点から病態の解明が進められています。
 こうしてみれば、糖尿病学会と遙かに遅れをとっていると言わざるを得ません。まさに、雲泥の差というべきです。


 そして、片頭痛がミトコンドリアと関係があるとすれば、セロトニン神経系との関連から、当然、「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされてくることが推測されます。
 この点は、実際の臨床例から、”頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」のエビデンス”を確立しなくてはならないはずです。
 この「体の歪み(ストレートネック)」は慢性頭痛とくに片頭痛の基本骨格ともなるものであり、このエビデンスを確立することなく片頭痛は論ずることはできないはずです。


 そして、最も大切なことは、患者さん一人一人の詳細な病歴を聴取することによって、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものであるかどうかを、判断しなくてはならないはずです。
 「問診表」という”色眼鏡”を通して、観察すべきではありません。手抜き診療をすることなく、根気強く・丹念に病歴聴取を行うべきです。とくに「臨床神経学」の分野では、この病歴聴取が基本となっているはずであり、この原点に立ち返る必要があります。
 「国際頭痛分類 第3版β版」という人為的な基準といった”色眼鏡”を通して、頭痛患者を診るなど、以ての外(論外)と考えるべきです。
 これを明確にすれば、慢性頭痛のなかでの片頭痛、緊張型頭痛の位置づけが明確になり、機能性頭痛一元論の信憑性が確認されることになります。


 これまでも、再三再四、提起していることです。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

  1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
  2.免疫(腸内環境)の関与
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
  6.ミトコンドリアの関与


 こうした点は、専門家の考え方とは、まさに正反対の論点であるはずです。

 こういったことからも、以前には以下のような記事を掲載しました。


    疫学調査の必要性
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11947655528.html

 
 このような論点から、アンケート調査により「疫学調査」を行うべきと思っております。


 このようにして、トリプタン製剤導入後の現在の”片頭痛治療体系”の是非が問れるべきものと思っております。