頭痛とくに片頭痛には栄養指導は必須です。そして、片頭痛治療の根幹となります。
これまでも、述べていますように、片頭痛は以下のように考えるべきです。
片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
その”環境因子”として、以下の6項目が挙げられます。
1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
2.免疫(腸内環境)の関与
3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
4.体の歪み(ストレートネック)の関与
5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
6.ミトコンドリアの関与
このように、片頭痛は生活習慣病ともいうべきもので、「生活習慣病」では食事指導は必須の項目であり、これなしでは片頭痛は改善されることはありません。
ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。
こうしたことから、片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”と考えられています。ミトコンドリアは食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出していて、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担っています。
このエネルギー代謝を円滑に行うためには、食生活でとくに栄養素・ビタミン・ミネラルを”過不足なくバランスよく”摂取することが大切になります。偏食はダメです。
このなかでも、ミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂取が必要とされます。 ビタミンB群を含む食品としては、卵、豚肉、レバー、うなぎ、焼きのり、大豆、ゴマがあります。
ミトコンドリアは、糖と脂肪と酸素からエネルギーを生成する働きを持っています。
食べ過ぎるとミトコンドリアは、栄養が体に行き渡っているため、怠け始めます。
ミトコンドリアを増やすには、空腹が最も重要です。
ミトコンドリアは、エネルギーが不足している時や、もっとエネルギーの需要が必要な時に活性化して増殖します。
このため、過食は厳禁であり、カロリー制限に捉われるとストレスに繋がりますが、毎日食事制限をしなくても、時々空腹感を味わう「プチ週末断食」をお勧めします。空腹になると体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
難しく考える必要はありません。平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽食、軽めの夕食にする程度で十分です。
また、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。
片頭痛は、ミネラルの1種であるマグネシウムの不足が知られています。頭痛発作中の患者の脳内マグネシウム濃度を調べると、30%から50%の人が、通常より低いことは実験によりわかっています。
マグネシウムは、血管の収縮を抑えたり、血小板が凝集するのを防ぐなど、血液の循環機能を整えます。そのため、マグネシウムが不足すると血管が痙攣(けいれん)しやすくなり、痛みに敏感になるので頭痛がひどくなります。
マグネシウムを大量に摂取することで血液の循環がよくなり、また筋肉の収縮も抑えるので、片頭痛にも緊張型頭痛にも効果があります。
マグネシウムを含む食品としては、大豆製品、ほうれん草、海藻、ひじき、するめ、魚介類、柿などがあり、積極的にこうした食品を摂取しなくてはなりません。
ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に、必然的に活性酸素を発生します。さらに、現代社会では、身の回りは活性酸素に満ちあふれています。こうした過剰に発生した活性酸素は、ミトコンドリアの機能を悪くさせます。このため、活性酸素の毒消しをする物質、フリーラジカルスカベンジャーが必要になってきます。これを増やすことによって、人体に蓄積された有害な活性酸素を無害化することができます。
フリーラジカルスカベンジャーは、おもにビタミンA、C、Eが含まれる緑黄野菜や乳製品から摂取することができます。
ビタミンA,C,Eを含む食品としては、
ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、卵黄、牛乳、バター
ビタミンC:イチゴ、緑茶、ジャガイモ
ビタミンE:大豆、落花生、しじみ、うなぎ
このような食品を毎日摂取することが大切になってきます。
ミトコンドリアは、エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在します。私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
このため、脳内セロトニンが低下することになります。「脳内セロトニンの低下」は「痛み閾値を低下」させ、頭痛を感じやすくさせます。このため、脳内セロトニンを増やすために、セロトニンの前駆物質であるトリプトファンを食物から直接取り入れることが必要になります。トリプトファンを含む食品としては、卵黄、牛乳、乳製品、大豆製品、いりゴマがありますが、これらを摂取する際にはコツが必要とされます。
トリプトファンを食物から直接取り入れる際には、念頭におくべきことがあります。
トリプトファンが通る場所(脳血液関門)に問題があり、ここは、ほかの必須アミノ酸も通っていく場所なのです。食品によってはトリプトファンよりも「フェニルアラニン」とか「口イシン」という必須アミノ酸のほうが多く含まれるものがあります。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べものが、肉類や乳・乳製品なのです。
結局、トリプトファンが多いだけではダメで、それと同時にフェニルアラニンとロイシンの量が少ない食品を選択して摂取しなくてはなりません。
「脳の中に異常のない頭痛」の一次性頭痛(慢性頭痛)は、「生体のリズムの乱れ・歪み」から生じてきます。生活のリズムは恒常性(ホメオスターシス)によって維持されています。恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっております。
自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。
”セロトニン神経系”については、先程述べました。摂取上、知識が必要とされます。
”生理活性物質”は、必須脂肪酸とくにオメガ3とオメガ6の摂取バランスをうまくとることが大切になります。
オメガー6系脂肪酸とオメガー3系脂肪酸の摂取比率は、体質改善当初は[1:1]、改善後は[2:1]が望ましく、シソ油(エゴマ油)や亜麻仁油を日常の食生活に取り入れることが勧められています。
”腸内環境”いろいろな原因で変化しますが、なかでも食生活は大きな影響を及ぼします。欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。食物繊維が不足した「不健全な食事」では、腸内細菌のよい働きを引き出すことはできません。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって最大の敵と言えます。
また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。 抗生物質は病原菌をやっつけるだけでなく、よい腸内細菌まで殺し、腸内フローラを悪化させます。家畜に投与された抗生物質が肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱らせるようなこともあります。
特に食事のよし悪しは、腸の健康にとって決定的ともいえる重要性をもっています。高タンパク・高脂肪の肉や牛乳などを減らし、野菜料理に漬物や納豆などの発酵食品を加えた伝統的な日本食にすれば、“腸内フローラ”の崩れたバランスは回復し、健康を取り戻すことができるようになります。「食物繊維」の豊富な食事によって、腸内細菌をよい状態に維持することができるのです。欧米型の食事をやめて、野菜や発酵食品を中心とした伝統的な日本食にすることが、腸内細菌をよい状態に保つ強力な方法となります。
私たちは、知らないうちに「有害物質」を口にしています。有害物質となるものは、添加物入りの食品や、農薬を使った野菜などです。食品には、添加物を使ったものがたくさんあります。このような有害物質になるものを身体に取り込まないことが大切です。
無意識に摂取される、こうした有害物質を解毒するためのデトックスが必要となってきます。このため、水を十分に補給し、食物繊維を十分に摂取することが大切になってきます。
また、「インシュリン過剰分泌」を抑える食事摂取方法も大切です。
このようにざっとみても、食生活がいかに大切かが理解されたはずです。
このような知識が最低限必要とされるということです。
クスリだけでは、片頭痛は到底改善できません。
このようなことは、鳥取大学の下村登規夫助教授は、「MBT」という頭痛治療法を提唱され、次の5つを改善することで、およそ9割の片頭痛が改善するとされていました。
ただし、最低でも3ヶ月、なるべく半年以上続けることが大切といわれていました。
1 マグネシウムの補充
2 セロトニンの改善
3 ミトコンドリアの機能改善
4 フリーラジカルスカベンジャーの増加
5 自律神経の安定
MBTでは、自律神経の安定も提唱しています。歩行運動が効果的とされます。
以上のように断片的に記載すれば、錯綜として何が何だか判りにくくなります。
こうしたことから、系統的・体系的に栄養学を学ぶことが大切であり、必要になります。
第1章 栄養学の基礎知識
1.エネルギー産生能力を増強させるために・・
2.からだづくりはビタミン&ミネラルの補給がカギ。
第2章 最新の栄養学的知識
1.動物性タンパク質の過剰摂取の害
2.「牛乳信仰」の弊害・・・牛乳は悪い食品!?
3.砂糖の過剰摂取の害
4.第6の栄養素「食物繊維」
5.ますます明らかになってきた「腸内細菌の重要性」
6.脂肪・油の摂り過ぎによる弊害と、油に関する考え方
■1.動物性脂肪と植物性油
■2.脂質についての、新しい分類――分子構造の違いによる分類
■3.各脂肪酸の摂取状況(飽和脂肪酸・オメガ9・オメガ6・オメガ3)
■4.体内での各脂肪酸の変換
■5.最新の油の考え方――「オメガ3」と「オメガ6」のバランス
■6.局所ホルモン(プロスタグランジン)の働き
「酸化ストレス・炎症体質」を益々悪化させるもの
細胞膜と過酸化脂質について
第3章 現代人の栄養摂取状況
高タンパク、高脂肪、砂糖過剰、ビタミン・ミネラル不足、低食物繊維
食生活改善について・・・
このような知識を得るために、以下のようなファイルを用意しています。
片頭痛の生活習慣の改善 食事療法編
http://taku1902.jp/sub276.pdf
このように、栄養指導は片頭痛治療上、根幹となっているはずでありながら、専門家は、ただ単に、「マグネシウム補充」「ビタミンB2」を楊子のツマのごとくあげているにすぎません。
さらに、平成22年11月に日本頭痛学会理事長が開設された「埼玉国際頭痛センター」には、食事指導の部門は存在しないことからも、専門家の食事指導に対する考え方が象徴されているようです。しかし、この施設は片頭痛治療のモデル施設とされています。
このような施設をみても、専門家が、いかに食事指導を軽視しているのが伺われます。
片頭痛が”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”であるという、基本的なことを忘れてはなりません。
こういった理由から、片頭痛治療上、栄養指導は必須の項目になっています。
食事指導ぬきでは、片頭痛は改善されることは、絶対にあり得ないことです。
ただ単に、楊子のツマのごとく「マグネシウム補充」「ビタミンB2」を挙げるだけでは話にならないということです。
こういった意味でも、片頭痛が生活習慣病である以上、おなじ糖尿病では、食事指針として「食品交換表」があります。これに匹敵するものが必要とされます。
片頭痛治療の世界は、まさに”時代遅れ”のことをしているようです。