片頭痛のトリガー(誘因)は見つかるのでしょうか? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

「誘因探し」の重要性


 これまで「片頭痛の治療原則」として、まず第一に大切なのが「誘因探し」と、されてきました。このように何はさておき、「誘因探し」が求められてきました。
 本来、片頭痛は、発作が治まれば全く何ともありません。これは、何らかの引き金(誘因・トリガー)が原因で起きてくるからです。
 片頭痛は、様々なことが引き金になって起きることが知られています。例えば心筋梗塞を防ぐには、そのリスクファクターである高血圧や運動不足を解消することが大切であるのと同様、片頭痛を防ぐには、引き起こす原因を探しだしそれを除去することが大切です。
 片頭痛の誘因には、飲食物やストレス、人混みなど、さまざまのものがありますが、特定する際に難しいのは、人によって誘因が異なること、またそのときの体調によっては、誘因があったからといって必ずしも片頭痛が起きるとは限らないということです。
 片頭痛が起きたときには、その前に何を食べたり飲んだりしたか、そのとき何をしていたか、回りの環境はどうだったか、などを分析し、片頭痛が何によって起きたのかを考えてみましょう。同じ事が原因で何度も頭痛が起きるようであれば、それが自分の片頭痛の誘因だと判断し、必要のないものはできるだけ避けることで、片頭痛が起きるのを防ぐこ
とができます。このように言われてきました。
 片頭痛の誘因となるものは、睡眠不足や睡眠過多、人混み、赤ワイン、ビール、チョコレート、ハム、ソーセージ類などがよく知られています。このほかにも何か強い臭いが刺激になって起きる場合、また夢中になって読書やテレビゲームをしたとか、夜遅くまで友人たちと喋っていたなどということも、誘因になることがあります。
 人によって、またそのときの体調によって、環境によって、片頭痛を引き起こす誘因はさまざまです。睡眠不足が続きストレスも重なっている、というときに赤ワインを飲んだら激しい頭痛がきた、というように、いくつかの誘因が複合的に重なっているときにも注意が必要です。ここに「誘因探し」の難しさがあります。


 これまで多くの先生方は、片頭痛の誘発因子を挙げられます。東京女子医科大学・脳神経外科の清水俊彦先生は「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)でその詳細を示されます。

 こうしたことから、これまで「発作時の記録」の重要性を指摘されて来ました。

 要するに、片頭痛を防ぐには、その誘因を探し出しそれを除去するために必要だからです。
 最近では、小橋雄太さんは、そのブログ「イミグラン錠・副作用なしに偏頭痛を治しちゃえ」の中で、頭痛発作時に、その発作前日と当日の状況を詳細に記録を重ね、これを積み重ねる事によって、共通の発作要因を探り、原因と思われるものに対してひとつずつ対処していく方法を述べています。
 小橋さんは記録のための「専用ノート」を用意して、ノートが真っ黒になるまで詳細に記録されたようです。まさに執念というほか無かったのではないでしょうか?小橋さんが述懐されておられるように、なまじトリプタン製剤が効いていたらここまではしなかったと・・述べております。

 このようにまさに”執念”が必要とされます。
 このように「誘因探し」の重要性を指摘され、患者さんにも求められてきました。


誘因が、果たして見つかるのでしょうか


 私も、専門家の申されるように、片頭痛患者さんを最初に診せて頂いた際に、発作時の状況を記録して頂くようにお願いしてきました。その際に、私は、北里大学の坂井文彦・五十嵐久佳先生らが考案された「頭痛ダイアリー」を利用させて頂いていますが、頭痛発作時に「思い当たることがあれば」適用欄にメモしてもらうようにお願いするのですが、大半の方は、頭痛の起きた日と程度は記載されるのですが、肝心の「思い当たること」の記載はありません。いつも、私は、再来時に、この点をお聞きするのですが、決まって返ってくる「返答」は何がきっかけになったのか、原因はよく分からないということでした。
 片頭痛発作は、何か引き金になるものが無い限り起きないと、くどいばかりに説明するのですが、殆どの方々は誘因に気がつかれることはありません。あたかも、青天の霹靂のように、突如に、起きて来るという返事しか得られません。
 これまで、当医院では、一般的に、誘因(トリガー)となりうるものをすべて記載したものを、お渡しして、発作時に何が関与していたかを見つけ出すようにお願いしていました。具体的に、どこで、どのような状況で起きたのか、例えば、その日の体調はどうであったか(食事はちゃんと摂取していたか、睡眠は十分であったか、あるいはいつもより寝過ぎていなかったか、生理中ではなかったか)また、天気がどうであったか、さらに、どのような場面で頭痛が起こり始めたか、等々、気がついたことを記録してもらうことです。 このような誘因を見つけ出せるのは、患者さん本人しか出来ないことだからです。

 最近、来院された方で、ご主人が「片頭痛」なのですが、いつも奥さん同伴で来られ、本人に何を質問しても、何一つお答えにならず、奥さんだけが、ペラペラお話になり、この中で、休日の時に起きているように思われたため、睡眠の取り方についてお聞きして、初めて「寝過ぎ」が誘因と判明しました。そのため、休日も、平日と同じように起床するように指導し、一端は、落ち着いたかのようにも思われたのですが、最近、再度、激しい頭痛が4,5日続くため来院されたのですが、本人に何を尋ねても一切お答えになりません。今回は奥さん自身も気がついた点がなかったようです。ただ、痛い、痛いと言って来院されるのでは、何も解決しませんでした。
 このような例をみて理解して頂けると思いますが、夫婦で、1日のうち半分は生活を共にしていても、発作の誘因は、本人以外には、全く分からないということです。
 最も、患者さんにして欲しくないことは、片頭痛の原因が、CTで分からなければ、MRIであれば、原因が分かるのではないかと考えて、MRIを撮影してもらうことです。
 MRIを撮影したからといって、片頭痛の”誘因”は絶対にわかりません。
 いずれにしても、患者さん本人が、片頭痛発作時の状況の把握・分析の積み重ねを行うことが、片頭痛克服するための、最低必要条件だろうと考えて行って参りました。


 発作時の記録方法ですが、私は、これまで、上記のような、北里大学の坂井文彦・五十嵐久佳先生らが考案された「頭痛ダイアリー」を利用しておりますが、このダイアリーの摘要欄の空欄が狭いためか、ほとんどの方は記載されません。ただ頭痛の起きた日と、その程度くらいしか記入されません。このため、小橋雄太さんのように、専用のノートを用意して、発作状況を詳細に記録するのが一番よいのでしょうか?
 このように記録を重ねるだけで、自分自身で、発作の誘因が探り出せる方々は極めて少ないというのが実感としてあります。
 以前、「全国慢性頭痛友の会」の会長の秋山扶佐子さんに、「誘因探し」について意見を求めたところ、会長には、会員の片頭痛の方々の殆ど全員が「発作の引き金」が分からないという指摘でした。全く、その通りであると納得しました。
 このように、いくらこのように発作時の記録をお願いしても、発作の引き金が何かを見いだすことができない方が殆どのようです。


なぜ、誘因は見つからないのでしょうか


 これには2つが原因として考えられます。一つは、発作の誘因が、”日常生活そのものの中にある”ために気がつかない場合と、もうひとつは、自分の「片頭痛発作」のパターンがよく理解されていないことです。
 この「片頭痛発作のパターン」がよく分かっていない場合は、発作当初は緊張型頭痛のような状態から始まり、これが次第に片頭痛のパターンに移行していく方々です。
 これは、緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであることに他ならないからです。
 片頭痛の方々がすべて、”頭痛信号”を感じているわけではないということです。
 緊張型頭痛から始まり、これが次第に増悪して片頭痛へ移行していく場合には、こうした”頭痛信号”は感じることはあり得ないということです。

 問題は、発作の誘因が、日常生活そのものの中にあるために気がつかない場合です。
 この場合、ストレートネックを必ずといって良いくらい持っておられます。
 最近、来院された 50歳男性の患者さんは、片頭痛の家族歴が不明で、頸椎レントゲン検査では、ストレートネックを呈し、直立位で、頸椎が前傾していました。発作の誘因として思い当たるものはなく、ただ趣味の「ラジコンの組み立て」を4,5時間にわたって長時間「うつむき姿勢」で行ったり、横になって、右側臥位で2,3時間ビデオ鑑賞を行って、枕を高くして就寝すると、翌朝、必ず、頭痛発作が起きると述懐されていました。
 この方は、「姿勢」に関連して、発作が起きており、本人は、トリガーを自覚されておられませんでした。このように「姿勢」に関連したものは、自分では、まず、トリガーを自覚できません。
 こうしたことから、私は、このような引き金となる要因としての「ストレートネック」以外に「食生活のあり方」との関連を付け加えるべきと考えるようになりました。そして、これらは日常生活を送っているだけで、誘因に繋がるというやっかいなものなのです。

 最近の誘発因子調査によりますと、「睡眠不足」71.1%、「頸・肩の凝り」67.1%、「旅行・外出」65.3%、「過労」52.9%、「目の疲れ」44.5%、「緊張」43.6%、「睡眠過多」27.6%などが挙げられました。また、チョコレートや赤ワインなどの特定の食品により頭痛が誘発されたとする人は極めて少数でした。
 このように、誘発因子として 「頸・肩の凝り」が高頻度に、挙げられています。
 実地臨床の場面でも、発作直前に、頸筋の異様な凝り・痛みを訴えられることを経験します。この事実は、絶対に無視すべきでないと考えます。あなたは、どうですか?
 特に、事務系のお仕事に携わっておられる方が、長時間パソコンとにらめっこした後に、発作が誘発された経験をお持ちの方は、いらっしゃると思いますが、いかがでしょうか?
 しかし、現実に片頭痛でお悩みの方々の大半は、この引き金に気づいておられません。 これは「ストレートネック」が関連していることの証拠とも言えます。
 さらに、チョコレートや赤ワインなどの特定の食品により頭痛が誘発されたとするのではなく、食事の問題・食習慣となりますと、さらに把握すること自体が困難ということです。こうしたことは、日常何も意識せずに行っていることが関係しているために、当然本人が気がつくこと自体無理なことだと考えます。


今後、どうすべきでしょうか


 こうしたことから、現段階では、生理に関連してとか、気圧の変化(天気が悪くなる前)とか、ストレスとかいったものしか患者さんは誘因として気がつかれないのではないでしょうか。こういったことから「誘因探し」そのものは困難を極めるというのが実情ではないでしょうか? 結局、「誘因探し」が片頭痛をなくすための方法としては、いかに不適切なものかが理解されるはずです。

 片頭痛の引き金となる「誘因」を見つけ出すことによって、誘因となるものを避けるか・もしくは取り除くことによって、頭痛発作を起きなくそうと勧められてきました。しかし、「誘因探し」の重要性が強調されている割には、大半の方々はこうした誘因を見つけ出すことが出来ない方が殆どです。そして、こうした「誘因」として挙げられるものは、生理とか天気の変わりめ(雨の降る前がとくによくない)、ストレスを挙げる方々がほとんどのようです。
 こうした生理・天気・ストレスに関しては、いわば片頭痛でお悩みの方々には”是正”不可能なことばかりであり避けられないため、おのずと”諦める”方々も多かったのではないでしょうか。こうしたことから考え方を変える必要があります。
 ということは、生理時になぜ、片頭痛発作が起こりやすいのかを知ることであり、なぜ片頭痛発作が、天気の変わりめ(雨の降る前がとくによくない)に左右されるのか、さらにストレスが・寝過ぎが、なぜ片頭痛にとってよくないのかを知ることです。
 このように、片頭痛はどのようにして起きてくるのかといった”一般的な知識”を得ることの方がずっと大切になってくるはずです。


  「片頭痛のセルフケア」 http://taku1902.jp/sub294.pdf


 こういったものを参考にして、片頭痛がどのようにして起きてくるのかを、まず、知ることが大事になります。3時間もあれば読破できるはずです。
 このような基礎知識をもとにして、頭痛発作時の状況を見つめ直すことが大切です。

 「誘因探し」といった雲をつかむようなことで無駄な時間を費やすべきではありません。
 人によって、またそのときの体調によって、環境によって、片頭痛を引き起こす誘因はさまざまです。睡眠不足が続きストレスも重なっている、というときに赤ワインを飲んだら激しい頭痛がきた、というように、いくつかの誘因が複合的に重なって発作が誘発されていることを考える限り、時間の浪費でしかありません。
 このような無駄な時間を浪費するよりは、こうした時間を「片頭痛がどのようにして発症し、どういった生活習慣の問題点があれば起こってくるのか」を知ることに費やすべきです。こうした知識をもとに、これまでの自分の生活習慣と照らし合わせれば、自ずと問題点が明らかになるはずです。あとは、これを是正すればよいことになります。
 もっと最短距離で、片頭痛は改善されることになります。


 このように、考え方を改めるべきです。