先日述べましたように、これまで医療の最底辺にある方々を中心として、神経症状の方々を診せて頂いてきました。こういったことから、この分野における専門医の方々とは”診方も考え方”も当然異なってきます。それは、ガイドラインに示される診断基準に合致しない境界領域をみる機会の多い神経内科専門医崩れの一般開業医の視点から見ていることを意味しています。
このことは、頭痛診療の場面で如実に示されます。
一般の開業医は、最初に頭痛を自覚されるような状態で診る機会が極めて多く、こうした方々は「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断基準からすれば、緊張型頭痛の方々です。 こうした方々は、前屈みの姿勢を強制される作業環境に置かれる方々が多く、こうした姿勢に対する配慮を行うことによって大半の方々は改善されます。(中には、ミトコンドリアの働きが悪く、このためセロトニン神経系の働きまで悪くなって、こうした”姿勢の悪さ”が引き起こされてくる場合も当然ありますが・・・)
しかし、このような作業環境が長期間にわたり、姿勢に対する配慮を怠り、頭痛が度々起きるため市販の鎮痛薬を頻繁に服用され、食生活の問題が加わることによって(ミトコンドリアの働きを悪化させ、このためセロトニン神経系の働きまで悪くなって)、「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断基準からすれば、片頭痛としか診断しえない頭痛に移行してきます。
このように、医療の最底辺から頭痛患者さんを観察する限り、同一の患者さんが緊張型頭痛から片頭痛へと移行していく経過が鮮明に描かれてきます。
「国際頭痛分類 第3版 β版」では、緊張型頭痛と片頭痛の移行型を示すものが記載されているにも関わらず、「慢性頭痛診療ガイドライン」では、緊張型頭痛と片頭痛も明確に区別すべきとされ、「国際頭痛分類 第3版 β版」でも、緊張型頭痛と片頭痛とは、それぞれ”明確な定義づけ”がなされています。
ということは、「国際頭痛分類 第3版 β版」にしても「慢性頭痛診療ガイドライン」にしても、人間が人為的に作成した基準にすぎないはずです。緊張型頭痛にしても片頭痛にしても、あくまでクリアカットに定義したに過ぎないはずです。どうしてこのように区別すべきかは、頭痛時にトリプタン製剤を使うかどうかを決めるための基準にすぎないはずです。緊張型頭痛も片頭痛も連続したものであるはずなものを、このように人為的に区分したにすぎないはずです。(あくまでも薬を使うための基準です。)
こうした現実を見据えないのが頭痛専門医の考え方のようです。
このような「国際頭痛分類 第3版 β版」の定義に従って、無理矢理、頭痛患者を区別すること自体無理があることをいつまでも、認識されないようです。
ただ、頭痛患者の実態を把握・認識される方々もおられるようですが、これまでトリプタン製薬メーカーにいろいろ便宜をはかってもらったという”負い目”から、「国際頭痛分類 第3版 β版」と「慢性頭痛診療ガイドライン」を無視することが出来ないというのが本音のようです。このように「国際頭痛分類 第3版 β版」と「慢性頭痛診療ガイドライン」を遵守される限りは、学会からも”村八分”にされることもなく、これまで通りトリプタン製薬メーカーにいろいろ便宜をはかってもらえることになり、万事丸く収まるといった論理のようです。こうしたことを考える限りは、いつまでも現状が維持されることになり、慢性頭痛の本態解明には程遠いということになります。
そして、頭痛を訴えた場合、皆さんは”何か頭に異常があるのではないか”と心配され、まず脳神経外科を受診されます。昨日も申し上げましたように、本来、脳神経外科は、手術などが必要な病気を扱う診療科です。ここで注意しなくてはならないことは、異常なしと言われたということは、手術するような頭痛でないということです。このような脳の中に異常のない頭痛は「慢性頭痛(一次性頭痛)」ということです。このため”適当に”鎮痛薬もしくはトリプタン製剤が処方され、場合によっては「抗てんかん薬」や「抗うつ薬」といった予防薬が処方されるだけのことです。こうした治療法は、受診前に”市販の鎮痛薬”を服用していたことと殆ど大差なく、あくまでも「対症療法」にすぎません。
このように、「脳の中に異常のない頭痛」を脳神経外科という”脳の手術を行うべき”診療科が、慢性頭痛を扱うことに対して疑問を持たなくてはなりません。
こうしたことから、改めて、もっと適切な診療科を受診しなくてはなりません。頭痛そのものが起きなくする指導が受けられる医療機関を受診しなくてはいけません。
私のように、医療の最底辺で”頭痛患者”さんを診せて頂くたびに”ボヤク”点です。
このように、最初に頭痛を訴えて脳神経外科を受診され、”適当に”鎮痛薬もしくはトリプタン製剤が処方され、場合によっては「抗てんかん薬」や「抗うつ薬」といった予防薬が処方された方々が、後々、”鎮痛薬もしくはトリプタン製剤”による「薬剤乱用頭痛」を併発され、どうにもならない状態に至って当医院のような医療機関を受診される方々が後を絶たないからです。もっと初診の段階で、やりようがあったものをと・・ボヤキしかないことです。初期の段階から、これまでの生活習慣を点検し、どこに問題があったのかを振り返って反省させるような指導さえすれば、慢性頭痛は繰り返し起きなくなります。
以上のようなことが、偽らざる、まさに深淵なる”ボヤキ”です。
これで、このシリーズの”まとめ”とさせて頂きます。