まず最初に、神経内科とはどんな病気を扱う内科でしょうか?
よくある症状としては、「頭の痛み、ものわすれ、しびれ、めまい、かってに手足や体が動いてしまう、ふるえ(不随意運動)、うまく力がはいらない(脱力)、歩きにくい、ふらつき、つっぱり、むせ、しゃべりにくい、ろれつがまわらない、ひきつけ、けいれん、ものが二重にみえる(複視)、意識障害」です。
代表的な神経内科の病気としては、頭痛、脳卒中、認知症、てんかん、パーキンソン病、神経難病 がありますが、特に神経内科専門医はこの”神経難病”を中心に診療します。
神経難病とは神経の病気の中で、はっきりした原因や治療法がないものをいいます。具体的には運動ニューロン病(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など)、脊髄小脳変性症(脊髄小脳萎縮症、他系統萎縮症など)、多発性硬化症、重症筋無力症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺などがあります。原因がわからないといっても途中まではわかっているものや、根本的に直すことは難しいけれども、日常生活が可能になるような治療があるものもあります。神経難病といっても治療が有効なものと難しいものとがあります。
それでは、神経内科と他の科はどのように違うでしょうか?
よく神経内科はわかりにくいといわれます。科の名称が紛らわしいためと思いますが、特に間違えられやすいのが精神科、精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は精神科の仲間で、おもに気分の変化(うつ病や躁病)、精神的な問題を扱う科です。また、心療内科は精神的な問題がもとで体に異常をきたしたような病気を扱う科で、もともと内科のトレーニングを受けた先生が多いですが、一部精神科の先生方も心療内科として診療を行っています。
神経内科はこれらの科と異なり、精神的な問題からではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。まず、神経内科でどのような病気か診断し、手術が必要な病気の場合は脳神経外科にご紹介します。脳神経外科は外科ですので、基本的に手術などが必要な病気を扱います。脳腫瘍や脳動脈瘤などが脳神経外科でみる代表的な疾患です。慢性頭痛のような”脳に異常のない”疾患を診る科ではありません。
精神科の病気のほとんどが実際に病気の患者の脳を拝見しても異常を見つけられないのに対し、神経内科で扱う病気は脳をみると何かしら病気の証拠をみつけることができます。但し、中には精神科と神経内科どちらでも見る病気もあり、痴呆やてんかんなどはその代表的なものです。最近は痴呆も原因がわかりつつあり、脳の変化もよくわかってきています。
このようにいろいろな科が関係することもありますが、まずは全身をみれる神経内科にかかっていただき、必要であれば他の科に紹介していただくのが望ましいと思います。
また、大学によっては神経内科とよばず脳神経内科などほかの名称の場合もあります。
私は、こうした中の「急性期脳梗塞」を中心として診せて頂いてきましたが、中にはこうした神経難病それぞれを経験するために日本全国の専門施設を渡り歩く猛者もいます。
私は、一芸に秀でれば・・との考えで脳卒中だけでしたが・・
しかし、昨日も述べましたように急性期脳梗塞の診療も断念し、さらに神経内科専門医も返上した現在では、「頭の痛み、ものわすれ、しびれ、めまい、かってに手足や体が動いてしまう、ふるえ(不随意運動)、うまく力がはいらない(脱力)、歩きにくい、ふらつき、つっぱり、むせ、しゃべりにくい、ろれつがまわらない、ひきつけ、けいれん、ものが二重にみえる(複視)」といった訴えの方々を神経学的見地から診察するの生業とし、これまで述べて参りましたように、これらの大半は機能性疾患が大半を占めております。そして、これらの神経症状を示すものの多くは”薬剤”によって引き起こされてくるものです。このため、一般開業医の先生方の”尻ぬぐい的な役割”ばかりです。
また、神経難病を始めとして代表的な神経疾患については学会はガイドラインを作成されます。こうした診断基準に合致しない”境界領域の部分”にある方々を当然診ていることになります。このようなグレーゾーンの方々ばかりを診ており、このため年と共に診かたも次第に”枯れた感覚”になってきました。
まさに、医療の最底辺にある方々を中心として、こうした神経症状の方々を診せて頂いてきました。こういったことから、この分野における専門医の方々とは”診方も考え方”も当然異なってきます。それは、ガイドラインに示される診断基準に合致しない境界領域をみる機会の多い神経内科専門医崩れの一般開業医の視点から見ていることを意味しています。
この点を明確にしておかないと、これまでのブログの記事は理解されないと考えます。
「老神経内科医のボヤキ その3 つづき」
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11965221214.html
でも述べましたようにこうした頭痛・めまいという機能性の疾患では、確実なエビデンスは恐らく確立されることは、将来的にもないと思われ、”こじつけでも”患者さんが納得されれば済むことです。診断基準は存在はしますが・・
そして、頭痛・めまいをどのようにして改善させるのか、といった指導が医師に要求されているはずであり、少なくとも”原因不明”といった患者さんを不安に陥れるような言動は、医師として厳に慎むべきと思っております。
このように、専門医の方々からみれば、”エビデンス・根拠のない”考え方と蔑まれながら、まさに割の合わないことをしているのかもしれません。