後天性ミトコンドリア異常症 一中毒,神経変性,老化一 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 KSS,MERRF,MELAS等のミトコンドリア脳筋症のように,ミトコンドリア遺伝子(mtDNA)の遺伝的変異が病因として同定されているものの他に,後天性ミトコンドリア病として,環境因子や薬剤によるミトコンドリア機能障害(中毒),神経変性疾患におけるミトコンドリア異常の関与が見出されています。環境因子や薬剤によって引き起こされるミトコンドリア異常の代表としては,Leber遺伝性視神経萎縮症とcyanide,Reye症候群とaspirin,adriamycinによる心筋障害が挙げられます。また,神経変性疾患であるパーキンソン病,Friedreich失調症,遺伝性痙性対麻痺においてもミトコンドリアの機能的異常が深く病態に関与しています。さらに,老化においては,加齢に伴うミトコンドリアの機能的障害と酸化ストレスの増大が中心的役割を担っています。


ミトコンドリア異常は、筋機能不全、代謝不全、神経変性、視覚異常、更には、がんや心血管障害、腎不全など、一見、関連性の低いと思われる症状や疾患にも影響を及ぼすと考えられており、これらはミトコンドリア病を含めてミトコンドリア関連疾患と呼ばれます。ミトコンドリア異常に関連すると考えられている疾患例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳梗塞、気分障害、糖尿病、脂肪性肝疾患、骨粗鬆症、がん転移、末梢動脈疾患(PAD)、加齢性難聴(AHL)などが挙げられます。


 このような”ミトコンドリア病”という病気が増加傾向にあります。
馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。
 今までは、先天性の病気として考えられていましたが、現在は後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。


 ミトコンドリアは体のほぼ全ての細胞の中にある微小器官でエネルギーを生産する働きを持っています。
生きる為にもっとも必要な器官でもあります。私達が行っている呼吸で吸い込んだ酸素もミトコンドリアが糖や脂肪を燃やす燃料として使われています。


 ミトコンドリア病によりミトコンドリアの機能が低下すると、以下のような症状が起こります。


 ◾太りやすくなる

 ◾シミ・シワが増える
 ◾疲れやすくなる
 ◾脳の障害(けいれん、脳卒中、精神症状、発達の遅れなど)
 ◾感覚器の障害(物が見えにくい、音が聞こえないなど)
 ◾筋の障害(運動ができない、疲れやすいなど)
 ◾心臓などの臓器の障害
 ◾神経の障害


 ミトコンドリア病は軽度から重度までありますが、該当する項目があった場合は早めの対処が必要です。

 薬の副作用でミトコンドリア病になる人が増えています。
どんな病気でもそうですが、生活のどこかに原因があります。
 ミトコンドリア病の大部分は不規則な生活や摂取する栄養面の偏り、薬の乱用によって引き起こされます。


そして、片頭痛は、これまで”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であるとされています。


Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14
下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア。神経研究の進歩、46(3)391-396,2002
間中信也:マグネシウム Magnesium、頭痛大学、インターネットホームページ


これまでも、再三、述べて来ましたが、マグネシウム欠乏で片頭痛の起こるメカニズムとしては

 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
マグネシウムイオンが不足すると細胞のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、細胞内に入り込んだカルシウムイオンは、細胞外へ出ていけません。カルシウムは細胞内に少しずつ蓄積してきます。細胞内カルシウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
 したがって、マグネシウムイオンの低下は細胞内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。これは能動的にナトリウムポンプを調節しているマグネシウムイオン感受性のナトリウム/カリウムATPaseの活性低下を招くとともに、同じくマグネシウムイオン感受性のATP依存性カルシウムポンプの活性低下を招くことになり、細胞は興奮しやすくなります。
このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの好気的代謝異常をきたして、神経細胞の易興奮性をもたらすことになります。
 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。
 ミトコンドリア代謝異常が基礎にあったとすると、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神経細胞の易興奮性はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの代謝異常の結果として生じているものと思われます。このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。
 これが「脳過敏症候群」の本質と考えられ、市販の鎮痛薬(アスピリン)の問題だけとは言えないはずです。


 こうした、薬剤によるミトコンドリアへの影響として、以下のようなものが指摘されます。


 アスピリンに代表されるサリチル酸製剤は、 幾つかの経路で、ミトコンドリアの働きを妨害する、 と多くの研究で確認されています。
それ以外に長鎖不飽和脂肪酸という油の一種や、抗てんかん薬のバルプロ酸(商品名デパケンなど)も、 同様にミトコンドリアへの毒性を持っています。
特にバルプロ酸は現在てんかん以外にも、 片頭痛の予防薬、気分障害の治療薬として多用されており、その使用には充分な注意が必要です。


これまで、バルプロ酸の薬理作用と脳内代謝機能に及ぼす影響に関する研究としては、


 The pharmaceutical action and the effect against brain metabolic function of valproate
  Research Project Number:21791121


 バルプロ酸の臨床作用機序を、バルプロ酸のglycogen synthase kinase3β(GSK3β)に対する阻害作用に注目して検討しました。実験動物の海馬歯状回におけるGSK3βの発現を抑制したところ、強制水泳試験および尾懸垂試験において抗うつ様効果観察されました。従って、バルプロ酸のGSK3β阻害作用が、バルプロ酸の臨床作用機序と関係している可能性が示唆されました。次に、バルプロ酸の中枢神経系における副作用の発症機序を、脳ミトコンドリア機能への直接的な影響に注目して検討しました。実験動物の脳切片にバルプロ酸を投与しますと、ミトコンドリア機能は低下しました。従って、バルプロ酸はミトコンドリアを傷害して中枢神経系副作用を引き起こす可能性があることが示唆されました。


 これとは、別に、薬剤性パーキンソニズムの機序について、以下のように指摘されていました。
 バルプロ酸でも、薬剤性パーキンソニズムとなる報告があります。一報告だけですが(Armon etal, 1996)、12 ヶ月以上、バルプロ酸を投与されていた患者36 例中33 例でパーキンニズムが出現したと言っています。ただ、中止とともに3 ヵ月から12 ヶ月で消失し、経過は良性であるとしています。これの報告以外にこれほどの頻度の報告はなく、まれな病態と考えられています。抗てんかん薬による副作用の機序としては、元々小さい病変を持っている患者で、しかもある医薬品に特異的な反応を示すという機序で出現する場合と、いわゆる薬物中毒という機序で出現する場合、さらに両者の機序が合わさって起こっている場合があると言われます。バルプロ酸での頻度の高い報告をした著者らは、バルプロ酸がミトコンドリアの機能障害を誘発したためと推測しています(Armon et al,1996)。


 このように、抗てんかん薬のバルプロ酸(商品名デパケンなど)の「ミトコンドリアへの毒性」が懸念され、片頭痛とミトコンドリアの関連性が示唆され、これまでマグネシウム不足の改善とビタミンB2の投与が推奨された時期もあったようですが、現在では、片頭痛の予防薬として「バルプロ酸(商品名デパケン)」が認可されているということは、何なのでしょうか?


 ただ単に、一時的に「発作が抑制されれば」それでよいという考えなのでしょうか?