「脳内セロトニンの関与」
体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことになります。
このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセロトニン不足を招きます。
ノルアドレナリン神経はストレスに関係する神経です。不快なストレッサーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初に反応するのがノルアドレナリン神経です。わかりやすく言えば、脳内の危機管理センターです。危機を察知すると、体の面では即座に血圧を上げたり、心の面では不安を感じさせたりするわけです。
ノルアドレナリン神経も重要な神経ですが、暴走するとどうなるかといいますと、大したことではないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パニック障害」です。
ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロールすることができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がることと、ノルアドレナリン神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという点で、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンがバランスを取り合っています。
しかし、「慢性的なセロトニン不足」に至れば、「ノルアドレナリン神経」を制御できなくなります。このようにして、「痛みを感じやすく」なります。
「ミトコンドリアの関与」
通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏に陥ります。
ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。また副腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
こういったマグネシウムの消耗が身体にストレスを与え、ここからパニック発作が引き起こされます。
またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしまうのです。
アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要とされますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいます。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。
マグネシウムは、神経系の興奮を自然と鎮めてくれます。
1995年に行われた研究でも、マグネシウム不足が脳に強度の興奮をもたらし、逆にマグネシウムが興奮を落ち着かせることがわかっています。13人の女性が初めの3ヶ月、1日に115ミリグラムのマグネシウム(一日の推奨量の30%にしかならない量)を摂取しました。その結果、脳波検査では強度の興奮性があることがわかり、その後の3ヶ月は、1日に315ミリグラムを摂りました(推奨量の360ミリグラムに近い数値)。そうしたところ、これだけの量の変化でもたった6週間後には脳波検査において、脳機能に大きな改善がみられ、興奮性が低下を見せたのです。
ほとんどの人がセロトニンが働くには、実はマグネシウムが重要な栄養素であるということを話題にしません。マグネシウムは、脳細胞によるセロトニンの放出と取り込みに必要な栄養素で、適正なマグネシウムがあれば、自然と十分なセロトニンが作り出され、感情にも落ち着きが出てきます。
ところが前述のようにストレスにより、マグネシウムが不足してしまうと、悪循環が始まって脳内の適正なセロトニンレベルを維持出来ず、痛みを感じやすくさせる素地を作ることになってしまいます。
このように脳内を落ち着かせてくれるセロトニンについてもマグネシウムが重要な役割を果たしていたのです。
ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネシウムの排泄量が増えています。
これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌されるときにマグネシウムが消耗されたためです。
強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ益々ストレス状態が悪化するという悪循環におちいります。
また、マグネシウムは神経の興奮などをつかさどる細胞と深いかかわりがあり、細胞内でマグネシウムとカルシウムのバランスが保たれていれば精神的にも安定します。
人間はストレスを感じると副腎からアドレナリンを分泌します。
この抗ストレスホルモンの作用により血糖値が上昇してエネルギーを増やすことで、ストレスへの体制を整えようとします。
ビタミンCはこのアドレナリンの生成時において補酵素として必要となります。
アドレナリンの分泌量が増えるほどビタミンCの消費量も増加します。
したがってストレスにはビタミンCをしっかりととることが大事です。
頭痛発作時は・・
精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになります。
本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたりする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考えられます。
通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されます。
しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となります。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を
高めるだけの結果となってしまうのです。
その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから開放された時に片頭痛を発症しやすくなるのです。
先日述べた植物油(リノール酸)の摂りすぎやトランス脂肪酸を摂ると、体内での脂質代謝が遅延することになりますので、血液中の遊離脂肪酸濃度をいつも高い状態にしてしまうことになります。
このように、血液中の遊離脂肪酸濃度が常に高い状態であれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても血小板の凝集や活性酸素の発生が起こり易くなると考えられます。
「体の歪み(ストレートネック)の関与」
肩こりや首こりとは、簡単に言えば”体を動かさずにいることによって起こる筋肉疲労です。筋肉疲労というのは、運動をすることで起こるものと思われがちですが、動かない姿勢をずっと続けていることによっても、かえって特定の筋肉を疲労させてしまいます。
なかでも、肩こりや首こりを招くのは、長時間座りっぱなしの姿勢を続けているとき、何時間もパソコンに向き合っていたり、休まずに車の運転をし続けたりしている場合です。そういうとき、肩や首の筋肉はずっと収縮したまま緊張し続けています。その緊張状態の持続が筋肉疲労を招き、”こり”を起こす原因になるのです。
肩や首の筋肉が緊張して疲労すると、筋肉の中を走る血管が圧迫され、その部分の血行が妨げられます。そして、血行が悪くなると、当然、その部分への酸素や栄養の供給が不十分になってきます。
本来、筋肉は酸素を使ってブドウ糖を燃焼させて、必要なエネルギーをつくり出しています。ところが、血行が悪く、酸素が十分に行き渡っていないと、ブドウ糖が不完全燃焼を起こし、乳酸などの老廃物質に変わってしまいます。この老廃物質が筋肉や神経を刺激して”こり”や”痛み”として知覚されます。
さらに、そのままじっと動かさずにいると、血行はますます滞り、筋肉内に老廃物質がどんどん貯まっていってしまいます。血流が促されるのは、周囲の筋肉が収縮・弛緩を繰り返すときですから、その筋肉運動がない限り、”こり”は次々に発生していくばかりです。それに、”こり”や”痛み”の情報が脳に達すると、その情報がフィードバックされて、患部の筋肉や血管の緊張をいっそう高めてしまいます。すると、それによって、また多くの老廃物質が生産され、”こり”がひどくなっていってしまうのです。
つまり、肩や首のこりや痛みを放っておくと、いずれ、”こり”が”こり”を呼ぶという悪循環サイクルができてしまうことになります。そして、その悪循環が日々重ねられていくうちに、肩や首の筋肉がガチガチに固まり、より重度の症状へ繋がっていってしまうわけです。体の歪み(ストレートネック)を形成してくることになります。
このようにして、「乳酸などの老廃物質」が蓄積されることになります。
乳酸はセロトニンの合成を抑制し、セロトニンの再回収を促進します。
神経伝達物質としてのセロトニンが少なくなってしまいます。
乳酸が蓄積して起きる”肩こり”などもセロトニン不足の原因になるということです。
このセロトニン神経は疲労物質である乳酸によって抑制される、という性質があります。すなわち、心身が疲労して、乳酸が身体と脳に蓄積してくると、セロトニン神経の働きが抑えられてしまうのです。
最も深刻な場合には、なにもかもやる気がなくなってしまって、いわゆるスランプ状態に陥ってしまいます。
乳酸は、例えセロトニン神経の活動自身が落ちていなくとも、標的細胞への作用を減弱させます。それが、不安のノルアドレナリン神経に影響すると、不安をコントロールできなくし、パニック発作を誘発することがあります。
「その他の要因」
市販の鎮痛薬やトリプタン製剤および予防薬の乱用は全て、人間の体にとっては異物です。そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で、活性酸素が発生してしまうのです。このため、過剰に服用した鎮痛薬は異物そのものであり、これを解毒するために過剰に活性酸素が発生することによってミトコンドリアを弱らせることによって、結果的に「セロトニン神経」の働きまで悪くすることになります。このために「脳内セロトニン」の低下をもたらすことになります。
こうした鎮痛薬、エルゴタミン製剤、トリプタン製剤の飲み過ぎは、当然、化学的ストレスになって来ます。そして、「脳内セロトニン」の低下をもたらすことになります。
以上のように、ストレスにより「マグネシウム欠乏」を来して「ミトコンドリアの機能をさらに悪く」させ、「脳内セロトニンの低下」を引き起こし、前屈みを強制される作業環境は”身体的ストレス”となり、乳酸が蓄積することによって「脳内セロトニンを低下」させ、薬剤の乱用は”化学的ストレス”になり、「ミトコンドリアの機能をさらに悪く」させ、「脳内セロトニンの低下」を引き起こすことになります。
このように、3つの要因が、密接に関与しあって、ストレスにより「慢性頭痛、片頭痛」が増悪してくることになります。