頸性神経筋症候群とは・・首こり病 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 今回は、東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸性神経筋症候群」について、ご紹介致します。これは、慢性頭痛そのものを考える際と片頭痛との関連を考える場合極めて重要と考えるからです。以下の点から述べていきます。


  ★頚性神経筋症候群―副交感神経の圧迫―
  ★頚性神経筋症候群の診断基準-医療現場の問診表―
  ★首の筋肉に負担をかけていると、頚性神経筋症候群になります。
  ★うつむき族 ―急増している子どもたちの「ゲーム首」―
  ★首はLサイズのスイカを支えている


頚性神経筋症候群―副交感神経の圧迫―


副交感神経の圧迫が病気を招く


 首の筋肉の異常によって副交感神経が圧迫され、この病気が起こると考えられています。

 首には大切な自律神経が密集しています。自律神経は私たちの意識しないところで、身体を健康に保ってくれています。体温や血圧の調整、呼吸、消化、代謝などをコントロールし、生命を維持していくためにはなくてはならない役目を果たしています。首になんらかの異常が起きれば、自律神経のバランスに、きわめて重大な悪影響がおよびます。

 自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の二つがあります。交感神経は緊張しているときや危険を感じたとき、興奮しているときなどに働く神経で、心拍数や血圧を上げ、呼吸数を増やし、血管を収縮し、瞳孔を開き、胃腸の働きは抑制されます。副交感神経はリラックスしているときや、寝ているときなどに働く神経で、心拍数や血圧を下げ、呼吸数を減らし、血管を拡張、瞳孔を閉じ、胃腸の働きは活発になります。

 二つの神経は、まるでアクセルとブレーキのように相反する働きをするのです。私たちの健康を支えているのは、この交感神経と副交感神経がバランスよく働いてくれているからです。

 しかし、どちらかひとつの調子が悪いと、文字どおり身体のバランスが崩されます。

 一般的には、首に異常が起きると交感神経が過度に興奮すると考えられています。未だはっきりとその因果関係が証明されていませんが、多くの臨床経験から、副交感神経が失調し、結果、交感神経が優位になるのだと考えています。

 交感神経が副交感神経よりも強くなることが頚性神経筋症候群の原因なのです。
 
 自律神経が分布している首の筋肉のコリを解消するとつらい症状から解放されます。


首の筋肉に負担をかけていると、頸性神経筋症候群になります。

 パソコンはいまやどんな仕事をするにしても、欠かすことのできないツールとなりましたし、ビジネスシーン以外でも、インターネットを楽しむ人は、この数年で男女問わず急激に増加しました。
 しかし、長時間・長期間にわたって、同じ姿勢でパソコンを使い続けていると、首の筋肉への負担が蓄積されていきます。実際、頚性神経筋症候群の患者さんには、プログラマーやシステムエンジニアなど、IT関係の職業の方が、かなり多く見受けられます。長い人は、1日に15~16時間もパソコンに向かっているといいます。ついつい何時間もパソコンの前に座ってしまうという主婦の方などもいます。

 「テクノ不安症」というシンドロームも、いま注目を集めています。パソコンの苦手な人、おもに中高年の男性が、扱い慣れないながらも無理をして仕事でパソコンを使っているうちに、精神的ストレスで体調を崩すというのです。その症状は、頭痛、動悸、息切れ、めまい、肩こり――。

 これは頚性神経筋症候群の症状とまさに合致しています。「テクノ不安症」は精神的なストレスが原因とされていますが、本当は、慣れない姿勢でパソコンを使い続けた結果、首の筋肉に負担をかけてしまったことが原因なのではないでしょうか?
 
 「夕方になると体調が悪くなる」という声も、たくさんの患者さんから聞きます。これは、「長時間、つねに同じ姿勢で作業をしている人」の大きな特徴です。一日が終わりに近づくころ、その日の疲れが身体にあらわれるのです。ひどい肩こりや疲労感から始まり、脈が速くなったり、気が遠くなったり、なかには「吐きそうになる」という患者さんもおられ、症状はさまざまです。
 
 頸性神経筋症候群は、「パソコン病」と言ってもいい病気です。その意味では、この病気はある種の「現代病」です。

 パソコンを使うならノートパソコンではなく、デスクトップパソコンを使うようにしてください。ノートパソコンはモニターが低い位置にありますから、デスクトップパソコンに比べて、より、うつむいた状態になります。あの姿勢で何時間も仕事やインターネットをすれば、首に大きな負担をかけることは火を見るより明らかです。デスクトップパソコンならいいというわけでは決してありませんが、せめて、ノートパソコンは控えてください。

 もう一点は、10~15分に一度30秒程度でいいですから、必ず首を休めることです。


うつむき族 ―急増している子どもたちの「ゲーム首」―


「長時間、つねに同じ姿勢で作業をしている」という意味では、テレビゲームも同様です。「パソコン病」と同じくらい、テレビゲームは首に大きな負担をかけています。

 テレビゲームがなかった昔の子どもたちは、空き地や公園や川べりで、のびのびと遊んでいました。首の筋肉を鍛えることが出来るチャンスが多かったため、その発育もよかったのです。

 いまの子どもたちは家の中で、ゲームで遊んでいることが多いのではないでしょうか?ゲームをしているお子さんの姿をよく観察してみると、首をすくめるように緊張させ、夢中になって画面とにらめっこしているでしょう。首にとってこれほど悪い姿勢はありません。首の筋肉に負担をかけるうえに、その発育まで悪くなってしまい、病的な状態になってしまうのです。

 いま流行している携帯型ゲーム機は、さらに問題です。巷ではメーカーの生産が追いつかないほどの人気だそうですが、あれはどうしてもうつむく姿勢になるため、余計に首への負担がかかります。うつむいたとき、首の後ろの筋肉は、頭部を支えるために収縮・緊張します。

 うつむいた姿勢は、まっすぐな状態よりも、通常の三倍、首に負担がかかると覚えておいてください。

 ちなみに、これは携帯電話にも同じことが言えます。駅のホームなどを見渡していると、携帯メールを打っていたり、携帯でゲームをしたりしている人のあまりの多さに驚きを感じることがあります。ある程度の時間でやめておいたほうが賢明です。

 ゲームの話に戻りますが、ひと時、「ゲーム脳」という言葉が話題になりました。テレビゲームのやりすぎは脳の前頭前野の機能を低下させ、結果、「無気力」、「すぐにキレる」、「記憶力の欠如」などの症状を生み、しいては凶悪な少年犯罪や「引きこもり」にもつながるという説です。

 しかし、それらの症状は、本当に「前頭前野の機能が低下」したために起こったことなのでしょうか。

 じつは、「無気力」、「すぐにキレる」、「記憶力の欠如」といった症状は、実際に頚性神経筋症候群の患者さんがよく訴える典型的な例なのです。他にも、「注意力散漫」、「集中力がない」といった症状も特徴です。さらに重症になると、学校に行けなくなり、部屋に引きこもりがちになり、もの覚えが悪くなります。その様子をたとえて、「まるで認知症になってしまったみたい」とおっしゃるご家族の方もいました。

 そうしたゲーム好きの若い患者さんを診察していると、ほぼ間違いなく、首に異常が見られます。これまでの臨床経験から考えると、やはり原因は「脳」ではなく、「首」にあるのではないかと考えられます。

 私は、「ゲーム脳」ではなく、「ゲーム首」という言葉を提唱していきたいと思います。


首はLサイズのスイカを支えている


 いまの子どもや若い人たちは、首の筋肉が弱くなりました。

 文部科学省の「体力・運動能力調査報告書」(平成17年度)によれば、11歳の「基礎的運動能力」(50メートル走と、ソフトボール投げ)を20年前と比較すると、50メートル走は約0.2秒、ソフトボール投げにいたっては約4メートルも低下しています。「体格」(身長と体重)は、年々上昇しているにもかかわらず、です。

 つまり、見た目の体格こそ良くなったものの、その実、筋力は低下しているのです。もちろん、それは首の筋肉にも言えます。若い人の首を診察していて、その発育の悪さに驚くことがしばしばあります。人間の頭部は、およそ6キログラムの重さがあります。6キログラムと言ってもなかなかピンとこないかもしれませんが、「Lサイズのスイカと同じくらいの重さ」と言えばイメージが湧くでしょうか。普段の生活では意識もしないと思いますが、私たちの首は、つねに、「Lサイズのスイカ」を支えているのです。当然、筋肉が未発達な首では、支えきることはできません。

 そこに、幼少時からのテレビゲームや、いわゆる「お受験」のために塾通いなど、首を酷使する状況が加わるわけです。いまの子どもや若い人たちの首は、まさにパンク寸前です。

 先ほどから述べているように、頚性神経筋症候群は、決して大人だけの病気ではありません。若い患者さんも、ずいぶん私の病院の門を叩いています。この病気は、年齢はまったく関係ないのです。

 「首の筋肉のコリ」などというと、大人がかかる病気だと思われがちですから、ここで念を押しておきたいと思います。

 だからといって、首の筋肉が弱いのは若者だけにかぎりません。とくに女性です。女性の首の筋肉が弱いため、男性よりもこの病気にかかる確率が高くなります。実際、患者さんのの首を診ていると長くて細い首、いわゆる「キリン首」といわれる首の持ち主が非常に多いことに気づきます。まるでファッションモデルのような細い長い首は、たしかにスマートで見た目はよいかもしれません。しかし、その代償に、病気の温床にもなりうるのです。

 思えば昔の日本人は、短くて太い首、いわゆる「猪首」の人が多かったような気がします。見た目はともかくとして、猪首のほうが頭部をしっかりと支えることができ、重心を安定するため、首の健康にはよいのです。「キリンよりもイノシシ」と覚えておいてください。
 同時に「なで肩」の人も注意が必要です。なで肩は、「僧帽筋を中心とした頚筋の発育不良」の証拠と考えてください。

 僧帽筋は、首の筋肉のなかでも、もっとも重要なもののひとつです。これを中心とした筋群の発育が悪いと、頭や腕を支えきれず、人よりも首に異常を起こしやすいのです。なで肩も女性に多く診られます。

 頭の重さは男女それほど差がないのに、首の筋肉の発育は圧倒的に男性が優位です。しかも、肩の筋肉も発達していて、首を横からレントゲンで撮ってみると、7つある頚椎の5番か6番までしか肩に隠れて見えない人が多いのに対し、女性では頚椎はもちろん、胸椎の2番、3番まで見える人が多いのです。首、肩の筋肉の発達は、男女差が著しく、発達の悪い筋肉で同じ重さの頭を支えていると、トラブルがおきやすいのは自明の理です。「

 血の道」など、昔から女性特有の病気のようにいわれてきた自律神経失調症が、必ずしもホルモンが原因とはいえなくなってきました。
 
CNMS -診断の目安


 治療に使われている実際の問診表を掲載いたしました。


あなたは、この中でいくつ該当しますか?


1 頭が痛い、頭が重い。  □はい □いいえ
2 頸(くび)が痛い、頚が張る。  □はい □いいえ
3 肩がこる。  □はい □いいえ
4 風邪をひきやすい。  □はい □いいえ
5 ふらっとする。メマイがある。  □はい □いいえ
6 歩いていたり、立っている時なんとなく不安定。 □はい □いいえ
7 吐き気がある。  □はい □いいえ
8 夜、寝つきが悪い。目覚めることが多い。  □はい □いいえ
9 血圧が不安定である。  □はい □いいえ
10 暖かいところに長い時間おれない。体温調節異常 □はい □いいえ
11 汗が出やすい。  □はい □いいえ
12 静かにしているのに心臓がどきどきする。  □はい □いいえ
13 目が見えにくい。像がぼやける。  □はい □いいえ
14 目が疲れやすい。または痛い。  □はい □いいえ
15 まぶしい。または目を開けていられない。  □はい □いいえ
16 目が乾燥する。または涙が出すぎる。  □はい □いいえ
17 つばが出やすい。または、つばがでない。  □はい □いいえ
18 微熱が出る。(37℃台、時に38℃台も)   □はい □いいえ
19 下痢をしやすい。(腹痛など胃腸症状)   □はい □いいえ
20 すぐ横になりたくなる。  □はい □いいえ
21 疲れやすい。(全身倦怠)   □はい □いいえ
22 何もする気が起きない。意欲がない。  □はい □いいえ
23 天気の悪い日か、その前日、調子が悪い。  □はい □いいえ
24 気分が落ち込む。気が滅入りそうだ。  □はい □いいえ
25 集中力が低下して、1つのことに集中できない。 □はい □いいえ
26 わけもなく不安だ。  □はい □いいえ
27 イライラして焦燥感がある。  □はい □いいえ
28 根気がなく、仕事や勉強を続けられない。  □はい □いいえ
29 頭がのぼせる。手足が冷たい。しびれる。  □はい □いいえ
30 胸部が痛い。胸部圧迫感がある。胸がしびれる。 □はい □いいえ


原因不明の不調の原因はストレスではなく、「首こり」でした

 パソコンを長時間集中して使用している方や、携帯電話でメール、一日中ゲームをしている方の中には、頭痛やめまい、吐き気、絶えず疲労感を感じている方もいるでしょう。家庭の中で、誰も気付いてくれない慢性的な苦しみや痛みで日々悩む主婦の方も多いと思われます。このような、原因不明の体調不良は「不定愁訴(ふていしゅうそ)」といわれ、その多くは自律神経失調の症状です。一般的にはストレスが原因とされていますが、本当の原因は「首こり」です。首の筋肉の異常は、頸椎の中心にある副交感神経の異常を招きます。副交感神経は、内臓や血管、呼吸器などをコントロールする、もっとも重要な神経のひとつです。そのため、「首こり」が体の不調をもたらしてしまうのです。「うつむき姿勢」になってしまう機会が多い現代人の生活習慣病ともいるのが、まさにこの「首こり病」なのです。

緊張型頭痛、めまい、自律神経失調症、うつ、パニック障害、ムチウチ、更年期障害、慢性疲労症候群、ドライアイ、多汗症、不眠症、機能性胃腸症、過敏性腸症候群、機能性食道嚥下障害、血圧不安定症、VDT症候群、ドライマウス

不定愁訴を根本から治す治療法は、「首こり」だけです

 不定愁訴は、耳鼻科、眼科、消化器内科などさまざまな診療科目の症状が出るのが特徴。各専門医の元を訪れても、病院の検査では、異常が見つからない。結局は痛み止めなど、“その場しのぎ”の治療をされているのが現状です。薬をやめればすぐに再発する、症状は一向に改善されません。なぜならば、副交感神経の異常をもたらす「首こり」の治療が行われていないからです。首こりが原因と診断されないまま的外れな治療を続けると、症状はさらに悪化し、最終的にはうつ状態になってしまいます。 これは、首こりが原因で起こるうつで、精神うつと区別するために、「頚筋性うつ」と呼ばれています。今や頚筋性うつ性を疑ってみてください。


「頸性神経筋症候群(首こり病)」の代表的なもの


頭痛 (緊張型頭痛と一部の片頭痛)


 仕事中や疲れがたまってきたときなどに、頭痛がして不快な思いをしている人も多いと思います。日本人で頭痛に悩んでいる人は、3000万人と言われています。4人に1人以上は何らかの頭痛を持っているということですから、これは大変な数字です。
 頭痛にも種類がありますが、その7割が緊張型頭痛、約3割が片頭痛です。
 つまり、2000万人以上は、緊張型頭痛に苦しめられているということになります。これほど広く症状がみとめられている緊張型頭痛ですが、なかなか治らず、しかも「原因がわからない」と言われ、内科や精神科、脳神経外科などで処方された薬をただのみ続けているだけの人や、あちこちの病院を転々とする人は珍しくありません。
 中には、頻繁に起こる頭痛で気が滅入り、うつ症状に陥ってしまう人もいます。首が曲がらないほど頭が痛くなる人もいます。整形外科などで診察を受けても「異常なし」と診断されるのに、です。
 このように緊張型頭痛は、放っておくと心身にさらなる悪影響を及ぼしかねないやっかいな症状です。ほかの診療科ではなすすべがないとされてきましたが、その原因は首こりにあります。後頭部から首にかけての筋肉がこって固まってしまうことで、そこを通っている大後頭神経が圧迫され、痛みのほか、さまざまな自律神経症状が現れてきてしまうのです。
 片頭痛の方も、緊張型頭痛と同様の起こり方をします。とくに頸椎レントゲン検査でストレートネックを示される方です。同じように首こりが原因になっていますので、ここを解決しない限り、片頭痛はよくなりません。


めまい
 
 めまいは、内耳機能の異常で起こるとされていることが多いので、患者さんは耳鼻科で診断を受けることがよくあります。しかし、そこではメニエール病(または症候群)などと診断され、結局、薬を処方されたり、点滴治療を受けたりするだけで終わってしまうことが大半です。中には、「ストレスのせい」「内耳機能の低下かもしれない」「低血圧と関係があるかもしれない」などと、非常にあいまいな診断でお茶を濁されてしまうことも少なくありません。
 しかし、めまいの多くは、首こりの治療によって完治することが明らかになっています。 中には本当にメニエール病などが原因でめまいを感じている人もいますが、実は患者さんのうちでもごくわずかです。仕事が続けられないような深刻なめまいは、少なくとも「メニエール病」のような病気ではありません。これは、医師が「メニエール病」と診断さえすれば、患者さんが、納得し、あきらめてくれるのではないかとの願望に基づいた診断にすぎません。決して、信用してはならない点です。
 歩いたり立っているときになんとなく不安定で、雲の上を歩いているようなフワフワ感がある、天井がグルグルと回っているように感じる、横になっているときに、地中に引きずり込まれるように感じるなどの症状がある場合、頸性めまいの可能性があります。
 これまで医療機関で「メニエール症候群」と診断され、一向に改善されない方は(本当にメニエール病であれば、”発作時”には異常な眼振が出現しているはずです。これまで私が、他の医療機関で”メニエール症候群”と言われた方々は、誰一人として眼振が確認された方はおりません。現実に”メニエール症候群”という病気そのものは存在せず、このような診断をする医師は、まず信用できません。そのつもりで対処すべきです)、自分のめまいが首こりから来る頸性めまいかどうかを判別するには、先程掲載しました「問診表」が非常に役に立ちます。めまい以外の症状がたくさん出ていれば、頸性めまいと言えます。


自律神経失調症


現在、日本の外来患者の4分の3は不定愁訴で来院すると言われており、その原因として名前の挙がることが多いのが、この「自律神経失調症」です。
 しかし、そのように診断をした病院のほとんどは、「なぜ自律神経が失調するのか」「完治する方法は何か」について、満足な回答を持っていないのではないでしょうか。
 自律神経失調症によって起こるさまざまな身体の異常は、頭痛、耳鳴り、口の渇き、喉の圧迫感、動悸、めまい、立ちくらみ、息苦しさ、手足の冷え・しびれ、多汗、皮膚のかゆみ・乾燥、頻尿、関節の痛み、倦怠感、微熱、不安感などなど、挙げればきりがありません。
 こうした身体の調子を司っているのが自律神経なので、それがおかしいというところまでは対症療法の発想でも行き着くわけですが、異常のある部位ごとに治療するわけにもいかず、医師も内心、途方に暮れてしまうわけです。
 しかし、このように「自律神経の異常でさまざまな不調が発生する」というパターンは、まさに首こりがもたらす最も典型的な例です。病院の治療では、やはり多くは内服薬を処方されるだけで終わってしまうことが多いと思いますが、首こりを和らげる治療を続けると、徐々に身体の不調は薄れていき、やがて完治します。


パニック障害


 急に怒濤のような不安感に包まれて、我を失いそうになるパニック障害。その原因は、急に起こるめまいや動悸、呼吸困難にあるとされています。そのような症状が強く起こると、立っていられないくらい頭がくらくらしたり、恐怖心や不安感でいっぱいになってしまうのです。品対の異常が心にまで影響を及ぼし、「パニック」を引き起こしてしまう訳です。頻発すると、「次はいつこの発作に襲われるのだろう」という不安感が日常を支配し始め、いつも気分がすぐれず、おびえたり恐れたりしているような気持ちになってしまい、やがてうつ状態にも陥ってしまいます。
 このようなパニック障害とは、元をたどれば、自律神経の異常から来る急激な体調不良(発作)に由来することがほとんどです。そして、その自律神経の異常が首こりから起こっているケースは、多々あります。
 首の筋肉のこりを徐々にほぐしていくと、次第に発作的な身体の異常は起こらなくなっていきます。精神的にも落ち着いていき、やがてパニック障害と決別することができるのです。


新型うつ(頸性うつ)


 処方された薬を飲んでいるのに治らない。最近、そんな新しいうつ症状に悩む人が増えています。
 これは、従来のうつ病とはまったく発症のメカニズムが異なる別の病気である「新型うつ」だからにほかなりません。これまでの治療方法が通用しないうつが、近年、増えてきているのです。
 その原因がどこにあるかといえば、実は首こりです。新型うつは、頸性神経筋症候群の一環として起こるうつ、つまり「頸性うつ」なのです。
 首こりが重なると、疲労感やふらつき、頭痛などのさまざまな体調不良(不定愁訴)が現れます。不定愁訴が続くと、何をしても気分が晴れることがなく、どんどん気が滅入ってしまいます。やがて「こんなつらい毎日なら死んだほうがまし」と考え、自殺という悲しい選択をしてしまう人がたくさんいます。「自分はこの世にいないほうがいい」と自己否定をするというよりも、「こんなつらいなら死んだほうがまし」と、不定愁訴による体調不良やそれに起因する精神的な落ち込みから逃れたいという思いで自殺を選ぶことが多いのが、頸性うつの特徴です。
 内科、精神科や心療内科、脳神経外科などあちこち回って八方手を尽くしてもダメだった、という状態で来院するうつの人が、首こりを治療することで完治しています。そういう方は、首こりがひどく、中には石のようにパンパンにこり固まっている人も多いのです。
 しかし、みなさん治療するに従い、表情が明るくなり、不定愁訴も消え、完治するころには、笑顔も多くなり、お腹の底から笑えるようになり「早く仕事に戻りたい」とか「あれもしたい、これもしたい」と大変意欲的になります。
 もちろん、うつの中には、純粋に精神的な原因で発症するものもありますが、これは全体の1割にも上りません。9割以上のうつ病は、頸性うつです。頸性うつは、首こりを治療すれば、完全にサヨナラすることができます。


頸椎ねんざ


 頸椎ねんざとは、交通事故やスポーツの怪我などで、首の筋肉や靱帯、頸椎などをねんざすることです。追突による「ムチウチ」も、この頸椎ねんざの一種です。
 頸椎ねんざは、首の痛みや動きの制限のほか、めまい、吐き気、頭痛や肩こりなど、さまざまな不定愁訴を引き起こします。いろいろな検査を受けても「異常なし」とされるのにこうした症状がなくならない、といったことはよくあります。
 しかし、これも首の筋肉が原因で起こっているケースがほとんどで、頸性神経筋症候群の治療をすれば、まず完治します。
 頸椎ねんざでは、牽引する治療(首を引っ張る治療)を整形外科では行っていますが、これは、異常を発している首の筋肉に新しい外傷を加えることになりますので、絶対にしてはならない治療法です。いまだに、このような治療をされる医療機関が存在しますので注意が必要です。病気を長引かせ、かえって悪化させてしまいます。また、首にカラーを装着するのも、首の筋肉のためには逆に害になり、治療が長引くというのは、世界中で常識とされてきています。
 頸椎ねんざを起こした後、不定愁訴が長引くようでしたら、頸性神経筋症候群をまず疑うのが原則になっています。


更年期障害(難治性・若年性・男性)


 動悸、のぼせ、耳鳴り、眠れない、イライラする・・


 中高年の女性に多いとされるさまざまな身体の異常とそれに伴う情緒不安定は、「更年期障害」と言われています。ホルモンバランスの崩れによって起こるとされ、女性ホルモンを補う治療方法が一般的に行われております。
 また、本来閉経期前後の女性に多いはずの更年期障害が、若い年代に起こる若年性更年期障害、男性にも似たような症状が出る男性更年期障害があると言っているドクターもいます。
 以上のように、40歳代、50歳代以降の女性に不定愁訴があると、ほとんどが更年期障害と診断されるようです。血液検査を行って、女性ホルモンの1つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が著しく減少していることが確認された場合は、薬でエストロゲンを補うホルモン補充療法が有効とされています。この年代の女性で、エストロゲンが減少しているのは当たり前ともいえます。
 ところがホルモン補充療法を行っても症状が改善されない人も少なくないのです。私の知人のベテランの産婦人科医師の経験では、更年期障害と診断された方でも、ホルモン補充療法で治せるのは4割程度だと言っています。残り6割の人の不調は別の原因で生じているそうです。つまり、首の筋肉の異常を疑ってみる必要があるのです。
 もし、婦人科で更年期障害の治療を受けても症状がよくならないときは、首のこりがないかをチェックし、異常があれば首の治療を行うべきです。
 首の筋肉の異常を治療すると、不定愁訴は霧散して、更年期障害といわれていた症状はホルモンの治療なしで完治します。


ドライアイ
 
 ドライアイは、眼科では「パソコンの使いすぎで目が疲れているせいですね」などと診断され、目薬を渡されて「少しパソコンを控えるように」などとアドバイスをもらって帰されることがほとんどだと思います。
 しかし、このような診断とアドバイスに従ってドライアイが完治した人はいないと思います。もし、「目の疲れ」が原因なら、パソコンの使用を控えれば、症状が大きく改善するはずです。自宅ではほとんどパソコンを使わない人なら、週末、テレビを見るのを控えれば、目の疲れも多少回復してドライアイも少しは改善しそうなものです。
 しかし、しつこいドライアイに悩まされている人は、一説によれば800万人とも言われるほどで、とにかく増える一方です。つまり、眼科ではドライアイの根本的な治療は、できないのが現状です。
 このことからも、ドライアイが「画面の見過ぎ」のようなシンプルな原因で起こる症状ではないことは、明らかです。
 では、どうしてドライアイが生じるのでしょうか。
 その理由は、ドライアイの人の瞳にペンライトの光を当ててみると分かります。
 人間の瞳孔は、対光反射といって、まぶしいところでは小さくなり、暗いところでは大きくなる性質があります。これは、人間の意思とは関係なく起こる現象です。
 ドライアイの人の瞳は、この対光反射が非常に鈍いのです。光を当てても、瞳孔が本来よりも少ししか閉じないのが普通で、症状がひどい人の中には、まったく瞳孔が反応しない人もいます。まるで、死人の瞳のように光に無反応なのです。
 ドライアイは目が乾いて不快感が続く、涙が少ないことが原因ですが、これは、首の筋肉がこって硬くなることで自律神経が圧迫され、副交感神経の働きが悪くなるのです。涙腺に働いて涙を出すのは副交感神経です。これが失調して涙が出なくなるのです。
首の筋肉のこりをほぐし、自律神経を圧迫から解放してやれば、自然と身体はバランスを取り戻し、ドライアイも解消されます。


多汗症


 身体を動かしているわけでもないのに汗が多い症状が、多汗症です。
 重症の場合は、一晩に3回も4回も下着を替えないといけないほどの大量の汗をかく人もいます。発汗は交感神経優位、副交感神経劣位で起きてきます。首の筋肉の異常で起こる自律神経失調は、常にこの型です。
 こうした人は、頸性神経筋症候群の治療で症状がぴたりと止まります。


VDT症候群・・前屈みの作業


 目の疲れや肩こり、ドライアイ、めまい、吐き気などの身体の不調と、倦怠感などの精神の不調は、「パソコン作業のしすぎ」に原因を求められ「VDT症候群」と見なされることもあります。「パソコンなどのVDT機器を使うことで生じるストレス」ということで、その原因を「テクノストレス」と呼ぶこともありますが、これもまた原因についての十分な説明とは言えません。
 パソコンを使っているせいで身体に不調を感じていることは確かなのですが、その原因は、目から入ってくるデイスプレイの光などにあるのではありません。また、「不慣れなパソコンを使うストレスで・・」などとストレスの原因が説明される場合もありますが、これも残念ながら、原因の説明としては不十分です。
 パソコン作業で問題なのは、作業中の姿勢が原因で首に負担がかかりすぎ、首こりが起こることです。それによって自律神経が不調に陥っているので、心身にさまざまな不調が現れてくるのです。
 仕事などでパソコンを使う時間が長くなると、不定愁訴が現れるため、因果関係を誤解しがちですが、その根本は首こりです。首こりを治療すれば、不定愁訴はなくなりますし、首こりに注意して、予防しながらパソコンを使うようにすれば、いくら長時間の作業をしても、VDT症候群は現れません。
 VDT症候群には、キーボードやマウスの使いすぎで起こる手首の痛みなども含める場合もありますが、大半の方が不快で深刻に思っているのは不定愁訴です。そして、それは、治療することが可能なのです。
 「あなたはVDT症候群です」と診断されたとしても、現代社会で仕事や生活を続ける限り、パソコン作業から離れて生きていくことはできません。不的確な診断に惑わされず、まず首こりを疑ってみてください。

 ここでは、パソコン作業に関してしか述べていませんが、パソコンを使わない作業で、あなた自身が、毎日「前屈みの姿勢」で作業される点も全く同じことが起きてきます。
 決して、自分は関係ないと考えずに、自分の仕事・生活習慣を振り返ってみて下さい。
 他人事ではないはずです。首こりからさまざまな危険な状態に至らぬように毎日の注意が必要とされると言えます。


そして、東京女子医科大学・神経内科の岩田誠先生は、以下のようにコメントされます


 「片頭痛との関係においては、”頸性神経筋症候群”(ストレートネックが長期間持続したために生じる病態です)という病態が片頭痛患者に生じますと、片頭痛発作の頻度の増加や程度の悪化、トリプタンの効果減弱につながると思っております。従いまして、明らかに片頭痛患者であると思われる方で、”頸性神経筋症候群”がある場合には、片頭痛への治療と同時に”頸性神経筋症候群”に対する積極的な治療を行うようにしています。これにより発作頻度の減少、発作時の症状の軽減、トリプタンの効果の改善が認められる患者が少なくありません。」



 このような指摘は、慢性頭痛と片頭痛の関連を考える場合、極めて示唆的と思われます。

”頸性神経筋症候群”はストレートネックが長期間持続したために生じる病態であることを忘れてはなりません。それは、取りも直さず、「頸性神経筋症候群(首こり病)」の一連の病態”緊張型頭痛、めまい、自律神経失調症、うつ、パニック障害、ムチウチ、更年期障害、慢性疲労症候群、ドライアイ、多汗症、不眠症、機能性胃腸症、過敏性腸症候群、機能性食道嚥下障害、血圧不安定症、VDT症候群、ドライマウス”は、片頭痛の共存症そのものであることを考えるなら、緊張型頭痛と片頭痛は一連の連続したものであると考えるべきです。