これまで、片頭痛の誘発因子として、睡眠不足や睡眠過多(寝過ぎ)が挙げられています。それでは、どのような機序によって誘発因子になっているのでしょうか?
そこで、まず最初に、「睡眠とセロトニン」はどのように関与しているのでしょうか?
まず、神経科学の立場から、どのように考えられているのか、現段階での知見を明らかにしたいと思います。
睡眠の機序 睡眠関連物質としてのセロトニン
人間は夜になると必ず睡くなります。動物も昼行動物は夜間に、夜行動物は昼間に睡眠をとります。
例えば昼夜とも真っ暗にした恒常条件の中に人間や動物をおいた場合でも、約24時間の周期で睡眠・覚醒の交代するリズムが現れます。これは睡眠・覚醒リズムが人間や動物に本来備わった内因性のリズムであることを示しています。
動物に不眠を起こす
ところが、動物を眠らなくする実験がフランスのジュヴェらのグループにより行われました。1967年、彼らはセロトニン合成細胞である中脳の縫線核を電気的に破壊し、睡眠することのできないネコを作ることに成功しました。縫線核を破壊するとその神経終末の豊富な終脳や間脳のセロトニンが減少しますが、その減少量と睡眠(特にノンレム睡眠)の減少量との問に正の相関関係があることが明らかとなりました。
セロトニンが睡眠の発現に必須の物質であることを証明するために、その頃見出されたセロトニンの合成酵素(トリプトファン水酸化酵素)の阻害剤であるパラクロロフェニルアラニンをネコに投与する実験が行われました。この薬物を与えられたネコは、ノンレム睡眠もレム睡眠もなくなる不眠が数日問も続く状態を示しました。
このときパラクロロフェニルアラニンによる終脳や間脳のセロトニンの減少量とノンレム睡眠の抑制の問に有意な相関関係が見出されています。またこの不眠がセロトニンの減少と関係あることは、パラクロロフェニルアラニンによって不眠が最高に達した時点で、セロトニンの前駆物質であるヒドロキシトリプトファンをごく少量、ネコに投与してセロトニン合成のバイパスを作ってやりますと、6~8時問にわたり正常な睡眠が回復することが確かめられました。
すなわち、睡眠は覚醒の持続による疲労の結果生ずるいわば受動的な状態ではなく、脳内の能動的な神経伝達活動によって惹き起こされるものであり、セロトニンはその活動を担う重要な物質であることが推定されました。
強制不眠時のセロトニン
セロトニンが睡眠関連物質であることを支持する所見は、その後多くの研究グループから提出されています。融道男先生もラットを一昼夜強制的に覚醒させたのちに眠らせるという手法で、脳内セロトニン代謝が大きく変動することを確かめました。
ラットは一昼夜睡眠させないでおくと、刺激を止めればすぐに入眠してしまう睡眠欲求の強い状態になります。このとき脳内のセロトニン代謝をみますと、代謝物(5ーヒドロキシインドール酢酸)が増加し、セロトニン自身は低くなるという代謝の亢進を示唆する所見が得られました。そのまま入眠させたラットでは代謝物の増加が続き、セロトニン代謝の亢進がますます明らかとなりました。
一方、脳内セロトニン代謝に深い関連をもつトリプトファンは一昼夜の強制不眠後にすでに顕著な動きを示します。セロトニンの代謝が亢進しはじめる不眠直後から脳内でトリプトファンの蓄積が認められます。脳内セロトニンの生合成は血中から脳内に移行するトリプトファン量によって規制されていますので、脳内トリプトファン量を測定することは意義あることと考えられます。
強制不眠後の脳内トリプトファンは、睡眠がはじまってからも高い値を保ちますが、ラットが覚醒したときには対照動物と同じ値にまで下ります。
以上のような急激に生ずる睡眠に伴うセロトニン代謝の亢進は背側縫線核、視床、海馬、線条体、前頭葉皮質など、ほとんどすべての脳部位で起こることが確かめられています。
トリプトファンからセロトニンヘ
以上のように、セロトニンが睡眠の発現に関連ある神経伝達物質であることは広く認められてきています。そこでセロトニンの前駆物質アミノ酸を睡眠剤として使おうという試みもなされていますが、劇的な効果は得られていません。
ヒトでは、トリプトファンは体内で合成できませんが、このアミノ酸は食物より血中に取りこまれるとその90%以上がアルブミンと結合するという性質をもっています。アルブミンと結合した結合型トリプトファンはそのままでは脳内に移行することができず、アルブミンと離れた遊離型になってはじめて血液脳関門を通過でき、セロトニンニューロンに達し、セロトニンが合成されます。
従って体外から与えたトリプトファンの量が脳内のセロトニン量をそのまま規定しているのではなく、トリプトファンが血中で遊離型に変換する機序や、脳がそれを取りこむ機制が睡眠の発現に関係すると考えることができます。
レム睡眠の機序
ノルアドレナリンの神経細胞(青斑核)の破壊がレム睡眠を抑制するとした実験は、この部位の破壊でレム睡眠の一要素である筋緊張の消失が起こらなくなることを混同したためであると議論されています。ノルアドレナリンがレム睡眠の発現に関与する物質であるとする魅力ある仮説は、現在再検討の段階に入っています。
レム睡眠に関連する神経伝達機構の一つとしてアセチルコリン系ニューロンが候補になっています。
アセチルコリンエステラーゼを阻害して脳内アセチルコリンを増やすとレム睡眠が誘発され、アトロピンがこれに拮抗するなどがその根拠です。
睡眠に関与する神経伝達物質が明らかとなり、どのような機序でノンレム・レム睡眠や覚醒が生起するかが解明されれば、それに基づいて睡眠障害の新しい治療が開発されると思われます。
(国立武蔵療養所神経センター 部長 融道男による)
ご存じの通り、私たちは、約24時間周期の体内時計を持っているわけで、それが狂うことで、睡眠に障害がでるというのが、これまでの考え方でした。
しかし、その体内時計ををつかさどっている脳の中枢が、正常に機能していても、脳の別の部分で神経伝達物質「セロトニン」が不足すると、睡眠と目覚めのリズムが崩れることがラットの実験で分かったというのです。以下、その研究の概要です。
睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる
-睡眠・覚醒のサーカディアンリズム形成機構を神経活動レベルで解明-
「睡眠のリズムが崩れた」とか、「生活リズムが単調で」とか…。日常の会話でも体調に関わるリズムが話題になります。実は、単細胞生物からヒトにいたるまで、24時間周期のリズムが自律的に働いていて、睡眠や覚醒も制御されているのです。これをサーカディアンリズムといいます。ラテン語でサーカは「約」、ディアンは「1日」という意味。それで「約1日のリズム」。そのまんま!分りやすいと思います。
これまでの研究で、脳の奥にある視交叉上核(SCN)が、この24時間周期のリズムの主たる“時計”の役割を担っていることが分かっていました。しかし、SCNからの信号がどこに伝えられ、どのように睡眠・覚醒のリズムを作っているのかについては、よく分かっていませんでした。
2012年10月17日、脳科学総合研究センターの研究者らは、この課題の解明に取り組みました。実験では、神経伝達物質の1つ「セロトニン」を除去する物質をラットに投与し、数週間、脳の各領域の神経活動を解析しました。その結果、睡眠・覚醒のリズムは崩れても、SCNのサーカディアンリズムは保たれ、睡眠と覚醒に伴う神経活動も正常であることを見いだしました。一方で、睡眠・覚醒を実行する前脳基底部・視索前野(BF/POA)という領域の神経活動はサーカディアンリズムを失っていました。この領域のセロトニン受容体を働けなくしたところ、徐波睡眠(ノンレム睡眠)のサーカディアンリズムが消失しました。これらにより、 SCNからの信号は、セロトニンの作用を受けたBF/POA領域に伝えられ、そこで睡眠・覚醒機能と統合して、24時間周期の睡眠・覚醒リズムを作り出していることを発見しました。
こんどは、睡眠の生理学的側面から考えてみましょう。
睡眠をコントロールする人体メカニズム
人の眠りは、二つのメカニズム「サーカディアンリズム」と「ホメオスタシス」によって、コントロールされています。
これらのメカニズムは我々人類が進歩の過程で長い年月を掛けて形作ってきた、環境適応のために我々の遺伝子に刻まれている能力の一つであると言えるのではないでしょうか。
私達現代人の生活様式は多様化し、朝晩逆転の生活や睡眠時間の減少など、ヒト本来の生活リズムから外れた生活をしがちです。
「長い物(遺伝子)には巻かれろ」というわけではありませんが、これらのメカニズムを理解し、それに則した生活を送ることが、快適な睡眠への近道ではないかと思います。
1.体内時計(サーカディアンリズム、概日リズム)
生物が地球の自転・時間の経過(昼と夜)に合わせてに活動(覚醒)と休息(睡眠)を行う機能のことを言います。
地球の自転に合わせほぼ一日の周期でリズムを刻み、人の場合は日中活動し、夜間眠るというリズムを作り出しています。
人の体内時計には、セロトニンという脳内の神経伝達物質と睡眠ホルモンであるメラトニンが深い関係にあります。
ところで、地球の自転は24時間周期ですが、人の体内時計は個人差があるものの、およそ23~25時間周期であると言われており、長短一時間のズレが生じていると言われています。
通常はこの一時間のズレは自然な社会生活を送っていれば無意識のうちに自動調整されるため問題にならないのですが、現代人のような不規則な生活を送り続けると、この無意識の調整ができなくなり、本来の生活周期が崩れてしまい、昼間激しく眠くなったり、明け方に覚醒してしまったり、夜眠れなくなったりしてしまうのです。
一時的にはいわゆる「時差ボケ」がこの状態である言え、常態化し慢性的になると、不眠症や睡眠障害ということになります。
体内時計をコントロールするメラトニンは、通常朝起きてから一定時間経過後(起床後、14~16時間後)に分泌され始めるため、生活リズムを維持するには、眠りに就く時間よりも、朝起きる時間を一定に保つほうが重要であると言われています。
「今日は朝早く起きたため寝不足だから、明日は昼過ぎまで寝ていよう」
というように、一定の生活リズムから外れて、朝起きる時間が遅くなると、その日の夜はメラトニンの分泌時間が遅くなり、寝付きが悪くなるという事に繋がり、生活リズムが崩れてしまう原因となるのです。
体内時計にはだいぶ個人差があるようで、時計の針が狂いやすい人もいれば、そうでない人もいたりしますが、多くの場合、長期に渡り不規則な繰り返すことで顕在化し、慢性的に体内時計が狂った状態(自動調整が出来ない状態)になり、不眠や睡眠障害につながる可能性があります。
このため、生活リズムを一定に保つためには、いつもより睡眠時間が少ない日でも、朝はできるだけ同じ時間に起きるようにするほうが良いと言われています。
具体的には、例えば
「就寝時間が遅くなってしまった日でも、起きる時間はいつもと同じ時間にすること」
「休みの日だからといって昼過ぎまで長寝しないこと」
「少しゆっくり寝たい時でも、平日の起床時間の2時間後くらいまでには起きるようにすること」 と言った形です。
「睡眠不足だ」「疲れが溜まった」と感じると、休みの日は長く寝ていたいと思うかも知れませんが、人体は実によく出来ており、睡眠時間が少なかったとしても、眠りの質を自動的にコントロールしてくれる機能(次の項で紹介)が備わっているため、「週末に寝貯めをしよう」と思っていても、実はその日その日の睡眠で眠りの質がコントロールされていて、脳や体を集中的に休めて、疲れも効果的に取り除いてくれていたりします。
2.睡眠のホメオスタシス(恒常性維持機構)
ホメオスタシスとは、体温を一定に保つ、傷を治す、体内のウィルスを排除するなど、体の状態や性質が一定に保たれる事をいいます。
ホメオスタシスの睡眠への働きとして、人の生体を維持するために、眠りの質を自動的にコントロールする機能があります。ホメオスタシスは、肉体や脳の疲労度に応じて眠りの質をコントロールし、短い睡眠時間でも効率的に体と脳を休ませるように働きます。
ホメオスタシスの機能により、覚醒時間が長かった場合(睡眠不足の場合)、入眠直後に深い眠り(ノンレム睡眠)がより多くなり、それまでの睡眠不足を穴埋めしてくれます。
こうして、人の持つホメオスタシスが睡眠の質を自動的にコントロールして不足分を補ってくれるため、前夜寝不足であったとしても、意識的に長く寝ようとしなくても良くなるのです。
寝貯めは出来ない?
実は、ホメオスタシスの働きを考えてみると、逆説的に、いわゆる「寝貯めは出来ない」という事になるようです。
睡眠のホメオスタシスは、「睡眠前」の身体の活動状態(寝不足、強い疲労など)に基づき発揮され、自動的に睡眠の質をコントロールしてくれます。
睡眠時間がたとえ短くても、深い眠りであるノンレム睡眠が集中的現れるようにしてくれるので、短時間でも睡眠の質は維持されます。
繰り返しになりますが、これはあくまでも「睡眠前」の身体の状態に応じた働きであるため、「起床後」のことが考慮されているわけではなく、例えば「明日は遅くまで起きてなくてはならないから、今日は一杯寝ておこう」という事には効果がないのです。
また、深い眠り(ノンレム睡眠)は入眠直後により多く現れ、その必要量を満たすと、それ以降の睡眠中には深い眠りはほとんど出現しなくなり、逆に浅い眠りが中心になります。
こうして、たとえ長時間寝た(寝貯め?)としても、深い眠りの量は必要以上にはとることが出来ないので、浅く質の悪い眠りが増えるだけで、かえって疲れてしまうわけです。
また、多くの人が経験がしたことがあると思いますが、休みの日などに昼過ぎまで寝ていると、その日の夜、中々寝ることができなくなり、休み明けに辛い思いをすることになりますので、長く眠ることは必ずしも良いことでは無いのです。
睡眠と太陽光
人の眠りと太陽の光は非常に密接な関わりがあります。
地球の自転(昼夜の切り替わり)が24時間周期なのに対し、人の生活リズムをコントロールしている「体内時計」は、人によって毎日一時間程度のズレが生じてしまうのですが、その調整をしているのが太陽光です。
眠りにはリズムがある
脳の中にある体内時計
睡眠には、脳の中の「睡眠中枢」と「覚せい中枢」と呼ばれる箇所が深くかかわっています。この2つの中枢は相互に作用し合っています。
睡眠物質や神経伝達物質と呼ばれる物質が作用して、睡眠時には睡眠中枢が活発になり、反対に覚醒中枢の動きが弱くなります。
睡眠中枢と覚せい中枢の活動のタイミングを決めているのが、脳の視床下部にある「視交差上核」という箇所です。ここがいわゆる体内時計と呼ばれているところです。
体内時計は、それ単独で時を刻んでおり、身体のリズムをつくり出しています。
理想的な眠りのリズム
満足な睡眠、すっきりと目覚めることができる睡眠というのは、必ずしも時間の長さで得られるものではありません。それは、睡眠時の脳波の周期性と深い関係があります。
夢を見ているときというのは、脳は起きていて、体は眠っている状態で、眼球が頻繁に動きます。この状態をレム睡眠と言います。わたしたちは眠りに就くと、徐々に睡眠が深まり、入眠してから40~50分で脳がぐっすり眠った状態になります。そして少しの刺激では起きない状態が20分ほど続きます、この状態をノンレム睡眠と言います。
そこから今度は少しずつ眠りが浅くなって、10~30分のレム睡眠に入ります。これを1サイクルとしてかかる時間は90~120分です。これを、4,5回、繰り返すうちに自然と目覚めるような睡眠が理想的とされています。
夢は昼間の出来事を整理している?!
最近の研究では、夢を見ている間は、昼間あった出来事を脳の中で整理して記憶し直しているとも言われています。
体内時計をリセットする
快眠の秘訣は起床時間にある、とも言われています。これは、体内時計と朝の光が関係しているようです。
体内時計の働きをするものは、脳の視床下部の中にあります。そこでは1日を約25時間で刻んでいることが分かっています。地球時間の1日24時間より1時間長いのです。
それを毎日地球の自転周期である24時間に調節しているのが「同調因子」です。
体内時計は、外界のさまざまな同調因子を手がかりにして、体内時計と外界の時間の関係を調節しています。そのひとつに、「光」があります。カーテンを開けて朝、光を浴びると視神経が刺激されます。すると、そばにある視床下部の目覚めのスイッチが入り始動します。身体のリズムを24時間に調整する上で有効です。このとき、体内時計の1時間のずれもリセットされると考えられています。
同調因子には、光のほか「運動」「食事」「温度」などがあります。
光を意識して生活する
現代のように、時間や時計を意識して生活を送る前、人間は日の出と共に起き活動を始め、そして日が暮れだすと、徐々に夜のモードへと切り替わっていくのが、無理が無く自然なリズムでした。
朝日を浴びることから1日をスタート
午前4時~6時ごろ体内に覚醒ホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌されます。ピークは6時、体に無理なくすっきり目覚めるには、この時間帯がベストとされています。さらに朝日を浴びることで、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンに代わって、セロトニンの分泌がスタートします。セロトニンは、心と体を生き生きさせ、直観力も高めるといわれる脳内物質です。
太陽の光が”スイッチ”になるので、遮光カーテンにしないことをおすすめします。
日中の交感神経が優勢で活動的な生活から、副交感神経が優勢でリラックス的な夜の生活へと移行していきます。と共に、日が沈み薄暗くなってくるとメラトニンの分泌も増えてゆきます。
これが、昔の人は自然に生活スタイルと連動していました。ですが、社会の変化によってそれに対応すべく現代人の生活スタイルも変わってきました。
仕事の関係上、生活スタイルを変えるのは難しいと思います。そんな中でも、日々の過ごし方の中で、『光』 を意識することによって、気持ち良く過ごせるようになると思います。
テレビやパソコンは最低限に
わたしはテレビもパソコンも大好きですが、パソコンは寝る2時間前に終わらせておくのが理想です。寝る前にやるとどうしても脳が興奮し、覚醒作用が起きてしまい、夜に眠れなくなってしまいます。
また、パソコンやテレビは、(パソコンの利用目的にもよりますが)前頭葉が鈍くなる、又は前頭葉を使っていない、と言われています。前頭葉は理性、創造性、意思の決定など重要な働きをする部分です、また本能的な衝動を抑える働きをするのもこの部分で、理性を持つ人間を最も人間らしくしているのが前頭葉とされています。
セロトニンと前頭葉
ですが、気持ちよくリズムのある生活をするには、前頭葉の働きが欠かせません。この前頭葉をきちんと機能させるには、「セロトニン」という物質が大きく関わってきます。セロトニンは別名「神経伝達物質」とも呼ばれていて、人間の精神面で大きな影響を与えていると考えられています。このセロトニンの分泌を促進することで、前頭葉の働きも自然と高まってゆきます。
「セロトニン」の生成は、心の状態に影響を受けるといわれています、というと、ストレスでセロトニンの分泌は抑えられてしまいます。ですが、ストレスは生活の中で気づかないうちに感じているものでもあります、ストレスに強い脳を作ることが大切です。
「セロトニン」の生成に必要なのは、『光』と『運動』と『食事』
運動は…無理をしない程度で行います。お家の中でDVDを見ながらヨガとか、ちょっとしたストレッチでOK!
食事は…セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られます。トリプトファンを多く含む食品として、たんぱく質の多い食材に多く含まれています。というかバランスの良い食事でOK!
そして、手軽に改善できる点でも有効だとされる『光』です。
誰でも神経過敏な時期ってあるかと思います、そんなときは、できるだけ現代人のような生活をしないようにします。休日には土いじりをしたり、テレビやパソコンを控えて、本を読んだりします。
そして、できるだけ「太陽の光」を浴びます。どこかの露天風呂で、全裸で浴びるのが一番気持ち良いですが、お家の中で過ごすときは、午前中は窓際で過ごしたりするなど、ちょっとしたことから取り入れてみましょう。
個人的には、光の強い照明などを利用して覚醒させるよりは、太陽の光の方が好みです。太陽光は、セロトニンはもちろんのことビタミンなどの生成にも役立ちます。
急激な光の刺激は、負担となる場合もあるかと思います。そういった場合は、東側の窓を開けて寝ると、日が昇るころから徐々に部屋に光が射してくるので、目覚めもすっきりします。
寝るときは街頭などの人工的な光は完全にシャットアウトします。ほのかに輝く月明かりで安心して寝れます。
自然を感じ、感覚で動き共に生きることは、人間本来の力を呼び起こしてくれます。
■睡眠障害とセロトニン
精神を安定させるセロトニン!
神経伝達物質「ノルアドレナリン」は、“恐れ・驚き・不快・怒り”などの感情に影響を与えます。外部からのプレッシャー(ストレッサー)がかかると、ノルアドレナリンが過剰に分泌されてストレスになります。セロトニンは、ノルアドレナリンなどの情報をコントロールして精神を安定させる役割を持っています。
セロトニンが不足すると睡眠を妨げる!
質の良い睡眠を演出するのが「メラトニン」です。しかし、ストレスや年齢とともに減っていきます。脳内の中央にある小さな内分泌器「松果体」の中には、他の脳部位の50倍ものセロトニンが存在し、そのセロトニンを原料としてメラトニンを作っているのです。
セロトニン分泌にはリズムがあります!
睡眠中はセロトニン神経の活動は弱くなっていて深い眠りを作り、朝方になると分泌量を増やして覚醒し、スッキリ目が覚めるというリズムがあります。いつまでも寝つけずぐっすり眠れない人は、慢性的にセロトニンが不足しているのが原因です。
要注意!慢性的なセロトニン不足
分泌されたセロトニンは、そのまま無くなるわけではありません。約8割は元の神経に再び取り込まれ、2割が酸素によって捨てられ、なくなります。脳幹にある神経細胞の集団「縫線核(ほうせんかく)」から配給されるのは、いつもわずかな量なので、リサイクルしています。
慢性的なストレスは、セロトニンのリサイクル機能も低下させてしまいます。酸素によって捨てられるセロトニンが増えるのにもかかわらず、縫線核から供給されるセロトニン量はわずかなままです。それが、日常的なストレスなどによって慢性的なセロトニン不足を引き起こします。
それでは、実際の病態的側面として、頭痛と睡眠障害とはどのような関係にあるのでしょうか?北見公一先生は、以下のように述べておられます。
睡眠障害との関係が認められる頭痛としては,早朝の頭痛があります。Ohayonは15歳以上のヨーロッパ人18,980人に電話による聞き取り調査で慢性起床時頭痛(CMH)の頻度と合併する特徴を調べたところ,CMHは全人口の13人に1人の割合で見られ,大うつ病と不眠症の良い警告徴候であったと報告しています。
またPaivaらによれば,夜間あるいは早朝(起床前)に頭痛を長期間に渡って感じている患者は頭痛クリニック患者全体の17%を占め,頭痛クリニックでは他の頭痛患者との違いは分からなかったが,夜間睡眠ポリグラフでは55%の睡眠時頭痛患者に特異的な睡眠障害を証明したとのことです。また睡眠障害の治療後は全ての患者で頭痛は改善するか消失したといいます。すなわち夜間や早朝に起こる頭痛は睡眠障害と関係することが多いといえます。
更にWeintaubによれば,頭痛は睡眠障害の症状としても起こりますが,反対に,慢性頭痛患者には睡眠障害の頻度が増えてきます。頭痛との関係でもっとも重要なREM睡眠は一晩に4-6回起こり,夢と関係の深い睡眠であると言われています。片頭痛の発症はREM睡眠の回数と直接的な関係があるとされ,群発頭痛の場合はこの関係はより顕著です。夜間の片頭痛はREM睡眠中あるいは終了後,または私たちが翌朝すっきりと覚醒してリフレッシュしたと感じるのに必要な3-4度深睡眠(デルタ波睡眠)の時に起きるとされます。脳内の神経伝達物質の変化や生化学系,あるいはホルモンバランスの影響,または多くの複合的な現象が原因であると推測されますが,明らかな機序はまだ不明です。REM睡眠を剥奪すると,頭痛のある無しに係らず異常に精神的高揚が見られたり,集中力や判断力の低下,感情の不安定さが認められるようになります。睡眠時無呼吸症候群では,酸素濃度の低下と一過性高血圧が早朝頭痛の原因と考えられてきました。
睡眠は多すぎても少なすぎても頭痛を悪化させます。睡眠中のセロトニンや他の神経伝達物質の増減が頭痛の発現や悪化に関与するようです。片頭痛の人が週末に寝すぎて頭痛が悪化することはよく知られています。他方,睡眠により頭痛が良くなり,睡眠が頭痛治療になるという人もいます。一部の頭痛患者さんは昼寝で頭痛が楽になる(特に思春期)といいますが,多くの成人患者さんでは昼寝は頭痛の引き金になるとされます。また昼寝を何度もすると夜の良好な睡眠が失われ,早朝頭痛につながるとされます。頭痛患者さんは午後3時過ぎの昼寝を制限し,夜間の睡眠に影響を及ぼさないようにするのが良いようです。寝たり起きたりの時間を一定にする睡眠統制と呼ばれる方法は,頭痛治療にも重要な役割を果たします。
特定のタイプの頭痛は種々の睡眠障害と関連し,治療にも影響を及ぼすとされます。群発頭痛や慢性発作性片側頭痛はREM睡眠の周期と関係することが知られており,夜間の発作はREM睡眠期と一致して起こることが多いようです。また群発頭痛は睡眠時無呼吸をしばしば合併することが知られており,そのような患者さんは夜間の周期的な酸素濃度の低下を来し,それにより群発発作が誘発されることが示唆されています。慢性群発頭痛の患者さんでは,発作の3分の2は睡眠の後半2時間に起こるということが知られています。
1.慢性片頭痛の発症における睡眠障害の関与
北見公一先生は慢性片頭痛の患者さんに,傍脊柱筋(脊柱起立筋,姿勢筋)の筋筋膜痛症候群(Myofascial pain syndrome, MPS)が多く合併することを見出しました。また片頭痛に限らず,頭痛が慢性化する場合に中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)という現象が関係していることが知られています。これは末梢からの痛み情報が時間的・空間的に多く中枢に伝わると,次第に痛みの閾値が低下し,わずかな痛覚情報にも反応する過敏さが出現することを言います。CSになるとわずかな圧迫や熱・冷感を痛みとして感じるようになります。
緊張型頭痛が慢性化する場合のCSの発生についてはBendstenにより以下の説明がなされています。すなわち,頭蓋外の筋肉・筋膜から出る侵害刺激は多くの緊張型頭痛に見られる現象ですが,頭痛は筋緊張とは直接結びつかず,首や肩の筋肉からの侵害刺激情報が出つづけることにより,脊髄を介して三叉神経脊髄路核,さらに三叉神経主知覚核のニューロンが痛覚過敏を来たし,それが頭部・顔面の慢性の痛みへとつながるとされます。筋緊張の原因としては,中枢神経系の可塑的変化(すなわちセロトニンの枯渇など)が末梢の機構にも影響し,筋緊張を持続させたり,筋組織内へのアセチルコリンの放出を増加させたりすると考えられます。そして当初の出来事が治まったあともCSが継続し,結果的に緊張型頭痛を慢性化させるとされます。この機序はむしろ片頭痛の慢性化によく当てはまります。すなわち中枢神経系の可塑的変化というものが,睡眠障害によりもたらさるものであり,それにより傍脊柱筋の慢性緊張(MPS)がもたらされ,CSを来すと考えられるのです。
Peresaらは夜間のホルモン濃度変化などから,慢性片頭痛では視床下部不全を示唆する状態になっていると報告しました。すなわち慢性片頭痛では視床下部がドパミン系の過剰活動の状態になっており,睡眠障害が重要な背景であるかもしれないと結論しています。慢性片頭痛患者はさまざまなタイプの睡眠障害を有するとされ,薬物離脱により頭痛とともに睡眠障害も寛解したという報告もあります。この睡眠障害と片頭痛の慢性化との関係については,REM睡眠の内容変化が関与している可能性があるのです。
正常なREM睡眠期には脊髄以下の運動系が機能しなくなり,眼球運動以外は完全な筋弛緩の状態になりますが,この正常な筋弛緩が得られなくなることによって,睡眠中に身体運動が起こることがあります。周期性四肢運動障害や,夢が行動化したかのような複雑な運動が生じるREM睡眠行動障害という睡眠障害がありますが,REM睡眠時に周期的に手足が動く現象は小児にはよく見られる現象であり,成人でもストレスで歯ぎしりが起こることは知られています。つまり何らかのストレスにより,REM睡眠期に本来筋弛緩が得られるはずの傍脊柱筋に筋緊張が残存するようになることは十分考えられるのです。
以上のことと,多くの患者さんは片頭痛が慢性化するときに強い情動ストレスを伴う自己不全感(例えばまた強い頭痛が起こって倒れるのではないか,生活できなくなるのではないか,という恐怖感など)を体験していることより,可能性としてドパミン系が過剰に活動するために,悪夢のような情動反応を夜間に何度も起こしREM睡眠期に筋弛緩が得られなくなり,傍脊柱筋の慢性緊張が起こっているのではないかと推測されます。
Calhounらは,慢性片頭痛の患者はほとんどが元気を回復するような睡眠をとっていないと報告し,この元気回復が出来ない睡眠障害が慢性片頭痛の発生頻度と病態に関与していると考えています。すなわち慢性片頭痛の女性147人に,朝起きたときリフレッシュしているか,疲れているか,をたずねたところ,83.7%の女性が疲れていると答えたそうです。また彼女らに健康的な睡眠指導を行うと48.6%の慢性片頭痛患者が反復発作性の片頭痛に戻ったと報告しています。
2.慢性頭痛に随伴する睡眠障害の治療
基本的に睡眠障害の改善には,睡眠のメカニズムを知ることが必要です。睡眠に影響を及ぼす要素を減らし,眠りやすい状況にすることが大切です。
睡眠衛生指導:良い睡眠習慣を身に付けてもらうための指導法です。不眠症の治療として役立ちます。またすでに述べたように慢性頭痛の治療の一環としても役立ちます。推奨される方法としては,起床時間を規則正しくする,床の中に長く居すぎない,シフト勤務者以外は午後3時以降の昼寝を避ける,夕方のタバコやカフェイン,アルコールの摂取は避ける,日中早い時間に規則的な運動を心がける,就寝前に心身のリラックスのための工夫をする,眠れなくても時計は見ない,寝る前に空腹であればスナックやぬるめのホットミルクなどは可,などがあります。寝る前のリラックス法としては,呼吸調整,自律訓練法,漸進的筋弛緩法,アロマテラピーその他,自分にあった方法で良いようです。またCalhounは表3のような睡眠指導を行っており,厚生労働省研究班は2005年に睡眠障害対処12の指針を発表しています。
睡眠薬の内服:睡眠薬はバルビタール系,非バルビタール系,ベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系の4種類がありますが,現在多く使用されているのはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。ベンゾジアゼピンω1受容体選択性のあるゾピクロンやゾルピデムなどは依存性が少なく,自然の睡眠パターンを崩しづらいといわれているため,使用しやすいといえます。また睡眠薬に対して良くない先入観念をもつ人も多く,睡眠薬を処方する場合は,患者さんそれぞれの睡眠薬に対する考えを聞いてから処方するようにする必要があります。どうしても睡眠薬を嫌う場合は漢方薬で代用することもあります。
専門的治療:片頭痛に限らず慢性頭痛の患者さんには,睡眠改善が必要です。慢性片頭痛の場合は,すでに述べた機序から考えて筆者は以下の治療法を行っています。すなわち悪夢の原因であるドパミン系の過剰活動を抑える目的でD2拮抗薬を就寝前,傍脊柱筋の筋緊張を抑える薬を就寝前,それと片頭痛予防薬を投与し,大半の患者さんで頭痛の頻度減少が得られました。片頭痛発作にはトリプタン製剤を用います。しかし単なる薬物治療のみならず,睡眠衛生指導,および不安・うつの心理背景を考慮した心理療法を加えることも,より良い睡眠改善を得るためには必要です。その他の睡眠障害の専門治療は睡眠外来を開設している医療施設でご相談下さい。
3.まとめ
睡眠障害のある片頭痛患者さんは,まず睡眠障害の内容について検討することが必要です。頭痛と睡眠障害は切っても切れない関係にあります。特に起床時あるいは早朝に慢性的に頭痛を来す場合には,心理的な要素がかなり関係しており,睡眠の内容とともに心理背景の検討が必要になります。慢性片頭痛の原因としては睡眠障害がかなり重要な部分を占め,睡眠内容を改善させることにより,慢性化を治すことが出来ます。群発頭痛でも睡眠障害の関与がかなりあると思われます。しかし患者さんの方から睡眠障害を訴えるという場合は,精神的ストレスの一種の身体表現とも考えられ,訴えの背景に潜む,睡眠障害にまつわる感情を伴った記憶について検討する必要があります。
それでは、片頭痛の場合、どうして誘発因子になっているのでしょうか?
現在、以下のように説明されているようです。
セロトニンが不足すると、脳の生物時計が正常でも睡眠・覚醒のリズムが乱れるとされています。
睡眠時間が短いと、深い睡眠(深睡眠といいます)や REM睡眠が不十分になります。
これらの睡眠が不足すると、脳内にセロトニンが十分に補給されなくなります。
慢性の睡眠不足は、セロトニンの代謝(減少させること)を促進させ、脳が慢性的なセロトニン不足になるのです。
そして、慢性的なセロトニン不足になると、 血管を収縮させる効果が薄れ、結果として脳内の血管が拡張してしまいます。
その結果、片頭痛が起こるとされています。
睡眠不足による片頭痛は、悪循環を呼びます。
片頭痛は多くの場合、睡眠障害を起こすからです。
頭が痛いから寝られない⇒睡眠不足になる⇒片頭痛が悪化する
といったように負のスパイラルに陥ります。
まずは、日常的な睡眠不足を解消することが片頭痛を改善することの第一歩といえます。
ところが、睡眠の取り過ぎ、寝すぎでも 片頭痛は起こります。
休日などに、お昼寝を何時間もすると、 起きた時に頭がガンガンする、といった経験はないでしょうか。
経験がある、という方が多いと思います。
それでは、なぜ寝すぎると片頭痛が起きるのでしょうか?
寝すぎると、まず緊張から解き放たれます。
日々の緊張が、過度にリラックスした状態になるのです。
そうすると、セロトニンが大量に分泌されます。
そして、覚醒に近づくにつれ、その量は減少します。
その結果、脳内の血管に、収縮⇒拡張といった変化が起きます。
最終的に血管の拡張により、周囲の神経が圧迫され片頭痛が生じるのです。
また、寝すぎることは、片頭痛だけでなく緊張型頭痛の原因にもなります。
長時間同じような姿勢でいますので、血行が悪くなり、身体がこってしまうのです。
その結果、片頭痛とは別に緊張型頭痛も起きると いった事態になります。
寝すぎによる片頭痛にならないためには、休日も平日と同じような睡眠時間にし、 昼寝もあまり長時間取らないようにすることが 必要なようです。
このように、セロトニンとの関連から説明されているようです。