片頭痛によって脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じるアロディニア(異痛症)が、トリプタン治療効果との関連で注目されています。
片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。
日本では片頭痛の患者さんの60~80%ぐらいが、アロディニアを伴うといわれていますが、発症5年以上たたないと、アロディニアは出てこないことが多いようです。
頭部アロディニア
顔に風が当たると痛い
髪の毛がピリピリする
髪の毛を結んでいるのが辛い
ブラシやくしが痛くて使えない
眼鏡、イヤリングが不快
痛い側が枕に当たると寝ていられない
頭蓋外アロディニア
手足のしびれ感
ピリピリ感
腕時計が不快
ベルトがきつい
布団や毛布が体に触れると不快
顔の知覚を脳に伝える三叉神経が片頭痛によって刺激されると、顔や頭皮など頭部の末梢が過敏に知覚して頭部アロディニアが起こります。この末梢感作を通過して、片頭痛の情報が視床(中枢神経)に到達すると、感覚神経の痛覚需要の領域が拡大し、頭痛側と反対側の上肢を中心とした違和感が生じてきます。これが頭蓋外アロディニアです。
片頭痛患者の約7割に認められるというアロディニアですが、アロディニアが形成されると、トリプタン製剤は効きにくくなると言われています。
Bursteinによる報告では、アロディニアの有無でトリプタン服薬2時間後の頭痛消失率を比べたところ、アロディニアがない患者では93%と極めて高い頭痛消失率が認められました。一方で、アロディニアのある患者の頭痛消失率は15%であり、顕著な差が認められました。
片頭痛発症20分以内にはアロディニアの出現はないとされているため、アロディニア発現前の早期の段階でトリプタン製剤を服用することが勧められます。アロディニアがある患者においては、服薬タイミングの指導の徹底が重要であると従来より言われています。
このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑制する事が出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということを意味しています。
臨床的には中枢性感作が成立したことを示す徴候として重視されています。片頭痛患者の50~80%にアロディニア症が認められると報告されています。また、頭頸部にアロディニア症が認められる場合は三叉神経脊髄路核レベルで、上肢などの頭頸部以外の部位でアロディニア症が観察された場合は視床レベルでそれぞれ感作が成立したと考えられています。これまで片頭痛患者のアロディニア症発生に関連する因子が検討されたり、慢性片頭痛ではアロディニア症の程度が強いといったデータは既に報告されており、アロディニア症が片頭痛の病態にとって重要な徴候であることは多くの研究結果によって支持されています。結局のところ片頭痛慢性化の重要な予知因子と考えられ、「セロトニン神経系の働きの悪さ」が示唆され、この面での対策が重要になってきます。
本年7月20日に行われた「Headache Master School Japan (HMSJ) -Osaka」のなかで
柴田護(慶應義塾大学 神経内科)先生が「片頭痛のanatomy」を講演され、アロデイニアの発生機序を解剖学的に提示され、まさしく「セロトニン神経系」の解剖そのものであることを明らかにされました。ただ、残念ながら、ここでお示しすることは学会事務局から禁止されており、残念な限りです。こうした事実を先日の「片頭痛の生活習慣の改善」のなかに採り入れることができなかったために、敢えてここに掲載することにしました。
こうした点は、片頭痛そのものと「セロトニン神経系」の関与を証明しているものと言えます。