見えなければ何をやってもいいのか

サッカーにせよ、バスケットボールにせよ、審判に取られなかった反則は反則とならない。

小学校の頃、ブラジルサッカーに、マリーシアというものがあることを知った。

当時はキャプテン翼が流行っていた頃で、Ｊリーグはまだなかった。

マリーシアとは、本来ファールである行為を審判にわからぬようにやったり、相手のファールを過剰に演出したりして、試合を有利に進める行為だ。

小学生の頃は純粋だから、こんなことが行われることに驚いたものだ。

バスケットボールにしろ、サッカーにしろ、相手のユニフォームを引っ張ったり、自然な振る舞いに見えるように相手に身体をぶつけたりするのは当たり前のように行われている。

柔道もそうだ。

効果的に相手を痛めつけるような身体の使い方をする。

これらは当たり前のことなのか。

私もそうだが、誰もがそれに見慣れてしまっているのではないか。

見慣れてしまっているというのは、ずる賢いのが日常でも当たり前となっているということだ。

サッカーでもこれが通ると1点が入るとなれば、ディフェンダーはファールしてでも止める。

当たり前のように行われているプレーだが、ただのズルでしかない。

スポーツがお金になり、称賛を得られるものとなっているから、勝利至上主義となる。

その称賛を得るため、勝つためには人は手段を選ばなくなる。

ドーピングもそうだ。

どれだけバレないようにズルをし、試合を有利に進めるか。

オリンピックの有様を見ると、子どもに見せられないような残念な行動も目につく。

正々堂々と戦えば、損をしてしまう。

逆に効果的にズルをする人間が得をする。

私がこういったことをおかしく感じるのは、日本人だからという面が大いにあるかもしれない。

そもそもの話だが、当人はその行為を汚いと思っていないかもしれない。

単純に、審判に笛を吹かれなければファールではないという認識しか持っていないのかもしれない。

海外と日本という、文化の違いもある。

国によって、価値観が違う。

グローバル化が進み、海外の価値観が日本を浸食し、日本人の価値観はどんどん変容していく。

LGBT。

ジェンダーフリー。

多様性。

西洋の個人主義。

人は知らず知らずのうちに、その変化に慣らされていく。

効果的にズルした方がいいのではないか、なんて考え方になってくる。

それが大っぴらに許される社会となっていく。

それを使わないと損みたいな。

それがスポーツであり、人間社会なのだと言う。

盲点を突いたり、抜け穴を探したり。

そして、それもまたありだよねみたいな、風潮に染まっていく。

見られていても、それが卑怯や恥とも思わなくなる。

卑怯や恥の概念がなくなっていく。

オリンピックやプロのスポーツ大会では、人間の素晴らしさが大いに見える。

ただ、一方で、人間の汚さもまた見える。

汚かろうと、勝てば官軍。

勝てば称賛を得られる。

その大いなる名声と称賛の前に、汚さは消えていく。

金メダリストや一流のスポーツ選手が誰しも人間的に素晴らしいかと言えばそうではない。

その競技がただ一番長けた人間だということに過ぎない。

一番ということは本当に凄いことだ。

ただ、それはそれ。これはこれ。

人間性とは別の話だ。

何が何でも相手に勝つという想いが強いのだろう。

そのハングリー精神はすごいと思う。

ただ、己に勝つという意識はないのかもしれない。

政治家もそうだ。

有名になりたいという人たちもそうだ。

ルールや法に触れなければ、何をやってもいいのか。

ルールや法の盲点をつけばよいのではない。

当たり前にそれはないとされているから、ルールや法に明示されていないだけだ。

結局のところ、有名無実になるだけだと思う。

お金や名声は手に入るだろうが、心はどうなのだろう。

世の表に出る人間は人の手本とならなければならないと思う。

人前に出るとはそういうことだ。

多くの子どもたちが見ている。

審判の誤審で、不利になった人は誰しも異議を唱える。

ただ、有利になった人で異議を唱える人はいるのだろうか。

どちらも同じことだと思う。

フェアプレーとはそういうことだと思う。

バカ正直に生きればいい。

元来、私は何でもいいよねという考え方なのだが、ここに来て、頑強に異を唱えていこうと思う。