柳美里著「飼う人」を読んで | ひさしのブログ

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世の中には変わった生き物を飼育する人も多いが、実は自分自身も以前は変わった生き物を飼育していた

熱帯産のイグアナなどの爬虫類や両生類はもちろん、ハサミムシやオサムシにハンミョウなど

ハサミムシは動きが可愛らしいしハンミョウは斑の紋様が凄く綺麗だ

今回取り上げる小説の登場人物たちも普通とは違った奇妙な生き物を飼育している

彼らがそれらの生き物に取りつかれ魅了されるのも心に蟠りや遣る瀬無い思いがあるから、自分自身がそうだったから小説に出てくる登場人物たちにも自然と同情してしまうのであるが、たぶんこの小説を読んだ人で同じような経験や体験があったらきっと同情して共感するであろうように思える

まず最初に登場するのは、イボタガという蛾の幼虫即ち毛虫を愛好する主婦だが、彼女は市役所に努める夫に選挙の仕事で偶然「遇い」一目ぼれする

夫の優しさ自分に向けられる愛情にどっぷりつかり其の儘すぐに性交に走る、二人の子供が欲しい、早く子宝に恵まれたいという激しい思いはやがて夫を束縛することになるが、単調な日常に飽き飽きしてついに偶然見つけたイボタガの幼虫をトイレで飼育するようになる

そして更に夫への不信や浮気の妄想が激しくなると愈々狂信的に毛虫を愛好するようになる

だが毛虫が突然消え、踏みつぶされたようyな跡を見つけたとき、愈々怒りは夫に向けられ、離婚を告げて出ていく

次に登場するのがサラリーマンからコンビニ店員に落ちた男、彼は企業で有望な「人財」とされたが会社の業績不振でリストラにあう

親切だった会社が突然自分を捨て去ろうとしたとき、会社の本性を知る

労働監督署に訴えるも無視され乱雑に捨てられる

コンビニに落ちてから偶然見つけたウーパールーパーを愛好するようになったが、彼もまた兄のできちゃった結婚で家を追い出されてしまう

次の登場人物は高校受験に失敗した親子、母とこの絆の強さも感じるが、子は親離れ、母は子離れできてない

だが生き物においては共通の生き物を愛好する

シルバーアロワナの死で無駄になった水槽に新たに入れられたのはイエアマガエル、カエルの奇妙さ習性や除草作業員たちの話し声を唯一の楽しみとする子供はやがて難関校に向けて受験に励むようになる

そして最後は、ツマグロヒョウモンという蝶の幼虫を飼育する男、そうこの男こそが最初の登場人物の夫に当たる市役所勤務の男、妻に言いがかりを付けられ離縁された男はやがて偶然見つけた蝶の幼虫に魅了されていく

妻の家出にショックを受け不規則な生活で衰弱した男の唯一の楽しみはやはり妻と同じく毛虫を愛好すること

この小説、最初と最後のストーリーが見事に一致しているのも面白い

やっぱ夫婦はお互いに似てきてやがて同一になるのかな

そういえば性格や趣味も真逆な夫婦って少ない気がする