綿矢りさ著 「意識のリボン」を読んで | ひさしのブログ

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綿矢さんといえば、芥川賞の受賞作「蹴りたい背中」もインパクトあったが、それ以前に書いた「インストール」はある引きこもりの女子高生がオタク少年と風俗サイトで一儲けしようとする話であっという間に一気読みしてしまったが、すごく衝撃的であった

この小説で綿矢さんは文藝賞を受賞したが、当時まだ17歳で審査員をあっと言わせるほどのデビューであった

更に早稲田大学に進学した後も「蹴りたい背中」を筆頭に「かわいそうだね」、「私をくいとめて」など次々に作品をヒットさせたが、ストーリーや登場人物、主人公に女性が多く、そのせいか女性の読者が魅かれる作家となった

加えて内容や主人公が当時の綿矢さんと同年代で、作品に等身大の自分を投影させたともいえるかも知れない

ところで、つい最近読んだ「手のひら京」はこれも女性が主人公の三姉妹のそれぞれの生きざまを描いているが、この小説は一読すると「想像」し「創造」されたもので、この小説に限っては等身大の綿矢さんが描かれてないように思えた

他にも「勝手に震えてろ」のような地味な経理課の女性OLが主人公の恋愛ものもあるが、この主人公の年齢が26歳でやはり小説が書かれた当時の綿矢さんの等身大の自分が描かれているように思えた

そして今回読んだ「意識のリボン」であるがこれは8話からなる短編ストーリーであるが、この小説はこれまでの自分を振り返りながら、第三者の立場という視点から書かれているように思えた

例えば、この作品の中の「こたつのUFO」というストーリーでは、綿矢さんが憧れる「太宰治」の言を取り上げ太宰の「炬燵は人間の眠り箱だ」という話が、早くに小説家デビューして何も書けなくなった女子の悲劇の言い訳と捉えているが、まさに綿矢さん自身の事を暗に意味しているようにも思えた

更に俺の様に綿矢さんの作品が綿矢さん自身を主人公にして描かれていると思っている読者に対しても「あくまでもフィクションですから主人公と同一視しないでください」とくぎを刺し、一方で実は経験談だとか、主人公の趣向と自分は別だとか述べながら煙に巻き、最後は全て読者の想像にゆだねたいとも述べている

だが他のストーリーである「履歴のない女」や「履歴のない妹」、「怒りの漂白剤」を読めば、ここにやはり等身大の綿矢さんが描かれているようにも思えた

自分よりも積極的で男性経験も豊富な妹との関係、失恋のどん底に落ち込んだ時の気持ち、更に幼い我が子に対する愛情など

実際に綿矢さん自身が体験したことで、そこに筆の強さを感じる

ところで、綿矢さんの作品にはチャイルドモデルから雑誌モデル、アイドルとなってテレビや映画で活躍する女性が主人公の「夢を与える」などもあるがすごくリアルで、この作品を書いたとき綿矢さんが大学生で美貌の作家としてモデルなどもしていたらしい

やはりここにも「自信」に満ち溢れた「自身」が描かれているように思えるのだ

そういえば、大学生から20代半ばぐらいに書かれた小説には堂々と自身の写真も載せていた

やっぱすごく美貌で、聡明怜悧な感じがした

だが30歳過ぎの作品になると一切写真は載せてない

まあこれは余談だけど、小野小町や和泉式部も老衰することの恐怖を痛切に感じていたらしい

藤原道長は和泉式部を優秀な女房と認めるものの「うかれめ」とからかっていた

恋愛にも熱心で浮気や離婚騒ぎでも注目された綿矢さん、まるで和泉式部のように思える