信じられないことが起こった。
1月22日(火)
仕事をしていると、体に異常を感じた。
何やら悪寒がしてきたのである。
更に、頭がボーッとしてきた。
極め付けに、腹が痛くなってきたのである。
風邪か?と、思った。
風邪ならいい。
しかし、ふと、あるキーワードが頭に浮かんだ。
“ノロ・ウイルス”
あっちょんと食べた生牡蠣を思い出した。
ひょっとすると、当たったんじゃないだろうか?
あの女め!あのメスブタめ!
全部あいつのせいだ!
ほんのちょっと可愛いからって!
ちくしょー!
そう思うと同時に、背中がゾクゾクとして、震えがとまらなくなった。
パソコンで、インターネットを開く。
ヤフーに検索ワードを入力してみる。
『ノロ 初期症状』
すると、たくさんのホームページがヒットした。
“熱が出て、腹痛、吐き気が起こり、急に耐えきれない下痢、嘔吐に見舞われる。”
読んでいると、吐き気もしてきた。
やばい。ノロにかかったに違いない。
そう思った。
苦しみに耐え、お客さんとの約束があったため、外出。
なんとか打ち合せを終え、電車に乗り込む。
運良く、座席に座ることが出来た。
東京メトロ 丸ノ内線。
茗荷谷駅から東京駅まで。
東京駅で山手線へ乗り換えないといけない。
東京駅手前の大手町駅で、自分が座席から立ち上がれないことに気付いた。
目眩のようなもので、立ち上がれないのだ。
立ち上がれば、確実に『吐く』という確信のようなものもあり、余計に立ち上がれなかった。
こんなところでゲロったら、大変なことが起こってしまう。
電車は東京駅を通過。
終点の新宿駅まで、僕は座席にうずくまってしまった。
新宿駅で、なんとか下車。
ホームの反対の電車を待つ。
乗ってきた電車は、新宿駅止まりだったが、通常の丸ノ内線はその先の駅がある。
そのため、来る電車はほぼ満員電車だった。
座席に座らないと帰れない。
そのくらい苦しかったので、何度も何度も電車を見送る。
何度目かで、新宿駅始発の電車がやってきた。
死にそうになりながら、それに乗って、なんとか会社へ戻ることが出来た。
早めに家に帰ろう。
そう思っていた。
しかし、現実は甘くない。
こんな時に限って、不測の事態が起こる。
納品した製品が間違っているという事故が起こったのである!
ちくしょー!なぜ!なぜだ!
神よ!これはあんたの仕打ちか!
だとしたら酷い!
神よ!
苦しみながら、上長報告。
明日の朝一に、埼玉にあるお客さんの倉庫に、納品物を検品しに行くことになった。
「今日は会社の車で帰宅し、明日朝から埼玉の倉庫に直行せよ」
と、命じられた。
その日は、本社から出張してきた方がおり、夜は皆で飲み会だった。
もちろん、僕は行かなかった。
というか、行けない。
皆が飲み会に出かけた後。
明日の朝一直行のため、震えながら夜中まで仕事をした。
ガチャッ。
仕事をしていたら、不意に入り口の戸が開いた。
だ、だれだ!?
「おぃーーすっ」
熊のプーさんを真っ黒にしたような、大仏さんのような裸の大将のような、真っ黒な人物が現れた。
御塩(おしお)さん(仮名)である。
飲み会を終え、会社に戻ってきたのである。
何故かを問うた。
「福岡に送る原稿をまだ準備してなかったけど、酒飲みたくて我慢できなくてほったらかして行ったとでごわす。ふっしゅ~(意訳)」
車を使って、羽田空港に原稿を持ち込み、航空便で福岡に発送するということだった。
会社の車は一台しかない。
御塩さんは酔いを覚まして、明け方まで会社で寝て、車で空港へ行く魂胆だった。
しかし、僕も車を使う。
明け方までなんて待っていられない。
こうして、酔っぱらいの御塩さんを連れ、空港経由で帰宅することになった。
寒い。苦しい。きつい。
車を空港に向けて走らせる。
御塩さんは、頑張って起きててくれたけど、途中から寝た。
全てを済ませ、夜中の2時にうちへ着いた。
明日、この状態で埼玉へ行けるだろうか。
悪化していたらどうしたらいいのだろうか。
不安ばかりが頭を行き来する。
とりあえず、寝るしかない。
朝になった。
目覚めて、信じられないことが起きていた。
今でも信じられない。
あんなことが起きるなんて。
どうしてあんなことになったんだろう。
どうして。
なぜ。
浮かぶ言葉はそればかり。
朝起きたら。
全然きつくなくなっていたのである。
完璧に治っていたのである。
寒気も、なにもかも。
なくなっていたのである。
あー、びっくりした。
そう思った。
(オチが弱いなー)