彼の家で居候生活がはじまりました。
約束事が一つ。と彼が言いました。
その瞬間、わたしはドキッとしました。
なにを言われるのだろう…
彼は言いました。
朝起きて夜ちやんと寝ること。
約束事と言ったので
期間内に仕事を決めろ。
もしくは炊事などの話かと。
予想外だったので驚きました。
大きな人だと思った。
彼には本当に感謝しています。
次の日、月曜日だったので
ネットで求人広告を見て
電話をしました。
正社員になれなくてもいい。
生活出来るならアルバイトでもいい。
幾つかの会社に面接に行くことになりました。
履歴書もたくさん送りました。
面接の結果がすごく待ち遠しい
一週間でした。
一週間後、結果はすべて駄目でした。
あんなにたくさん受けたのに。
アルバイトなのに。
どうして受からないんだ。
履歴書だけでわたしの何がわかるんだ。
そんな想いに押し潰されそうになりました。
彼は縁がなかっただけで
きっと見つかるよと励ましてくれました。
諦めずに探さないと。
たった、一週間。
来週にはきっと…
でも、そんな思いとは別に
もう一つのことを思うわたしがいた。
朝起きても、なにもすることがない。
ただ、結果を待つのみ。
掃除をしたって、洗濯物をしたって、
時間が余り、時間の潰し方がわからない。
外に出てもお金が要る。
貯金などない、
次の収入が見込めないので使えない。
ただ家に居るしかなかった。
静かな部屋で一人、
次第に考えることが多くなった。
本当に何処か受かるのだろうか…
このままわたしはどうなるのだろうか…
はやく決めないと追い出されるかもしれない…
帰るところがない…
焦りが出始めたのです。
わたしは彼に、
生活費も食費もなにひとつ払えない。
夜ご飯何を食べようか?
何気ない会話なのにすごく申し訳なくて…
一人で酒に浸った。
続く。
彼の家まではそんなに
遠い距離ではないので
すぐに着きました。
自転車を止めて彼の家の前まで
来たのですが、どんな顔で彼に
会えばいいのかわからず戸惑いました。
少しの間、玄関の前に居ました。
まず、はじめになんて声をかければいいのだろう。
笑って冗談でも言った方がいいのだろうか。
深刻な顔をしていたら気を遣うかもしれない。
そんなことを考えていると
キリがないので、思い切って
チャイムを鳴らしました。
彼が出てきてわたしは
何を話そうか迷っていた。
すると彼は優しい笑顔で一言。
おかえり。
わたしの心は少し救われました。
彼はわたしのために
大好きなカキフライを買ってきて
くれました。
なんだかいつもより美味しく感じました。
その後、録画していたテレビを
二人で観ていました。
彼が気を遣ってくれたのでしようか。
しばらく見ない間に
携帯の着信、メールがたくさん
来ていました。
携帯が光るたびに罪悪感に襲われました。
自分で招いた結果なのに。
人間って、本当に勝手な生き物なんだなあと思いました。
それから記憶が曖昧なのですが
家には帰れないことなどを
彼に話したような気がします。
わたしは再びネットカフェに
戻るつもりでした。
しかし、彼はわたしを心配してくれて
ここに居ていいと言ってくれました。
彼は言いました。
仕事はわたしが生きるための糧だと。
すごく心に染みて
いまでもすごくその言葉が残っています。
そして、わたしの居候生活が始まりました。
続く。
とりあえず着替えを取りに帰ろうと
地元まで戻ってきたのですが…
この日は日曜日で母が家にいました。
駄目だ。帰れない…
わたしは駅のホームで少しの間
ぼーっとしていました。
この時、わたしは友達とメールで
近状を伝えていました。
彼女はリストラされたサラリーマンと
言いました。
駅のホームで笑ってしまいました。
わたしの場合、自ら選んだのですが…
この時、お昼過ぎだったと思う。
人間どんな時でもお腹は空くんですね。
お腹も空くし、喉も乾いていました。
しかし、わたしの地元には
なにもないんです。
すごい田舎なんです。
このまま外に居ても仕方ない。
ネットカフェへ戻ろうかと
思いました。
でも、数分後に戻ると
不審な目で見られるかもしれない…
わたしは彼にメールをしました。
彼のことは後々話します。
彼とは数日前に喧嘩をしていて
別れ話になりました。
どうしようもないことで
わたしが悩んで彼を傷つけました。
そして別れることになりました。
でも、すごく好きだったんです。
花屋に行かなかったこと、
母にバレてしまったこと、
行く宛がないこと…
あんなに傷つけたのに彼は、
いいから、早く帰っておいで。
ご飯買ってるから。
すごい心の持ち主だなあと
思いました。
わたしは彼の所へ行くことになりました。
続く。
