先月「変な家」を読んだばかりだが、「変な家2」(以下『2』と記載する)はもう予約が回ってきた。あまり間を空けず読めるのはありがたい。

 

「変な家」の感想は忌憚なく書いた通り。ホラーなのかミステリーなのかどっちつかずの感もあり、アイディア勝負で終わっていたのが残念だった。

 

正直なところ2も全然期待していなかったのだが、意外や意外、2の方がずっとおもしろかった。続編はどうしても二番煎じでつまらないことが多いが、2は明らかに書き手が「変な家」で物足りなかった要素をしっかりとカバーしてきた。そして話も相当作り込んでいる。だから「変な家」よりページ数もボリュームがあり、それが冗長にはなっておらずしっかりと読者を引っ張っていく。もはやこれはミステリー作品だと思う。

 

 

「変な家」の結論ありきで書かれた間取り図とその強引すぎる解釈は、話に乗っかれる人はいいのだろうが、乗っかれない人間にとってはイマイチ感があった。

2では11件と、たくさんの間取り図を用意している。「変な家」の時のような無理矢理感は軽減され、ストーリー設定ありきの間取りでも不自然さは感じないものになったと思う。専門家でもないのに上からですみません。

 

そして、11件の間取り図それぞれに『資料』という形でストーリーが用意されている。最初は短編集なのかと思うほどに内容もテイストもバラバラなものが、関連性のあるワードがいくつか明かされることで、だんだん一つの流れになっていく。ミステリ要素が強くおもしろい。

 

また「変な家」では、知り合いの設計士栗原が語る推論=正解という論調で話が進んでしまい、それを覆す要素も出てこなかったためストーリーが単調になっていた。

2では全ての間取りと資料が出揃った後に、ラスト残り1/3になってから栗原が登場し、全資料通しての謎解きをするが、「変な家」のように栗原の考え=正解で話が進みそのまま終わってしまうことはない。いくつかひねりが用意されている。

 

栗原の推理の後、主人公は自力で違う推論を思いつく。資料の中で語られた何気ない言葉を捉え直して、資料の関係者に取材をする。この最後のパートの中では3回もひねりがあった。物語の根底を覆すどんでん返しはミステリーファンの大好物。満足度を左右するし、かなりのサービスぶりだ。

 

だが気になった点もある。

ラスボス的人物に名前がないのだ。『資料』にも一応登場してはいるが、ラスボスとしてクローズアップされるのに名無しはどうなのか。また、ラスボスとなるまでの人物像の膨らませ方が足りておらず、唐突に感じる。この人物の心情については表面的で、ホワイダニットの部分での説得力がもっと欲しかった。そしてラスボスとして他の人間をどういう感じでコントロールしているのか、あまり語られていない。物語の真相にあたる部分なのに、ちょっとおざなりである。

 

終わり方も物足りない。いろんな『資料』が一つの答えに結びついて、いわばたくさんの小川が一級河川に流れ込むような物語の構造はかなり考えられたものだが、この終わり方でいいのだろうか。最後の人物が語る出来事は、この話全体を締めるにはあまりにも個人的な感じで余談的にも感じる。

変則的な夢オチと言えそうで、アイディアとしてはおもしろいが、ボリュームある話の最後にふさわしいかは疑問。オチをつけたかったのかもしれないけど、余韻というよりも最後にしょぼんと話がしぼんでしまった気がする。語られた内容が事実なのかどうかも、ここまでくると怪しい。それもこの人物についての事前の書き込みが不足しているというか、資料の中で語られたこととあまりマッチしない、しっくりこないのだ。

 

やはりこの書き手は中高年男性という気がする。10歳前後の女の子の心情、いや女性全般の心情についての書き込みが薄く、時々突っ込みたくなるのは仕方がないのだろうか。