それは塩だった。命の水が蒸発し、中に含まれていた塩だけが積もっていたのだ。まさに≪命の塩≫である。
アウドムラはおそるおそる命の塩に近付き、試しに一舐めしてみた。すると、アウドムラの腹に激痛が走り、ひとつの命が産み落とされた。
それは雌牛であるアウドムラとは異なる姿形をしていた。2本の手と2本の足を持つ者。巨人族に似ているが、巨人族よりもうんと小さい。
アウドムラはその命に≪ヴーリ≫と名付けた。そして、アウドムラの乳を飲んで成長したヴーリはユミルと同じように新たな命を生んだ。
それは≪ボル≫と名付けられたが、ヴーリのように1人で新たな命を生むことはできない不完全な存在であった。自らの体に命を宿すことができず、命の種を他の体に与えることしかできない。しかし、ボルはたくましい肉体と勇気を持ち合わせていた。
つづく
