虚無の空間≪ギンヌンガガップ≫の中、氷の世界ニヴルヘイムと炎の世界ムスペルヘイムがある次元とは異なる次元でも異変は起きた。1滴の滴が現れ、それはやがて泉となった。その泉≪フベルゲルミル≫は枝葉を伸ばすかのように川をつくり、ニヴルヘイムとムスペルヘイムのある次元にまで達した。そして、ニヴルヘイムとムスペルヘイムを隔てる溝に流れ込んだ。
溝に流れ込んだ川は、ニヴルヘイムから入り込む冷気によってたちまち凍りついた。しかし、その後ムスペルヘイムから入り込む熱気によって凍りついた川の表面にヒビが入り、互いに押し潰すように表面がせり上がった。そして、せり上がってできた氷片が徐々に溶け出していった。
その溶けた氷片のひとつからひとつの命が生まれた。2本の手と2本の足を持ち、両の足で立ち上がった命――原初の巨人≪ユミル≫。
そしてもうひとつ。別の氷片からも命が生まれた。4本の足と2本のたくましい角を持つ命――それは1頭の雌牛(めうし)≪アウドムラ≫であった。
つづく
