沈丁花は夜になると
もっと香るらしい
冷たい空気の夜に
玄関ドアを開けると
2mほど先の沈丁花の香りが
迫ってきた
柑橘と何か分からないものが
乳化するほど混ざり合ったような
高貴で芳醇な香りが
きちんと整列した空気の隙間を
すり抜けるときに研がれて
清廉さを増していた
見上げれば
冬のダイヤモンド
そのアルデバラン辺りの
ヒヤデス星団の美しさが
まるで眼下の香りと
シンクロしているようだった
僕は前日の夜遅くに
ドストエフスキーの
『カラマーゾフの兄弟』を読了した
その余韻までもが
シンクロしているようで
誘われた僕の体は
心が追いつく前に
ふわっと浮かんでいた
