寝室に行くまでには
まだあと三十分ほどあって
さて何をしようかと
身も心もソファに
斜めに沈み込んでいた時
長男がピアノを弾き出した
題名は知らないけど
低音の多いクラシックの曲
部屋のあちこちで跳ね返った音は
四方から僕の時間を突き刺しては
切り落としていく
もう何も出来ない
もう何も始められない
なのに時計の針は
止まったように
ゆっくりと動いている
この矛盾に満ちた部屋で
なぜか心がほどけて
満開の後にはらはらと
離れていく花びらのように
悔いがない
部屋はもう
題名は知らないけど
三曲目に入っていた
