妖怪小説 | おばけのブログだってね、

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The 27th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214〜257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

ひょいひょい歩ける「楽駝」の話

妖怪たちは意味も判らずクリスマスが待ち遠しい。

パーティのハイライトは、それぞれが用意したプレゼントの交換で、昨年、かっぱが提供したトナカイの尻こだまは、とても臭いと大評判だった。

他と言えば、タヌキの尻尾、破れた傘、小さな頭蓋骨、使い古しのロウソクと持ち寄られるプレゼントもさまざまだ。

 

ある年のこと、あちこち継ぎだらけでくたびれたベージュ色の股引が当たった。基本的に通年全裸のかっぱだが、股引の色が渋くて気に入ったので、冬の間、穿いて過ごすことにした。

この股引を穿くと、なぜか歩くのがとても楽なのだ。

あまりに歩みが進むので、かっぱの棲む横浜から東海道を下り、気づくと箱根の温泉にいた。

これ、ただ古いだけの股引じゃないな。

帰り道、股引を提供してくれた小田原の化け仲間を訪ねて話を訊いた。

すると、この股引は『楽駝(らくだ)』と呼ばれるつくも神で、江戸時代の飛脚の魂が入っていると言う。

良いものをもらったとあらためてお礼を言い、鼻歌まじりで家に帰った。

 

それからかっぱは、毎日箱根まで出掛けた。

あちこちの湯に浸かるうちに、ご当地、足柄山の金太郎じいさんと温泉友達になった。

若かりし頃はクマを相手に相撲の稽古をしたというじいさんは、一勝負しようとかっぱを誘う。手加減したものの、あっと言う間に金太郎じいさんを湯の中に投げ飛ばしてしまった。

がっくりと肩を落とし、じいさんは先に湯から出て行った。

その帰り道のこと、何かおかしい、ずいぶん疲れるなあと思い、股引を良く見てみるとそれはただ古いだけの普通の物だった。

脱衣所で取り違えられたのだろう。

『楽駝(らくだ)』のないかっぱは、くたくたになって何とか横浜まで戻った。

 

後日、金太郎じいさんが横浜のかっぱを訪ねてきた。

じいさんはあの日の帰り道、不思議と歩くのが楽で、つい箱根から御殿場を越えて富士山山頂まで一気に登ってしまったそうだ。下山する途中でクマに出会い、軽く投げ飛ばしてやったと歯のない口を大きく開けて笑う金太郎じいさん。

久しぶりに楽しい思いをさせてもらったよと言うと、じいさんは見覚えのある股引を脱いで、かっぱに手渡した。

もう春だからかっぱは穿かないよと、しまっておいた金太郎じいさんの股引に、『楽駝(らくだ)』を重ねてじいさんに返した。

箱根の金太郎、いつまでも元気でね。