妖怪小説 | おばけのブログだってね、

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The 27th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※214〜257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

お化けだって怖いんだ「宿貸し」の話

かっぱと子供が布団で並んで寝る様子

バンドで東北のある町に向かった。

予定より帰るのが遅れ、今夜は泊まろうという話になる。

きっとこの先にビジネスホテルか民宿でもあるだろうと見当を付けてワゴン車を走らせたが、街道沿いには何もない。

仕方なく少し道をそれたその先に、小さな民宿の看板を見つけた。

クルマを停めて入口からこんばんはと声を掛けたが、返事はない。

もう2、3回、叫んでみたところ、奥から小学生くらいの男の子が出てきた。

男の子は季節に似合わない小さな浴衣姿だ。

誰かいますか?と尋ねると、すぐに帰ります、と答える。

部屋はあるのでどうぞ、と慣れた様子でかっぱ達を招き入れた。

通されたのは掃除も行き届いた大きい部屋だった。

荷物を置くと、さっきの子供がやってきて、お風呂沸いていますよと言う。

いつもお手伝いをしているんだろう、タオルや浴衣も用意してくれた。

お風呂から出てごろごろしていると、お食事をどうぞと、またさっきの子供が言いに来た。

食堂にはひとりひとり、お膳が用意されていた。

おかずは焼いた川魚や山菜と素朴なものだったが、みんなお腹がすいていたので満足だった。

ただ、茶碗もお椀も箸も小さくて、子供用みたいだ。

そのあいだ、さっきの男の子がごはんをよそったりお茶を煎れたりと面倒をみてくれる。親御さんはまだ戻らないのかと尋ねると、はい、と答えた。

部屋に戻ると疲れもあって、早々と布団を敷いて横になった。

知らない所では怖くて寝付けないかっぱも、あっと言う間に眠ってしまった。

しばらくして、部屋の障子が開く気配で目が覚めた。

見ると、宿の男の子がもぞもぞしながら入ってきて、怖くて眠れないので何かお話してください、と言う。

かっぱも眠たかったが、まあそう言うならと、楽しい話をひとつふたつした。

ありがとう、と言って男の子は出て行った。

またうとうとした頃、再びあの子が部屋に入ってきた。

今度はどうしたのと訊くと、怖くて眠れないので一緒のお布団で寝てください、と言う。やれやれ、と思いつつ、隙をみて尻こだまも頂戴するかと心のなかでほくそ笑んだ。

さあどうぞ、と少しずれて、男の子と並んで横になった。

またうとうとした頃。

ひんやりとした感触に思わず飛び起きた。男の子のおねしょだった。

かっぱはつい、わあ!もう一緒に寝られないよ!と叫んでしまった。

次の瞬間、かっぱ達は何もない草むらに横たわっていた。

その男の子は、一人で寝るのが怖くて毎晩、宿を開いて誰かを待つお化け『宿貸し』だったのだ。