2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※
新たなる接触「留守電小僧」その後の話
その日、家に戻ると留守電が残っていた。
幼い声でこんなことを言っている。
「あ、お母さん?ボクだよボク、息子だけど」
かっぱにはもちろん、思い当たる節がない。
「ボク、風邪気味で声が変なの」
「あのね、大変なことになっちゃった」
と矢継ぎ早に言う、自称・息子。
「ボク、友達のシュークリームを踏んじゃったから弁償しないといけないの。警察にたいほされるからシュークリーム1箱、早く持ってきて!」
と、ここでメッセージは終わっていた。
以前も紹介した『留守電小僧』、しばらく留守電も途絶えていたものですっかり忘れていた。
かっぱは次の連絡を待った。なにしろ、シュークリームをどこに持って行けばいいのかわからないからね。
かっぱが席を外した隙をついて留守電が入った。
道路を渡った先にある小学校の裏口で待ってると言う。
近くのケーキ屋さんでシュークリームを調達し、小学校に急いだ。
いよいよ『留守電小僧』とご対面だ。
しかし校舎の裏口に人影はなく、そのかわり受話器の外れた公衆電話があった。
受話器を耳に当てると、「今度は隣のコンビニ前に来て」と自称・息子のメッセージが聞こえた。
コンビニ前の公衆電話も受話器が外れている。やはり、受話器からは小僧のメッセージが流れ、「公園のベンチにシュークリームを置いておけ」と言っている。勝手なもんだ。
かっぱは公園のベンチに箱を置き、隠れて様子を伺った。
ほどなくすると、頭にアンテナを立てたおかしな小僧がやってきた。あれだ。『留守電小僧』に違いない。
小僧はベンチにそっと近づく。かっぱも、小僧の後ろからそっと近づき、ポンっと肩を叩いた。
小僧は驚いて飛び上がり、かっぱを見て腰を抜かした。
こら!これは近頃、話題のボクボク詐欺だろう?と言うと、小僧は泣きながらぺこぺこ頭を下げるばかりで一言も口をきかない。
どうも、留守電以外ではしゃべるのが苦手なようだ。
反省した様子なので、一緒にシュークリームを食べた。
色々と聞きたいことはあるが、それはまた後日にしよう。