『かっぱの妖怪べりまっち』144話「雪隠太郎」その後の話 | おばけのブログだってね、

おばけのブログだってね、

The 26th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※

 

長寿パワーで人気の「雪隠太郎」その後の話

秋田のかっぱ婆ちゃんが倒れた。

かっぱが駆けつけたとき婆ちゃんはすでに虫の息だった。

畑仕事の最中に転んで気を失い、そのまま何時間も倒れていたらしい。日に照らされて皿はカラカラ、全身シワシワで、まるでオレのふんどしみたいだったとおじさんは言う。妖怪といえど、ここまで弱ると回復は難しい。そのとき『雪隠太郎』(せっちんたろう)を思い出した。

 

『雪隠太郎』はトイレに現れる子供の妖怪で、棲みついた家の住人に長寿をもたらす。いたずら好きで驚かされることも多いが、太郎の長寿パワーを知っているお年寄りには大人気だ。ただトイレが汚れるとすぐに姿を消してしまう。

『雪隠太郎』とは顔なじみのかっぱだったが、いざ呼び出そうとするとこれがうまくいかない。

トイレはぴかぴかだが…きっと何かが足らないんだ。

ミニカーやチョコを並べたがダメ、トイレの壁を電飾でキラキラにしてみたが変化なし、人気のゲーム機を持ち込んだが無反応、太郎出てこい!と叫んだ声はむなしく排水口に消えた。

どうしたらいいんだぁ、ああ、せっちんたろうよ、出ておいでよぉ♪と即興で歌を口ずさみながら踊っていたら、後ろでケラケラと笑い声がする。『雪隠太郎』がついに現れた。

長寿パワーをあやかりたい、その一心でかっぱは早速、太郎をばあちゃんの部屋に連れて行った。

太郎はしなびたばあちゃんを見るとゲラゲラ笑い転げ、みんなを外に追い出して障子を閉めた。部屋の中にはばあちゃんと太郎だけ。

すると中から、チョロチョロじょろじょろと何やら水の音がする。果たしてこれは?と思った次の瞬間、勢い良く障子が開き、中からかっぱばあちゃんが飛び出して来た。肌にも張りが戻り、さあ、畑さ行くべ!と元気一杯だ。

『雪隠太郎』が何をしたかは知らないが、かっぱはうれしくて太郎と一緒に歌い、踊った。いい加減にしろ!とばあちゃんに叱られるまで踊り続けた。