『かっぱの妖怪べりまっち』141話「坂問答」その後の話 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※

 

古い電話のツクモガミ「坂問答」その後の話

坂の上に現れる『坂問答』(さかもんどう)は使われなくなった公衆電話のお化けで、次から次へとなぞなぞを仕掛けてきたのだが、その電話ボックスもいつしか撤去されてしまい、『坂問答』のうわさはしばらく聞かなかった。

最初に『坂問答』を見つけたのは雪おんなだったが、今回、再発見の一報も雪おんなから届いた、それも泣きながらね。

 

スマホを片手に歩いていた雪おんなの前に、突然、現れた『坂問答』。場所は横浜元町の汐汲坂だった。

はっとした次の瞬間、スマホから『坂問答』の声。

「持ち歩ける電話の通称を答えよ!」

「なによ、ケータイでしょう?」

「ではピッチとは何か答えよ!」

「なつかしいわ、PHSね」

…こうしてお互い一歩も引かない問答は延々と続いたが、ついに『坂問答』からこんな質問が飛び出た。

「君の所持している携帯電話機の台数を答えよ!」

…雪おんなのケータイ好きは有名で、新しい機種が発売になると真っ先に手に入れて喜んでいる。そのため、家には数えきれないほどの電話機が転がっているらしい。

それまで難なく答えてきた雪おんなも、これにはグッと詰まった。

えーっといくつかしら…。

指を折っている雪おんなの耳元で、

「君の負けだ!古い電話も大切にしろ!」

との大声が響いたかと思ったら、『坂問答』の姿はもうどこにもなかった。

我に返った雪おんなは10円玉を握って公衆電話を探し、かっぱに連絡してきた。

「どうしよう!私の大事な最新モデルのスマホが、糸電話になっちゃってる!」

それを聞いてかっぱは吹き出したが、逆にレアだよとなぐさめた。

きっとその糸電話を耳に当てると『坂問答』の声が聴こえるよと言ったら電話の向こうで何か叫び声がしたあと、電話は3分でプツリと切れた。