『かっぱの妖怪べりまっち』134話「エノキ岳のエノキ仙人」その後の話 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※

 

ダイエットブームで危機一髪!「エノキ岳のエノキ仙人」その後の話

以前、『エノキ岳のエノキ仙人』というキノコ妖怪の長老を紹介したけれど、あれからひと騒動あった。

エノキ茸を使ったダイエット方法がTVで紹介されるとエノキ茸は八百屋さんやスーパーの店頭で品薄となり、心得のあるひとは天然エノキ茸を求めて山に登った。

そんなとき、天狗さんから緊急の連絡が入る。山奥に潜んでいた『エノキ仙人』が登山者に捕獲され、連れて行かれるのを目撃したらしい。

 

『エノキ仙人』はキノコ妖怪たちにとって平和の象徴だ。

以前はにんげんに寄生していたキノコ妖怪たち。それに対抗して、にんげんはキノコ妖怪を全滅させようと山に火を放ち、その報復に巨大化したキノコ妖怪が村人を襲い、阿鼻叫喚のなか胞子を血で洗う闘争は激化していった。二者の間に立ち、和解を取り持ったのが『エノキ仙人』だった。

 

皆が尊敬する『エノキ仙人』が捕らえられたと知ったらキノコ妖怪たちはまた暴れ出しかねない…。

かっぱは天狗さんの目撃談を元に、『エノキ仙人』が捕獲された長野付近の捜索に向かった。諏訪湖の河童どんちゃんに応援を頼むと同時に、妖怪ネットワークで長野の妖怪たちにS.O.Sを発信、すぐさま付近に棲む『老人火』と『山わろ』から応答があり、巨大妖怪『入道坊主』に付近を見張らせているとのこと。間もなく『エノキ仙人』をリュックに入れた登山者が山中で見つかった。

待ち伏せしていた『野宿火』と『ヤカン吊る』がお茶を沸かして登山者の足を留め、『大蜘蛛』が糸でぐるぐる巻きにした後、登山者のリュックから顔を覗かせていた『エノキ仙人』を無事に救出したと連絡が来たのは翌朝のことだった。

かっぱは富士川をさかのぼっている途中でその知らせを受け、ホッと一安心。それから『エノキ仙人』を囲み、協力してくれた妖怪仲間とともにお疲れ会で盛り上がったというわけ。

あれからエノキ氷ダイエットのブームも下火になり、『エノキ仙人』は山奥で静かに暮らしている。かっぱは今頃になってそのダイエット方法を試してみようかとちょっと思う。