2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※131~174話まで、43話から登場したオリジナル妖怪たちのエピソード続編となります※
あの世への案内人「浮かれ小町」その後の話
彼女の近くにいるとなぜか浮かれてしまう、そんな素敵な精霊『浮かれ小町』は、浮かばれない霊をあの世に連れて行くという大切な仕事をしている。
浮かばれない者たちに成仏を勧めるのだが、そう簡単には解決しないとため息を付く『浮かれ小町』。あまりに悩んでいるので、霊たちの心を動かす企画を立ててはどうかな?とかっぱも口を出した。
まずは”白装束プレゼントキャンペーン”。
期間限定で六文銭がギチギチに詰まった巾着を2つ付けたところ、うだうだしていた霊がこぞって成仏を決めたらしい。お金は常に物を言う。
第二弾として、”一泊二日あの世覗き見ツアー”をやるから、かっぱちゃんも同行して、みんなを盛り上げて欲しいと頼まれた。
かっぱも実はあの世のことはあまり知らない。これは楽しみだ。行きのバスの中では歌ったり踊ったりと誰より浮かれ倒した。
『浮かれ小町』が案内するあの世は、聞きしに勝る素晴らしさだった。バスから降りた一行は光輝くあの世の美しさにあっけにとられ、歓声をあげて駆け出す者、うっとり立ち尽くす者、また一足先に成仏した家族との再会を喜ぶ者などなど、自由にあの世を満喫している。
かっぱも、黄金キュウリ畑を見つけてお腹いっぱい食べて、ダイヤモンドみたいにきらめく川で泳ぎ回った。夕飯にはそれぞれの大好物が並び、かっぱの前には肝吸い付き鰻重が用意された。
翌朝、参加者全員がこのままあの世に留まることを決めた。そりゃそうだ、これぞ天国だよ!
かっぱも残る、と泣いて言い張ったが、結局、『浮かれ小町』とふたり、バスでこの世に戻ってきた。
せめてものおみやげにとリュックに詰めた黄金キュウリは、この世に着いたとたん幻と消えた。