続きです。
前回のあらすじ。
入社2年目のSくんはひと月前に財布携帯など一式入ったカバンを落とした。
すぐに警察に届けられ無事に出てきたが、
ひと月ほど経ったある日、会社に
「Sは借りた金返せ」
と、電話がかかってきてきた。
Sくんには心あたりがないので詐欺だろうということで
会社にかかってきた電話は支店長が撃退、一件落着して落ち着きを取り戻した事務所だったが…
昼前、みんなが出ていって静かになった事務所で
いつものように仕事していたら
昼前に電話が鳴った。
先ほどの山田だったらどうしよう、
支店長いないし…とドキドキしながら取ると
会社の近くにある、とあるお店からの電話だった。
曰く、
お店に出勤したら、
お宅の会社の複数の名前と電話番号が載っている怪文書みたいなファックスが届いてるんですけどこれ捨てて良いかな？
と言う問い合わせだった。
寝耳に水な私。
どんなファックスが来たのか確かめねばと思い、
相手のご好意で、こちらにファックスを送信してくれることになった。
すると、もう怪文書としか言いようがない文章。
Ａ４で5ページに及ぶファックスで、
極太行書体の1センチ四方くらいのフォントで
改行なくつらつらと文字が綴られている。
これだけでただならぬ雰囲気。
内容はといえば、
【督促状】
〇〇会社〇〇支店
住所電話番号のあと、
債務者S（フルネーム、ひらがな)
私用携帯の電話番号
その下にうちの支店の5人ぐらいの営業マンのフルネーム（ひらがな）
会社の電話番号がそれぞれの名前の下に書いてある。
そしてお父さん、お母さん、お姉さんの名前（ひらがな）と携帯番号
大至急金かえせ、
続いて銀行口座番号、
Sへ長期間金を貸したまま連絡がつかないこのままだと寸尺詐欺を疑い貸した時紹介された先に送り続ける大至急返済せよ
と、読点なしで書かれていた。
とりあえず支店長に電話報告。
すると、送信時間は何時かと気にするので
9時過ぎだと答えると
なるほどわかった、
同じファックスが支店と本社、あとお客さんとこにも届いて、今その後処理しとる。
みんな9時過ぎだから一斉に送ったんやな。
というではないか！
ナニソレ私にも教えといて。
お店の人にわざわざ送ってもらっちゃったじゃんか。
で、ここでやっとわかった。
朝の会議に集まっていた謎メンバー。
うちの支店にファックスが届き、
それを最初に気づいて支店長に渡し
支店長が、Sくん、ファックスに名前が上がっていた社員、その上司を呼び集め事情を聞いていたのだ。
ちなみにファックスに名指しされたSくん以外の5人はいずれもSくんと仲良しの若手男性社員だった。
だから、私の電話が来たという言葉に
みんな一斉に振り向いたし
電話が来たという言葉とともにみんなドヤドヤ出てきたのか。
でもさあねえ外部のやり取り受け付けんの私なんだから私にも教えといて（2回目）
しかし、うちにファックスするのに間違えて
近くの店に送ったってこと？
全然番号違うのにー
とか、平和ボケなこと私が言ってたら
いや、これはたぶんわざとですよ。
自宅近辺にもばら撒かれたらしいです、
と同僚が教えてくれた。
ええええー！
自宅周辺にも？？
お母さんお父さんの名前も入ってるし。
大騒ぎしているご家族の顔が目に浮かぶ。
だからSくん支店長が撃退した後も、
青い顔してずっと電話してたのか…
ということは、うちの支店の
同じビルのテナントや周囲の店、
オフィスに一斉に同じファックスが送りつけられたのだろう。
わざわざ電話してくれたのは結局ひとつだけだったけど
近隣の店や会社に相当迷惑かけてんな、これ。
しかしこれはほんまもんの→さんのやり方だ。
今どきの詐欺集団はここまでやるのか。
もう少し詳しく聞くと
Sくんによると
カバンを忘れた日はひどく酔っ払ってて
記憶が一切ない、
でも帰りの電車代がなくて
7500円くらい、知らない男性に借りたかもしれない…その人が山田だったのかも知れない、
と言ってたらしい。
それがいまや75万になってるんだって（支店長談）
めちゃくちゃな話じゃん。
でも、疑問が残る。
まず、盗んだかばんから
どうやって情報抜き出したのか分からないけど
なぜ全員の名前がひらがななの？
ま、そこは漢字よりひらがなの方が異様な感じがして
人を脅すためには効果的なのかもしれない。
一番、不思議なのが
そのうち巻き込まれた形の社員のひとりの名前が
こうじ、という名前なのに
「ゆうじ」となっていたこと。
これは、元々カタカナに書かれたものをひらがなに書き換えるときに
「コ」が「ユ」に見えて間違えたのだろう、と
じっちゃんの名にかけて推理🕵️
しかし、盗んだ携帯から情報抜き出したのなら
なぜカタカナ？
「こうじ」の「こう」は「ゆう」とは絶対読めない漢字なので
携帯を見て誤認って
いったいどこをどうやって見たんだ？
情報抜き出す時ってカタカナになるの？
しばらくして、
怪文書が届いてしまったお客さんへ
謝りに行くということで
本社からお客さんの担当者が青くなって飛んできた。
そう、この怪文書送られたお客さん、
うちの会社のお客さんなんだけど
Sくんの担当ではないのです。
なぜ、このお客さんがバレたのか、そこもなぞ。
いろんな謎に
わからないっす、わからないっす、としか言わなかったSくんはその日、
本社まで事情を説明しに行ったまま戻らなかった。
そして、そのまま半月くらい
会社に来なかったのです。
次回、真実はいつもひとつ！の巻
近日公開。
まだ続くの？