どうもー。今回はDir en greyです。本当なら4月に開催されていたはずのツアーが中止となる中、バンドから嬉しい企画が発表されました。YouTubeにて、GW日替わりでメンバー選曲のプレイリストを生配信するというもの。もちろんファンの生チャットも。楽器チェンジなど現実的な問題はいったん無視して、各々独自で考えたセットリストは全く予想がつかず大いに盛り上がりました。どれも良かったです。
Dirを好きになった当初は近づき難い雰囲気でしたが(2005年ごろ)、最近は本当にファンを想っていることが伝わってきて。SNSでメッセージをくれたりするけど、けっして馴れ合いにはならない絶妙な距離も好き。
そんなこんなで今回は3rdアルバムです。これは最初のイメージが非常に悪かったのですが、年々好きになっていった作品です。
『鬼葬』
01.鬼眼-kigan- ★★★★
作曲クレジットはDir en grey(以降省略します)。冷たいクリーンギターとウネるベースが実におどろおどろしい和ホラーな楽曲。妖しげなボーカルはサビで咆哮を上げる。冷たい狂気さが実に気持ち良い。いきなりブチギレた幕開け。歌詞は花魁?なエログロ系。
02.ZOMBOID ★★★☆
薫作曲。ダイナミックなドラムソロから戦車のような重厚なヘヴィリフ。こちらは近代日本のアングラ猟奇系、ブルセラ通いがゲイになる話。歌詞も相まってサビではグチャグチャに叫び倒す暴れ曲。メロディが無い寂しさはあるけどシャウトが滅茶苦茶にかっこいい。アウトロのドラムサウンドも良い。
03.24個シリンダー ★★☆
Die作曲、「JESSICA」のc/w。グランジ寄りのミディアム、哀愁リフにグチャっとした音像。ベースのゴリっとした質感が心地よい。悲痛な叫びをはじめは静かに、だんだんと感情的に吐き出すボーカルは必聴。
04.FILTH ★★★★★
7thシングル。チューニングが下がり破壊力重視のリフを多用し始めた楽曲。これも頭のドラムが良い。スプラッタホラーな歌詞はメジャーバンドのシングルとは思えないほど猟奇的な描写満載。内臓コトコトソング。途中までは「ZOMBOID」系統の暴れ曲と思いきや、超美麗でキャッチーなサビメロが飛び出すコントラストが最高に気持ち良い。「脈」もそうですが、美しいメロディのおかげで余計にイキきったグロさが演出されているというか。この曲は特に好き。
05.Bottom of the death valley ★★
Toshiya作曲。ベースソロで開幕するグランジ系のミディアム。Aメロなんかはジャジーで穏やかなコードワークが少しお洒落な雰囲気も。しかしこの曲もヘヴィで感情爆発のサビへ。歌詞の情景とドラマチックな展開がリンクし、まるで映画を見ている感覚。サビが好きではないものの、やはりシャウトに込められたエモーションが半端ない。
06.embryo ★★★★★
薫作曲、9thシングルの歌詞違い。残響強いスペーシーなミディアム曲で、ホラー映画のEDのような穏やかさ。ループする暖かい音色のベースが実に効果的で心地よく、キラキラとしたアコギと淡いエレキギターの対比も美しい。ポエトリーリーディングのように呟くボーカルも、サビではこの上なく美しいメロディを咲かせる。本当に良いメロディで…京の優しい声が染みる。
もろに近親相姦もの(しかも父親の子を身籠る)&母親自殺な歌詞は、さすがにアウトなためシングルでは抽象的なものに差替。でもシングル版のほうが言葉の美しさがあって好きです。
07.「深葬」
緩いブレイクビーツ系のSE。加工された声は京かな?中盤への良い場面転換。
08.逆上堪能ケロイドミルク ★★★
薫作曲、「FILTH」c/w。タイトルはグロっぽいですが歌詞は社会風刺的。SEを踏襲した打ち込みリズムに、オリエンタルなギターとファルセットが怪しく絡んだかと思えば爆裂リフを投入。しかしアングラな雰囲気だけでなくサビでは哀愁とエモーションを湛えたメロディが。構成の斬新さとメロディの良さが光る楽曲で、人気もかなり高い。
09.The Domestic Fucker Familly ★★★☆
珍しく京作曲。ノイジーでインダストリアルな雰囲気のある暴れ曲。機械的にループするアッパーパートとビートダウンを繰り返す構成、これが単純にして気持ちいい。歌詞が重いアルバムな分何も考えなくていいし(笑)。ベースのゴリゴリさが最高。
10.undecided ★★★☆
Die作曲。180°雰囲気を変えて、アコギの哀愁あるストロークと京のウィスパーから始まるミディアム曲。サビではバンドが入りエモーショナルに歌い上げる。かなりストレートな失恋系の歌詞も良い。そしてアコギのツインギターによる美しいソロが素晴らしい。この頃のDirってギターはそんなに好みじゃないんですが、このソロは別格。
11.蟲-mushi- ★★
薫作曲。タイトルからしてホラーな暴れ曲かと思いきや再びアコギメインの悲壮なバラード。京のリアルな心情かは分かりませんが、かなり陰鬱に心情を吐露する歌詞。ダウナー過ぎるけれどメロディは良い。ただアウトロ長すぎてあまり好きではない、ギターソロもさほど刺さらないし…。
12.「芯葬」
これも打ち込み系のSE。つなぎ方は好きです。
13.JESSICA ★★★★☆
薫作曲、8thシングル。パンキッシュで非常にとっつきやすく、ハイトーンなサビがギャッチ―で美しい曲。最初は軽いしあんまり面白みないなと思ってましたが、数年前ぐらいからメロディの良さを再確認。大サビ前のメロディが最高で、エンディングまでの爽やかな流れも大好き。最高。
14.鴉-karasu- ★★☆
薫作曲。ここからクライマックス、一気にディープな世界へ引きずり込まれます。歌詞もイッてる。とにかく感情のままに暴れ倒すパートと無機質で妖しいパートが交互に顔をだし、ラストは和を感じさせながらも吐き気を催すほどの狂気渦巻くメロディで終わる。ただただ狂ってる、不快で猟奇的、アングラの極地。
15.ピンクキラー ★★★☆
ラストは高速ハードコアナンバー。ザクザクと切り刻むリフとツタツタリズムで全てをなぎ倒すように爆走。歌詞はどストレートにエログロ。ボーカルは美しい声も多少用いつつ本能のままに、野獣のように叫び尽くす。ボルテージは最初っから全開、レッドゾーンを超えた暴走。シャウトが最高すぎる。
16.「神葬」
打ち込みリズムと美しいピアノのSE。収拾のつかない破壊劇で幕を閉じた物語を無理やりイイ感じに締めてくれる(笑)。ふつうに良い曲。
総評 [お気に入り度★★★★/おすすめ度★★★]
もともとハードで猟奇的な世界観も持っていたバンドですが、前作『MACABRE』の構築美を追求した楽曲構成から、ヘヴィリフで押す楽曲が増えた。ライブツアーでの反動もあったみたいですね。歌詞もヤバいアングラ映画を想像させるような直接的なエログロ描写が増え、耐性が無ければかなり不快に思うような出来。僕も最初はなんでこんな嫌な歌詞なんだろう…と思ってましたが(笑)。救われないB級バッドエンド映画を延々見せられているような。
特にアルバム曲のアクの強さは過去最高。ハードコアなリフの中にも、日本語特有のジメっとした負の世界。最初の拒否反応こそあれど、ハマると戻れないから恐ろしい。そんな中シングル曲はわかりやすさとディープさがいい塩梅でちりばめられ、とにかくメロディが良い。
バンドの音はかなり変わりました。リズム隊は重心が低くなり、ギターも歪みが増え不明瞭ではあるけど、全体としてグチャっとした音像が楽曲を引き立てる。決して各楽器も全体もいい音質ではないけど、綺麗にしすぎないからこその破壊力。本当に最低な言い方ですが、内臓がすべてブチまかれた動物の死体のようなカオティックな音こイメージ。
『MACABRE』以上に人を選ぶもののクオリティは高く、今後の音楽性だけでなく、V系シーンの変革にも多大な影響を与えた作品。
ベストソング / FILTH