燦 ~san~ / Kagrra, | 夕暮れビジュアル鑑賞会

夕暮れビジュアル鑑賞会

V系を中心にロック、アイドル等々の、音楽レビュー処

 どうも~。ついに私の職場も自宅勤務を命じられました。といっても隔日出勤ですけどね。ただ自宅で実務ができる職種ではないので、ほんとに1日仕事1日休みといった感じ、何ともしまりの悪い(笑)。まあゆったりと過ごせるのは嬉しいですけどね。

 

 

 今回はKagrra,を初レビュー。ガゼットと同時期に知ったバンド。ガゼットほどハマらなかってけれど、四季折々、何かあれば引っ張り出して聴きたくなるような、素敵なバンド。満開の桜が散って、新緑が芽吹いたのを見てなぜかKagrra,を思い出したんですよね。

 レビューするのはメジャー2ndアルバム。ここで一つバンドとしての段階を踏んだイメージがあります。ガゼットも最近のラジオで曲を紹介していたりしました、今でも名盤と呼べる作品。

 

 

『燦 san~』

 

01.斑雲 ★★

 怪しげなアルペジオと和太鼓から成るインスト。かと思いきや不穏な語りとメロディが登場。和ホラーというか平安ホラーというか。思いっきりKagrra,らしい始まり。

 

02.幻影の貌 〜燦remix〜 ★★★

 ロック色強いシングル曲。力強いリフとあくまでも浮遊感強く雅やかなメロディのコントラスト、Kagrra,の強みですね。サビではキャッチーながら美しさも携えて。

 

03.卡 ★★★★

 「いびつ」。こちらもハードロックテイストながら妖しいフレーズが重なる。流れるようなサビは高揚感をもたらし、ただただかっこいい。ワイルドなギターソロも良い!

 

04.鬼を憐れむ謳 ★★★☆

 サウンドはさらにハードに、プログレッシブな変拍子。しかしサビでは喪失感強く美しいメロディが顔を出す。各楽器のうねりがカオティックに演出、鬼気迫る音作りは必聴。

 

05.皐月 ★★★★☆

 今作のリードトラック、僕の出会いの曲。ガゼットとの対談番組でPVが流れていたのが懐かしい。

 最強に美しいアコギの旋律とストリングスが優雅に絡み合い、この上なく切なくメロディアスなサビは彼らの真骨頂。タイトなドラミングと滑らかに歌うベースも見事。マイルドながら緻密で繊細な音作り、今聴いてもこの曲は完璧だと思う。

 

06.孑孒 ★★

 「ぼうふら」。7弦ギター5弦ベースの最低音を用いた和風ドゥームメタル。デスボイスこそないものの当時の頭角を現してきた数多のラウド系バンドよりよっぽどヘヴィ。歌詞も歌もホラー感がかなり強い。

 

07.憶 〜燦remix〜 ★★☆

 疾走感あるシングル曲。しかし歌が入るとまったりとした空気が包む。展開が進むごとにどんどんと盛り上がり、サビでは壮大、かつノスタルジックな憂いを帯びて。3分半と短いのにとても密度の濃い楽曲。

 

08.廻 ★★★

 「めぐる」。初めて真が琴を採用した楽曲、後のKagrra,のトレードマークともなりますね。その親和性はすさまじく、やわらかな楽曲に和の煌びやかさを如何なく加え、実に優雅な世界観。緩やかに廻る季節に想いを馳せて浸りたい楽曲。

 

09.誘いの樹海 ★★☆

 かなりVロック色強いハードな楽曲。ドラムの力強さがかっこいい。ヒリヒリした焦燥感に切ないメロディは健在。

 

10.秘灮 ★★★☆

 「ひみつ」。ファンクテイスト強めで軽快、となるとやはりベースが主役。艶やかなメロディとともに、一夜の契りを歌う歌詞も美しい。内容自体はちょっとメロドラマ的なんだけど、普通のバンドじゃこんなに美しい表現はできないですよ。

 

11.沙羅双樹の子護唄 〜燦remix〜 ★★★★

 初期の楽曲のリテイク、シングル曲としてもリリース。やはりアコギが美しく、穏やかなメロディが包み込むワルツ。儚く珠玉のメロディを紡ぐサビは本当に神がかってると思う。久々に鳥肌立った。

 

12.在りし日の微傷 ★★★★

 爽やかなロックナンバーで〆。軽やかな音の中に、少しを湿り気を帯びたメロディが舞い踊る。リズム隊が特に秀逸、一瞬現れるクリーンギターも美しい。歌詞もね、すごく普遍的な言葉使いで随一染みるんですよ。切ない。

 

 

総評 [お気に入り度★★★☆/おすすめ度★★★★

 Kagrra,のメジャー2ndアルバム。意識して和を表現していたバンドでしたが、以前よりもだんだんと自然になってきたいうか。その後の3rd以降さらに洗練されて唯一無二のKagrra,の音楽を作り上げるわけですが、今作よりさらに疾走感あるバンドサウンドと和が調和し一体になってきた印象を受ける。

 普遍的なロックの中にもふわりと心地よい和のフレーバー。正直以前は世界観作り込みすぎて聴き疲れちゃうところもあったんですが、今作の「在りし日の微傷」なんかほんとに気持ち良いんですよね。

 

 一志のボーカルはファルセット多用が好みの分かれるところですが、その癖もしっかりとKagrra,の色へと昇華してるし、歌詞の美しさは唯一無二。楽器隊はほんと良いですよ、無駄がないし美しいです。アコギを多用した音作りながら、ロック的魅力もしっかりと。全員サラッとテクニカルで心地よい。

 

 Kagrra,はメジャー進出によって個人的に好きな良い方向に進化してくれたバンド。「和」を重んじるばかりに、ロックのダイナミズムがおざなりになるでは刺激がないし。もともと激しいめのバンドではあるけど聴き心地はあまり良くなかったのが、メジャーでその辺のバランスが凄く良くなったと思うんです。次作は少し和の比重が下がってポップになったけど、良質な音楽は維持していたし。

 

 本当に、良いバンドでした…。一志が亡くなってから、このバンドがどれだけ独特で、美しい音楽を作っていたかやっと気づかされた。もっと聴き込んでおけばよかったな。

 

ベストソング / 皐月