Hide and Seek
2,077円
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続いてもPlastic Treeを。前回が『ドナドナ』で、ドラマーごとに時期を分けるなら第3期の一作目だったので、とりあえず1期と2期の1作目のアルバムをやってみようかと。どれもあんまり聞いてないしね。
第1期はドラムがTAKASHI(その前にも数人ドラムいましたが)、97年にメジャーデビューを果たし、すぐさま発売された1stアルバム。色んなところでべた褒めされていて、初めて聞いたのは高校生の時でしたが、その時は全く分からなかった…。
今改めてしっかりと聴いたときどんな感想を持つのか、自分自身でも楽しみでこれを書いてます。
あっ、関係ないけど、今年のROCKIN'ON JAPAN FES.で、初めてPlastic Treeのライブを見てきます!!初ロッキン、初プラ、初DEZERTで楽しみすぎる!
『Hide and Seek』
01.痛い青 ★★
淡々と刻むベースからリズミカルなドラム、深く歪んで奥行きのあるギター、か細く儚げなボーカルが乗る、これぞPlastic Treeな楽曲だなと。全編通して淡々と、サビで広がりを見せるのだけど、大きな盛り上がりはなし。最後に暴れたギターソロでフェードアウト。狂おしいほどの悲しみをある種サラッと表現してしまうところが、ほかのV系とは全然違うなと。
だめだ、言い表せる語彙が全くなくて申し訳ない。
02.エーテルノート ★★★☆
音色からリズムから軽快な楽器陣に、相変わらず儚げだけどキャッチ―なメロディが乗る楽曲。これは昔から好きでした。ライブで飛び跳ねる様子が目に浮かぶ。
歌詞は独特の暗さがあるんだけど、それを感じさせないポップセンスはこの頃から変わらず。
03.割れた窓 ★★☆
デビューシングルで割とシンプルなロック、かなり生々しい。全編妖しげなメロディで、サビではキャッチ―ではないけど切なく感情的に吐き出します。シングル感はないけど、一番V系ぽいスリリングさがある曲。
04.クローゼットチャイルド ★☆
ブリブリとうねるベースに、妙に明るかったりヘンテコな音色のギターが乗るトリッキーな曲。サビに至ってもふわふわと踊るようなボーカルも含め、かなり独特でアングラな曲。ライブは楽しそうなんですけどね。
05.スノーフラワー ★★
ザラザラとした歪でマイナーコードをかき鳴らすギターと、タムを駆使して大きなリズムを刻むドラムが印象的。この曲もまた淡々と、感情を抑えゆったりとしたメロディが雪の降る灰色の空を思い起こさせる。それも、しんしんとふる雪というよりは、薄暗い曇天が浮かぶ。
全体的に病的な歌詞で、最後にひらがなになるのも含め少し怖いけど、美しい。
06.Hide and Seek ♯1
1分強のインスト曲。ノイズ系のギターと残響が深いドラムが、前曲の余韻を強めてくれる感覚。
07.トランスオレンジ ★★★★
スノーフラワーとは逆にメジャーコードをかき鳴らすギター、アコギが軽快なポップロック。サビも優しくメロディアスなのだけど、裏腹に歌詞は完全に飛び降り自殺。明るい口調でサラッと重い告白されたらすっごい戸惑うと思うんだけど、まさにそんな曲。気分が上がるようで歌詞見ると滅入る(笑)。タイトルも怖い。でも、プラらしいナイーブさとポップネスが融合した良曲
08.まひるの月 ★★★★☆
この曲もポップだけど、シンプルなリズムに浮遊感あるギターが美しい。穏やかだけど流れるようなメロディが秀逸。2回ほどリメイクされた曲でもあるけど、どのバージョンも良いです。
前曲に引き続きこの曲もまた歌詞が重い…。死を明示してはいないけど、最後にひらがなになるあたり、彼も死んでしまうのかなと。もしそうでなくても胸が苦しくなる、おかしくなってしまう程の主人公の痛みが伝わってしまう歌詞、すごいな。
09.水葬 ★★★
もうタイトルからして嫌な予感しかしないですが…やっぱりこれも歌詞が重くて病んでる。歌も演奏も水面を漂うように穏やかで淡々と。優しさすら感じるほどに。唐突に、ソロやラスサビのギターが狂気を孕んで突き刺さる。
後半三連発、聴いててすっごい落ち込んできてます。
10.ねじまきノイローゼ ★☆
一転してハードで、歪んだボーカルがなんともクレイジーな曲。メロディはあってないようなもので、たぶんひたすら頭振ることだけ考えればいい曲。たぶん
11.Hide and Seek ♯2
#1と感触は似てるけど、エンドロール感が強い。うっすらと聞こえるボーカルとギター、呟きがちょっとホラー。
総評 [お気に入り度★★ / おすすめ度 ★★]
きつい。
曲はね、元々Plastic Treeのメンバーが影響を受けたバンドとかほとんど聞いたことないし、メリハリのあるわかり易い音楽ばかり聴いてるから、好みなのが少ないのはしょうがないけど、ちゃんと聴くと歌詞含めすっげー重い。エログロじゃなくて、精神的にくる、じわじわと。湿度95%な感じ。陰鬱。特に後半、好きな曲が出てきたなーと思ったらこれだもの。
それを表現する楽器陣とボーカルは、この頃から完成されてる(ドラムは違うけど)。がっちりとハードに固めつつテクニカルで色彩豊かな演奏に、あの不安程で癖のある声が乗るアンバランスさが絶妙。
特にギターのナカヤマアキラはこの頃から上手い!ハードロックが根底にあるのだろうけど、エフェクターやフレーズそのもので曲に色付けするのが抜群に上手い。去年からずっとアキラにわくわくされっぱなしです。
このアルバム、全曲が作詞:有村竜太郎、作曲:長谷川正ということで、彼らそれぞれの原色がそのまま混ざりあったアルバムなのかな。これ以降どんどん洗礼されてキャッチーになった今のほうが絶対におすすめできるし、好きなんだけど、この原色はこの頃のアルバムじゃないと体感できないかもしれない。
高校生の頃はこの原色に飲み込まれて打ちのめされただけだったし、今も打ちのめされてメソメソしてるけど、このアルバムの魅力が理解できるようにはなった。確かに、絶賛されるだけのパワーがある。強すぎて合う合わないがはっきりしてるだけだ。
だってこんなに自分の感情を無理やり動かされる音楽久々に聴いたもの。
【追記】
実家に帰った時2005年くらいの「ROCK AND READ」というインタビュー紙を読んだんですが、実際この時の竜太郎はかなり病んでいたそうです。ようやく3rd「Parade」から歌詞を歌詞として書けるようになったと語っています。そこで潰れずに、音楽を続けていてくれて本当にありがとう。
ベストソング / まひるの月