REAL ME -212ページ目

やらなきゃいけないことが目の前に迫ってるのに、手を着けることが出来ない。
自分の能力の限界を知るのが怖い。
何故か無駄に高く育ったプライドだけは何を失おうと捨てることが出来ない。

いつまでも限界は未知なままにしておきたい。
だからこれ以上自分を試せない。
今の躊躇いも何もかも全て精神的な弱さから来るものだって分かる。
あたしはどうすればいいんだ。

最後



「もうこれが最後だから壊れてもいいんです。」

彼は強い意志を持った目で医者を睨むように見つめていた。
そして縋るような口調で、「注射して下さい。お願いします」と言った。


私は彼の様子を真横で見ていて無性に泣きたい気持ちになったけれど、何とかそれを堪えた。
そして祈った。
彼の肩がもう少しだけ壊れませんように。

神も仏も存在しない中で、何に対して祈っているのかも分からなかったけれど、ただ祈った。

彼のような人を見ていると改めて思う。
勝負事の勝敗ごときで人生の価値は計れない。



どうか彼が彼自身の“最後”を納得のいくカタチで終えることが出来ますように。

今は名前さえ知らない彼が有終の美を飾ることを少しだけ祈ろう。






咳の仕方がおかしい。

「咳の仕方がおかしい。肺癌かもしれない。検査してみないと分からないけど。」

彼女は動揺した様子もなく静かに言った。

私は他人だけれど、それが私だったらいいのにと思った。

私がこうして風邪だと勘違いをして咳をしている間に、彼女の肺から癌細胞が転移して私の肺で育っていってくれたらと思う。


そしたら風邪だと勘違いしたまま手遅れになって死ねるし。
もちろん延命処置なんて必要ない。
抗癌剤の副作用に苦しめられることもない。


私は自然に死ねるまであとどのくらい生きてなきゃいけないんだよ。


代われるなら代わりたい。
もっと生を完うしてくれる誰かと。