夫の携帯電話は、契約者を私にして継続して使えるようにしている。夫の電話番号が、解約後に他の人に割り振られ、知らない人の電話番号になることを受け入れられないから。



夫は両親と仲が悪く、祖父母に育てられたと昔から言っていた。結婚した時、祖父はすでに亡くなっていたが、祖母は一緒に暮らしていた。


夫と結婚してから、1年経たずに祖母が亡くなった。

祖母の重し?が無くなり、歯車がおかしくなって、抑えの効かなくなった夫の両親は私たちへの支配を始めた。最初は支配だけだったがイジメも加わり、そのイジメがヒドすぎたこともあり、途中から夫は私の味方をするようになった。夫が私の味方をすることによって、夫の両親は、私だけでなく夫にまで暴言や嫌がらせをした。


ついには、夫が自分で図面を描いて建てた私たちの住んでいる家までを乗っ取った。私たちはローンだけを抱え、自宅から追い出され、夫の両親とは連絡を断った。



これは、夫が病気になるのより、ずっとずっと前の話で、夫は自分の両親がしたことを許せず、「実家には帰らない。両親にも会わない。一度でも帰ったりしたら、あの両親のことだから、今まで以上に嫌がらせが増す。家を出た意味がない。」と言って、最後まで実家には帰らなかった。


夫の気持ちを尊重し、私たちは、実家近くにある祖父母のお墓にお参りしていたが、お墓の近くにある実家には行かなかった。



私たちは、住めない家のローンを支払いつつ、自分たちの住む賃貸住宅の家賃を支払っていたので、生活はとてもとても苦しかった。だけど、夫と子どもたちとの落ち着いた生活は、お金では買えることのできない穏やかで幸せな生活であった。



夫から夫の両親に連絡を取ることはなかったが、夫の父親からはショートメールが届くことがあり、必要事項についての返信はしていた。

夫の母親からは、恫喝するような留守電が残っていることが続き、夫も苦しさに耐えきれず、自分の母親からの電話を着信拒否にした。


着信拒否したことにより、夫の母親からの恫喝電話はなくなったが、息子と連絡が取れないと夫の母親が警察に相談するので、警察からの電話が増えた。

夫はこちらの事情を説明し、警察も理解してくれた。しかし、相談があったから確認しないと言うこともできないのでと、謝りながら警察は電話をしてきた。



夫は昨年8月に肺がんのため亡くなった。


夫の両親はお通夜にもお葬式にも来なかった。夫の父親と話したとき、夫の母親は要介護だと聞いていたので、夫のお葬式に来ないことも私なりに納得していた。だから、お葬式が終わった後、私なりの最後のケジメとして、こちらから挨拶に伺った。


伺った日は、夫の父親が指定した日で、夫の母親がデイサービスで自宅にいない日であった。

そして、伺ったときに、迎い入れられた家は、私たちが追い出され、ローンだけを払わされていた夫の建てた私たちの家だった。



夫の両親からしたら、自分たちの言うことを聞かずに、私たちが勝手に家を出ていったと思っている。田舎の家で、息子夫婦に出て行かれることは辱めであるため、親戚や近所などには、夫が帰ってきていて仲良いふうに振る舞っていた。



夫は肺がんになり、亡くなった。


夫の父親は、近所や親戚などに夫が亡くなったことを伝えていない。さらには、夫の母親も亡くなったことを伝えていない。


夫の母親の場合、知らないほうが幸せであると私なりに理解はしているが、出ることのない夫の電話に今も着信を残し続ける夫の母親の気持ちも考えると、今までされてきた嫌がらせや支配による苦しみや憎しみは別にして、苦しくもなる。




夫と私は、ただただ穏やかに暮らし、子どもたちの成長を喜びあい、普通に、本当に普通に平凡に暮らしたいと願っていた。それは昔も今もこれからも変わらない。