息子の膀胱炎は日ごとに悪化してきた。



「もうめっちゃトイレの頻度上がってる。

血尿も濃くなってる。残尿感爆上がり」


だと言う。


しかし

水を飲んでこれ以上の悪化を防ぐしかないそうだ。



下痢もずっと続いていて

膀胱炎による不快な症状が加わった。




それでも息子は


「それ以外は元気」


と言う。



たぶん息子も私も感覚が麻痺というか


「元気」の基準が

白血病になる前とは変わってしまっている。



以前なら

下痢が1ヶ月も続いたらそれだけで大騒ぎしていただろう。


さらに

膀胱炎にまでなってしまったら


そんな状態は元気とは程遠いと思ったことだろう。



しかし

大量の抗がん剤や放射線を浴びて

移植をした息子は


高熱、嘔吐、下痢、頭痛、ひどい口内炎などが一気に押し寄せてきてまさに地獄を味わった。



そのような状態をくぐり抜けた息子にとっては下痢と膀胱炎があるくらいは「元気」なのだ。



このような

病気になっていかなかったなら

知り得なかった感覚というのを体得したことは息子や私たち家族にとって大きな収穫だと思う。



もちろん息子は

移植をしたからもう安心、ということはまったくなく


まだまだ合併症にも長期にわたり注意が必要で


再発の可能性もある。



白血病を告知された当初は


息子の行く末を思うと苦しくなることが多かった。



けれど今はなんとなく


自分にはこういう試練が待っていたということなのだと思う。



考えつくかぎりでは

息子が白血病になることは


私にとって一番嫌な試練だけど


そうなることが決まっていたのなら仕方ない。



どんなに苦しくてつらくて嫌なことがあっても決して誰かや何かを恨まず腐らない。



それができるようになることが

私に課された人生の宿題なのかも

と思う。



そうして


何があっても腐らず明るくしていれば

何かごほうびがあるはずで


それは一体どんなことだろうか、

と心の片隅でちょっと楽しみにしている自分がいる。