キーボードの持ち込みを

許可されなかった息子の暇つぶしは

ネットを見るくらいしかないようだった。



それも

もっぱら美味しそうな食べ物探しだ。



病室にいながら

市場ではどんなものが売られているのか

見られるなんて


つくづく

便利な世の中になったもんだと思う。




いろいろ検索するうち

息子は「完全メシ」なるものを見つけた。



カレーやカップ麺、スープにスナック菓子

と種類はさまざまあるのだが


そのどれもが一見ジャンキーなものだ。


しかし

「完全メシ」というだけあって

一食分に必要な栄養素がバランスよく配合されている。


そのため

それはもはやジャンキーではなくなっている。




どうせ食べるなら

栄養のバランスの良いものを食べたほうが

体にいいから、と息子なりに考えたのだろう。


「完全メシ」の○○がほしい、

とたびたび言ってくるようになった。



しかし

それはスーパーに行けば常にある

というものではなかった。


特設コーナーに

新商品として並べてあって種類も限定されている。


私は

息子がほしいと言うので


スーパーに行くたびに「完全メシ」の商品を探して買うようにした。



もしも息子が気に入ったなら

いろいろな種類が詰め合わせになっている

セットをネットで注文しようと思っていた。




うちがこれを買い求める理由は特殊だ。


食べられるものが限定されていて

なおかつ栄養バランスも考慮したい。




けれど病気ではない普通の状態の人は


ジャンキーなものを食べたい

と思ったとき


それだけでは栄養素が不足するから、

とこれを選ぶのだろう。



これなら

食べ物に関して意識の高い人が


ジャンキーなものを食べることに感じる

罪悪感はかなり軽減されると思う。



ジャンキーなものを食べたい欲望


栄養面のバランスを気にすること


この矛盾する二つのことを

一挙に解決できますよ、というのが

この商品の売りなのだ。




結果的には

息子の舌はまだ「完全メシ」の

いずれの商品の味も感じることができなかった。



味せんから、と息子が返してきたそれらを


大してジャンキーなものを食べたい

と思わない私は


これは栄養のかたまりなのだ、と言い聞かせながら家でもそもそと消費した。