移植から11日め


とうとう息子は声が出せなくなったらしい。


「何しても喉が痛い、ネバネバのだ液が絡んでしゃべれんくらい」


とLINEで言ってきた。


先生は


「もう声が出せないくらい痛いんですけど

薬は飲んでもらわないとだめなので強い痛み止めを使って飲んでもらってます」


と言った。



そしてこの日

私はちょっと前から気になっていたことを

息子にたずねた。



洗濯ものにパンツが少ないことだ。



すると息子は


下痢がひどくて不意に便をもらすことがあるから病院で紙おむつを買っている、と返信してきた。



そうだったのか。


パンツを履き替えてないのではなくてよかった。




唐突に息子が謎かけを出してきた。


「二度と飲みたくない薬と掛けて

今一番楽な症状と解く」



ちょっと考えてみようかなと思ったが

私は薬のことなんてまったく知らない。



きっと

考えても一生わからないと思い


「その心は?」


とすぐ聞いた。




「どちらもタンナルビン(単なる便)」


タンナルビン=チョークの味する不味い薬


単なる便=下痢が一番なんともない


ということらしい。(考えなくてよかった)



便をもらすほどのひどい下痢なのに

それでも下痢が一番ましだなんて、それ以外の症状がよっぽどしんどいのだなと思った。




それにしても。


移植後のこの状況で謎かけをしてくるとは。


熱があって頭が痛い、だるい

口内炎がひどくて食べられない

痛みで声が出せない

便をもらすほどの下痢


これらに苦しみながらも

ユーモア精神を保っていられる


そのことに驚いている私だ。



息子は前からこんなに強かったのか


それとも

病気になってから強くなったのか。



あるいは

強かったが今まではそのことを発揮する場面がなかっただけなのか。



いずれにせよ


息子は強い。


もう私がいなくても大丈夫。



そう思った。