夕方になって


息子がほしいと言ったレモンジュースと

着替えを持って病院に行くと


廊下で先生に会った。



「先ほど無事に輸注終わりました」


「今はちょっとしんどそうですけど

お父さんの造血幹細胞を十分な量入れられました」



ひとまずホッとして


ありがとうございました、と言った。




「写真送られてきてませんか?」



え、写真?と聞き返すと


「輸注のとき写真とってほしいと言われました。ピースされてましたよ」



あら、そうですか、後で見てみます、と


スマホを家に置いてきた私はそう返事した。



写真を早く見たくて


家についてすぐにスマホを確認したが

息子からは何も送られてきていなかった。



先生が

しんどそうと言ってたことを思い出して

胸がきゅっとなった。




がんばったね、とだけ送った。





翌日の昼過ぎに

例の写真が送られてきた。



上から造血幹細胞の袋が吊り下げられていて


管を通してベッドに横たわる息子の体に注入されている。


まさに移植の最中の光景だ。


設置されたモニターの横で


息子が笑顔でピースをしていた。



こんなときまで

無理して笑わなくていいよ……



心なしか弱々しく見える笑顔は


家族に心配をかけないように、という

息子の思いやりだと感じた。



さぞ体がしんどいだろうに


そんなときでも

家族のことを気遣ってくれる息子の優しさを

思うと胸がつまって涙が出てきた。