抗がん剤4日めの朝に


「しんどい?」


と聞いた家族LINEに


息子が返信してきたのは翌日の午後だった。



「しんどい」


とだけ言ってきた。


おそらく

返事をしていないことが気になっていて

無理をして一言だけでも返信してくれたのだろう。



ごめん、と思った。



これからはもっと

体調の悪い日がつづくことになるのだから


いらぬことで息子に気を遣わせないために

こちらから

むやみに問いかけるのはよそうと思った。




しんどい、と言った息子に


娘は


「身体が頑張ってる分しんどいと思うけど

この先で良くなるから。応援してる」


主人は


「ごめんな。辛抱してな」


と返していた。


辛抱、というのは主人の口癖だ。



口癖というのは

その人がそれまでの人生で積み重ねてきた

経験や感情から生み出されたものだ。


それを

とやかく言うつもりはないが

ごめんな、は違うと思う。


主人が

息子をこんな目にあわせているわけでも

主人のせいで息子がしんどいわけでもない。



「ごめんな。辛抱してな」


という主人のLINEの後に私は


「誰も悪くない」


と返した。



翌日の夕方になって


「なんか返信がこわい笑」


と息子がLINEしてきた。



娘が「今どう?」と聞いたら


息子は「ちょっとまし」


と答えていた。


息子のLINEに「笑」が入っているだけで

ちょっと安心する。



前処置の経過日数に比例して

体調も一直線に悪くなるのかと思えば

そうではないようだ。


人間の身体はやはり機械ではないので

良かったり悪かったりするものなのだ。



明日はいよいよ移植の日だ。