息子が初めて

不調を訴えてきたのは

抗がん剤を始めてから3日めの夜だった。



「今日なんか熱あったけどすぐ引いた」


「食欲あんまなかった」


と家族LINEで言ってきた。



こういう時かける言葉が見つからない。



「食欲なくなるよね。

ゆっくり休んで。おやすみ」


と主人が返していたので

私は何も返すことはしなかった。



翌朝


「しんどい?」


とLINEで聞いた。


しんどいに決まっているけど

聞かずにいられなかった。




この日はじめて息子から返信がなかった。



この日は抗がん剤4日めで

次の日からは放射線を2日間だ。



LINEで返信することさえ

ままならないほど体がつらいのに

放射線を浴びたりして大丈夫だろうか。


前処置の段階で

息子はやられてしまうのではないだろうか。



心配はつのるばかりだ。



けれど

これはほんの序の口だ。



ここで私が負けてはいけない。



何に負けるのか。



つらい、悲しい、といった感情にだ。



感情がわき起こるのは仕方がない。



けれど

その感情がうかがい知れる様子でいるか

どうかは自分で選ぶことができる。



こんなときは

無意識にうちひしがれた表情になったり


知っている人に弱気なことを言ったり

しがちになると思う。



でも私はそうはしたくない。



人生は自分の力ではどうにもならない

つらい悲しいことがあって当たり前、と


不条理であることを受け入れたうえで


つらい悲しいことがやってきたら


その感情はそのままに


自分で変えられる部分

表情やどんな言葉を発するかということを

感情にそぐわないものにするのだ。



それが

私の考える負けないということだ。