息子は

移植前検査をすべてクリアし


感染症の原因になる虫歯や痔なども

問題なかった。



息子を担当してくれる

看護師さんチームも決まり


しんどいときにどのような対応を

してほしいか聞き取りがおこなわれた。



積極的に声をかけてほしいか

なるべくそっとしておいてほしいか

というようなことだ。



息子は予想通り

積極的に声をかけてほしいと言ったそうだ。



親としてはそのほうが安心だ。


かりに息子が

そっとしておいてほしいと言ったとしても


うるさがられてもいいから

つねに大丈夫?と聞いてほしいくらいだ。



こうして

着々と移植の準備が整っていく中


私は

息子が移植をやりたくないとかこわいとか

思っているような素振りがないか

注意して様子をうかがっていた。


もしも

息子の気が変わって


移植をやりたくない、と言ったときは


嫌ならやらなくていいよ、

と言うつもりだった。




主治医にも話したが

私がその立場なら絶対移植はやらない。


けれど

これはあくまでも私の考えであって


私から息子に

こういう考えもあるよ、

と言うことは反則だという気がする。



だから

私からは何も言うことはしないが


息子が自分で考えて

移植をやりたくないという考えに至ったのなら

それを認めようと思っていた。




主治医が言うように

移植をしなければ1年以内に再発して

命を終えることになるかもしれない。


それでも

そのことをわかったうえで移植をやりたくない

と言うならそれでもいいと思った。



移植による苦痛や

ずっとつづくかもしれない病気を抱える生活を拒んで


今の元気な体で短くても穏やかな生活を選ぶということだ。




死に方は生き方でもあるからだ。


すべて自分で決めるのがいいと思う。




そんなことを考えているうちに

移植前処置の日が近づいてくる。


前処置の抗がん剤が始まったら

もう後戻りはできない。


やめると言うことができるのは

この数日のうちだ。




けれど息子はとうとう

こわいとか嫌だとか言うことはなかった。




息子の首にはカテーテルが挿入された。