説明がひと通り終わった。




前処置の副作用

移植後にやってくる急性あるいは慢性GVHD

その他さまざまな合併症

再発や悪性二次腫瘍



移植をすることでいったい

どれだけの苦痛と心配を抱えていかないと

いけないのだろう。



骨髄バンクに合う型がない息子は

生着不全を起こせば

助かる見込みはまずないだろう。


合併症はどれも

重症になれば致命的となるものばかりだ。




もしもドナーの細胞が生着したなら

もともとの白血病で断たれたはずの命は

いくらか延びるのかもしれない。


しかし


治療関連の合併症や

再発、悪性二次腫瘍が発生すれば


白血病が

他の病気に置き換わっただけで

息子は苦しみつづけるのではないか。



そんな生活になる可能性があっても

移植をした方がいいのだろうか。



今の元気な息子を見ていると

余計にそう思えてくる。



今の穏やかな生活をつづけさせてあげたい。


移植をさせたくない。



この場で誰一人として

考えていないであろうことを

私一人が思いつづけていた。




来たときから

どんより曇っていた私の心は


帰る頃には

真っ黒な雲で覆い尽くされていた。



部屋を出て

息子と別れてから

声をあげて思いきり泣きたい気分だった。



ちょうど

白血病と告げられたあの日のように。



主人も同じ気分じゃないだろうか。


ふと

横にいる主人の顔を見ると


意外にもさっぱりした表情をしていた。



説明を聞いているときは

資料を見て難しい表情をしていたのに。



あの話を聞いて

なんでそんなに明るくしていられるの?



楽観的な私でさえこんな気持ちなのに。


いつもは悲観的な主人の予想外の反応に


私は調子を狂わされてしまった。