めずらしく息子が質問した。



前処置の抗がん剤の副作用で

全身の粘膜がやられて下痢や口内炎になる

と先生が言ったときだ。



「よく口内炎が癖みたいになってて

しょっちゅう口の中にいっぱいできてる人がいるけどそんな感じですか」




「いやいや、全然ちがいます。

個人差はありますが、だ液を飲み込むのも

痛くてできないほど、ひどいものです」


「もう想像を絶するほどの……

飲み込むことができずに洗面器にだ液を

垂れ流し状態になったりします」



。。。


半世紀以上生きてきたが

そんな口内炎、見たことも聞いたこともない。


もはや口内炎のレベルじゃない。



よだれを垂れ流し状態なんて

聞く前は想像もつかなかったが


抗がん剤は想像通り恐ろしいものだ。




しばらくして

また息子が言った。


「そう言えば僕って血液型変わるんですか」



「ああ、そうそう。変わります。

だから輸血のときは成分によって

血液型を変えないといけないんです」



赤血球は長い期間生き延びるから

こっちの型で…


と言いながら

先生は輸血する型を紙に書いて確認していた。



たしかにそれは

重々確認が必要な重要事項だ。


そこにつながる質問をするなんて

息子よ、今のは有意義でよかったよ、と

心の中でほめたたえた。




「じゃあ血液型占いで見るとこ変わるんや」



となりで息子がつぶやいていた。