息子が

ポテトとナゲットが食べたい、と言った。


これも

食べたいものリストの上位にあったものだ。



息子は店には行けないので私が買いに行く。



子どもが小さかった頃


食べたい、と言われて

買いに行くことはあったが


私自身はファストフードを食べないので

子どもが大きくなると

店に行くことはなくなってしまった。



今また

20歳になった息子のために買いに行く。


店に行くのは十数年ぶりだ。




息子はポテトと

期間限定味のナゲットをほしいと言った。



オーダーシートに

息子が言っていたナゲットの写真があった。


それを指さして

これください、と言うと


レジにいた店員さんが


「売り切れました」


「あ、いや、お昼は販売してないんです」



どっちなの?



「じゃあ夕方以降ならあるんですか?」

と聞いた私に


「それは販売期間が終了してます」


と横から別の店員さんが答えた。



いったいどれが本当なんだ?



このやり取りで

店にたいする不信感が募った。



息子の食べるものは

揚げたて限定と言われている。


揚げたてをお願いします、と言っても

面倒がって

作り置いたものを渡されはしないだろうか、と心配になった。



それは困る。


息子の命がかかっているのだ。



「免疫の低い人が食べるので

揚げたてをお願いします」


ただ単に

私が揚げたてをほしいだけだ、

と思われないように

揚げたてをほしい理由を言った。



「揚げたてオーダー入りまーす」


と声がして

揚げものをする音がし始めた。



ちゃんと作ってくれてる。よかった。



ナゲットははじめは

10個買おうと思っていたが


息子の言った期間限定味がなかったため

普通のナゲット5個だけにした。



できればあまり沢山は食べてほしくない。


かといって

食べてはだめ、と

息子の楽しみを奪うことはできない。




結果的には

5個でちょうどよかった。


息子は

病気になってから

食べ方と食べる量がまともになったのだ。


以前は

ポテトLサイズを2個とナゲット15個を

まるで飲むように平らげていた。


しかし

入院してから病院で出される食事を

よく噛んで食べるようになった。


そのほうが

便通など体調がよくなったと言う。


よく噛んで食べると

満腹中枢が刺激されてお腹がふくれるので

食べる量も普通になる。



めちゃくちゃいいことだ。



けど息子は言う。


「でもオレ、こんなんやったら

友達と飯食いに行けへんわ」



確かに

息子の友達も以前の息子のように

すごい量を早食い大会みたいに食べる。


今や

息子は家族の中でさえ一番食べるのが遅い。



はたして

友達はそんな息子をどう思うのだろうか。



理解して受け入れてくれるのか

あるいは離れていってしまうのか。



どちらでもいいのだ。



いずれにしても

息子にはその時々に彼にとって最適な仲間がそばにいてくれることにちがいない。




この世は無常だ。