退院時

330だった好中球が

5日めに750になっていたということは


単純計算して

1日70ずつ増えたということになる。



その計算でいくと

それから3日後の通院日には

960くらいになっているのかな、などと


いかにも素人くさい

意味のない推測をしてしまう。




3日後はすぐにやってきた。



「どう?おうちで羽をのばせた?」


「はい。やっぱ家はいいですね」


息子が笑顔で答える。



そうだよね。


私だって

やっぱりあなたがいてくれる家がいいよ。





「今日の血液検査の結果をみると

好中球の数は1040でした」



「…明日入院しようか」


パソコンの画面にうつるデータを

見ながら主治医が息子に言った。


「はい」


息子がうなずいた。



ああ、もう1000を超えたのか。


で、明日入院。


いつも急だ。



「入院はお昼からでもいいですか?」


せめて

朝ごはんくらいゆっくり食べてから

行かせてやりたいと思い私はたずねた。



「いえ。骨髄検査をしたり、体に管を

入れたりするので朝に来てください」




仕方ない。


治療のためだ。



最初の治療計画通りに進んでいたなら


この時期はすでに2回めの抗がん剤を

終えて白血球が増えてきたくらいの時期だ。



それがまだ

2回めの抗がん剤を始めてもいないのだ。


ただでさえ遅れているのだから


ようやく

次に進めることを喜ばないといけない。




またしばらく

息子は家のごはんが食べられなくなる。


今日の晩ごはんは

息子が食べたいと言うものを作って

あげようと思い何がいいか聞いてみた。


「うーん……バンバンジーが食べたい」


「あ、生姜焼きもいいかなー」


「でもやっぱバンバンジー」



晩ごはんは

バンバンジーと生姜焼きの両方を作った。