ある日

主人が言った。


「退院させてよかったな」


「毎日楽しそうやし」



その通りだった。


息子は

以前と同じように冗談を言って笑ったり


ごはんをもりもり食べて


元気そのものといった感じで


息子が帰ってきて


家族も犬もみんながうれしかった。



見た目には元気そのものといった感じで


病気であることを

忘れてしまいそうなくらいだった。



けれど

息子には退院して5日後に

病院の外来予約が入っていた。


そのことが唯一

病気であることを思い出させた。



息子の退院期間は

だいたい何日くらいという目安がない。


だいたいの目安はないが

再び入院する明確な基準がある。



好中球の数値だ。


これが1000を超えたら入院して

2回めの抗がん剤治療をするのだ。



一時退院するときも

好中球の数値が500を超えたら、

という基準があった。



退院時

息子の好中球は

その基準以下の330しかなかった。



退院してから5日めの通院日。


息子の様子からすると

もう500は超えているのではという気がした。




はたして

この日の好中球の数値は750だった。



よかった。

順調に増えている。



人に言うと

フッと鼻で笑われると思い言わなかったが


こんなに好中球が増えたのは


家にいることで

息子の気持ちが安らいだことと


私が頑張って

栄養バランスを考え愛情を込めて作った

ごはんを食べたからだ、と思った。




「この調子だともうすぐ1000に近く

なりそうですね」


「抗がん剤をするタイミングを

逃したくないので次は3日後に来てください」




好中球が増えたのは喜ばしいことだが


また息子が入院してしまう

と思うと増えてほしくないような

複雑な気持ちになった。