翌朝

息子を迎えに行った。


ナースステーションに声をかけると


今、準備されてるので

こちらでお待ちください、


と看護師さんが談話室に案内してくれた。


「お薬のことはご本人が

しっかり管理できる状態ですので

ご本人に説明してあります」



薬は種類が多く

飲む回数もまちまちなのに

あの息子に「しっかり」管理なんて

できるんだろうか


と不安がよぎったが


私はそれよりも気になっていたことを

質問した。


「食事に関する注意事項はありますか?

食べてはいけないものとか…」


「お刺身はだめですけど、

野菜や果物は生で食べてもらって

かまいません」


そのほかの生活に関することは

「退院後のてびき」の紙に書いて

あります、と言って看護師さんは

行ってしまった。



息子がきた。


久しぶりに見る服を着た息子だ。


脱毛したときに備えて買った帽子を

かぶっている。


脱毛用の帽子をかぶっていても

私服を着ていると病人には見えない。


こういうファッションの人

街にたくさんいるな、という印象を受けた。




主治医も一緒にきている。



息子が真っ先に質問した。


「マクドナルドは食べていいですか?」


「いや、やめたほうがいいですね」


「じゃパン屋さんのパンは?」


「それもよくないです」


主治医によると


作ってから常温、あるいは保温した

環境で保存される間に菌が繁殖するからだという。

殊にパン屋さんでは、お客さんの息がかかる

くらいの距離にパンが陳列されている。


その意味ではコンビニのパンのほうが安心

だという。


息子にとって大事なことは

発酵バターや国産小麦を使った良質の、

とかいうことではなく、あくまで保管状態がどうかということなのだ。




ということは。。。




「息子さんには出来たてを食べて

いただきたいんです」


「私たちは作って冷蔵庫に入れておいた

ものをチンして食べたりしますが

息子さんはそれでお腹をこわす可能性があります」



作り置きができない。



それは大変だ。