主治医は説明の中で

息子の白血病の型がどれであっても

最初に施す治療は共通しているので

その抗がん剤治療を早く始めたい

と言った。


抗がん剤治療を始める前に

精子保存を済ませる必要があり

この説明を受けたのが土曜日で

精子保存の病院に行くのが月曜日、

火曜日から抗がん剤を始めることになった。


この日程を決める際に

「早く抗がん剤を始めたい」

と主治医が何回も言っていて

よほど急がないと危ないのだな、と

早く受診させなかったことが

今さらながら悔まれた。

病院に行かせなかったばかりか

私は白血病の息子を

犬の散歩に行かせたりしていた。

バカだ、私は。

(息子よ、ほんとにごめん)と心の中で謝った。


月曜日の精子保存の病院には

私と主人、娘が付き添って家族全員で

行くことになった。というのはこれを境に

息子とはしばらく会えなくなるからだ。


この病院では

入院して一週間経った患者は面会できる

システムだ。ところが主治医が

「抗がん剤をして数日したら

息子さんにはクリーンルームに入ってもらおうと思います」と言った。


私はクリーンルームというのが

どういう部屋かを知らなかったので

なんとなく

ガラス張りで中に入る人も防護衣のような

ものを着ないといけない無菌室の

ようなものをイメージした。

そんなところに入らなければならない

息子はよほど重病人なのだ、との思いを

いっそう強くした。


クリーンルームにどれくらい

入っているのか知らないが

1~2週間の話ではないだろう。

そんなに長く息子と離ればなれに

なったことはいまだかつてない。


息子は

来年は海外留学したいと言っていたから

そのとき初めて離ればなれになるのだな

と思っていたが

まさかこんなことでその機会が

やってくるとは思いもしなかった。