息子が入院して少ししてから

医師による説明があった。

このときには主人も病院に駆けつけた。


朝、息子とタクシーで病院に向かう

ことになったときから

実家の母親のもとを訪れていた主人に

逐一LINEで経過報告をしていた。


昼すぎ家に戻った主人は

お昼ごはん食べた?などと

私のことを心配してくれて

自分も病院に行こうか、と言ってくれていた。その心遣いはうれしかったが

ごはんなんかまったく食べる気に

ならなかったし、来てもらったところで

ひたすら待つだけなので

医師からの説明があるまでは

家にいてもらっていた。


説明は息子の病室で

息子と主人と私、3人で聞いた。


抗がん剤を数種組み合わせた

寛解導入療法を約1年行うので

大学は休学してもらうことになる

と言われた。

息子は来年、海外留学したいと言っていた。

それが留学なんてことはおろか休学だ。

健康な人が送る、いわゆる普通の生活が

できなくなるのだと思うと同時に

息子が楽しみにしていた来月の成人式も

出られないんだな、と胸が痛んだ。


今日は土曜日でできる検査に限りがあり

今は断定できないが移植が必要かも

しれないこと。


抗がん剤で不妊になる可能性があるため

精子保存をすすめるということ。


だいたいこのような説明を受けた。

息子の前では泣いてはいけない

と自分に言い聞かせていたが

説明を受けている間は

悲しい、つらい、とか一切の感情は

不思議と沸き起こってこなくて

泣きたいとも思わなかった。


おそらくそのときは

医師の説明をしっかり聞き

正しく理解することに意識を集中して

いたことが感情の噴出を

押しとどめていたのだろうと思う。


説明が終わり

息子を病室に残して主人と二人

廊下に出た。

とたんに涙が溢れ出た。

エレベーターに向かう途中にある

ナースステーションを通るときには

どしゃ降りの雨がフロントガラスに

降り注いでいるみたいに

涙で視界がぼやけて何も見えなかった。