息子は救急センターで

血液検査や心電図などいくつかの

検査を受けた。


血液検査をする前

私も息子と一緒に診察室内にいたのだが

救急医が言った。

「血液採取をするときに血を見て

卒倒する人がいるので外に出てもらう

ことにしています」


私は血なんか見てもぜんっぜん平気やけど、

と思ったが

理由はこじつけでとにかく外に出てほしい

と言っている感じがして

素直にしたがった。


血液採取を終えた息子が

廊下で待つ私のとなりにすわり

ややひそめた声で言った。

「親の前では聞かんようにしてるん

やろうけど、性病にかかってる可能性は

ないか、て聞かれたわ」


なんだ、そういうことか。

相手が大学生ならではの質問て感じだ。


診察室の中で救急医は息子に

「大学生?どこの大学?」

と質問して

息子が大学名を答えると

「すごいな」

と言ってくれたそうだ。

息子の大学は中堅私立でとくにすごくはない。

それ以前に

いやいや、あなた医学部でしょ、と

内心突っ込んだ、と息子は笑って言った。


そんな他愛ない話をしながら

息子と二人で廊下のソファーで待っていると

再び救急医に呼ばれた。

私も一緒にだ。


「息子さんは通常の倍くらい白血球の

数値が高く、体のダメージも大きい。

見たところ白血球のかたちもおかしい

ことがわかりました。

今すぐ命に関わるわけではないけど

出来れば入院することをおすすめします。

入院できますか?

大学のこととかあると思いますが…」


それを聞いて

私の意識は「命に関わるわけではない」

「入院できますか?」この二つのフレーズに

咄嗟に反応した。